幕間 変わった子
「なんというか…変わった子、ですね」
エドガーは、午前中に対面したばかりの子どもをそう表現した。
ちなみにその変わった子は午睡中だ。
マルグリット、エドガー、ディオの3人で食後のお茶の時間。
普通に考えて、マルグリットはともかく護衛のエドガーがディオ――クラウディオと同じテーブルについて食事などありえないのだが、今は平民暮らしなので対等だ。
「殿下は、うまくやっていけそうですか?」
「2人とも、普段からディオと呼んでくれ。言葉遣いも気にしなくて良い。
マリオは…年齢よりかなりしっかりしているな」
「ええ、出会ったばかりの頃はそうでもなかったのですが、この2ヶ月ほどで言葉使いまでしっかりして…
色々な意味で変わった子だと思いますが、本人は普通だと思っているらしいところがまた面白いわ」
「本当に平民の子なのですか?何と言ったらいいか…粗雑な感じがありません。
それに貴族でもあれほどまで美しい容姿の子は少ない。あとはあの魔力の色も珍しいのでは?」
エドガーはクラウディオにちらりと目線をやった。
「ああ…平民にあのように『金』が混ざるものか?」
「私も偶然見つけた子だから、詳しいことは分からないの。ただ、代々ずーっと平民の子だというのは間違いないわ」
マルグリットはマリアンナの両親に確認したものの、自分でも調べさせていた。
何代前に遡っても王族は存在しなかったし、隔世遺伝した前例もないため万が一存在したとしてもマリアンナに突然『金』が現れるのは普通でない。
マルグリットはマリアンナについて、実は女の子だということだけエドガーには伝えたが、『金』に関しては黙っていた。
「そういえば母上、先ほどマリオが魔石に魔力を込めた時、防御していましたよね?」
マルグリットは手の平に乗せた魔石の周りを覆うように防御魔法を施した上でマリアンナに差し出した。
「ええ、あの子、まだ魔力の調節が苦手なの。ああしないとうっかりやりすぎて魔石が爆発でもしたら大変だと思って」
「「は?」」
クラウディオとエドガーが、意味が分からない、と思わず声を上げた。
「ふふっ。まあその内分かると思うわ」
マルグリットは心底おかしそうに笑った。
「それはともかく、マリオは良い子だと、思う。
私の色を好きだと言ってくれたし…可愛い弟ができたようだ」
クラウディオは、兄さま、と恥ずかしそうに笑った少年を思い出して頬を染めた。
「ああ…あれはかなり可愛かった」
「そうね。何というか、久しぶりに胸がときめいたわ」
3人は顔を合わせてふふ、と笑う。
「…久しぶりに、殿下の笑顔が見られてほっとしました」
エドガーが、クラウディオを眩しそうに見る。
「…お前たちには礼を言う。無理にでも、連れ出してもらって良かったと思う。
正直、何もする気が起きなくて…ただ生きていれば良いと思っていた。
だが、私を知らぬ者と接することが、これほど楽なものだとは…
まだ、私の知らないことはあるんだな」
クラウディオは、少し肩の力が抜けたようだった。
ずっと無気力だったクラウディオを、王太后命令で無理矢理外に出したのだ。
「まだ、これから始まったばかりですよ。
楽しみましょう…ディオ」
どうかここでの生活が、クラウディオに光をもたらしますように。
そう願うマルグリットとエドガーだった。




