11.新たな出会い
マルグリットの家は、マリアンナの家から馬車で20分ほどのところにあった。
平民の中でも富裕層が暮らす一帯のようで、隣家との距離も広めにとってあり、馬を繋いでおく場所もある。
マリアンナとマルグリットを降ろすと御者が馬車を引いて去って行った。
「ようこそ、わが家へ!」
緊張の面持ちで中に入ると、パッと見た感じわが家とそれほど変わらない感じでほっとする。
「こちらへどうぞ、今日から一緒に暮らす子たちを紹介するわ」
マルグリットに先導されてついていくと、どうやら応接室で待っていてくれたようだ。
ドアを開けると背の高い青年と、8歳にしては少し小柄な少年が待機していた。
「待たせたわね…さ、こちらがマリオよ」
マルグリットが、マリアンナの背に手を置いて2人に向かって紹介する。
「マリオ、この子はディオ、この大きいのはエドガーよ」
そしてマリアンナに向かって2人を紹介した。
「よろしくね、私はエドガー。…マリオって呼んでいいかい?」
エドガーが進み出て、マリアンナの目線に合わせて身を屈ませた。
「はい、よろしくおねがいします。エドガーさま」
「あら、様なんてつけなくていいのよ!これは小間使いみたいなものよ」
マリアンナが挨拶を返すと、即座にマルグリットが反応した。
「ひどいですよ母上!」
「え、せんせいのむすこさん!」
よく見ると顔立ちが似ている。
エドガーの髪はマルグリットより濃い緑だけれど、目の色は全く同じ薄青だった。
「うん。そうなんだ。私はディオの付き添いみたいなものだから、色々手伝うよ」
なんと、私は一人で来ているのに少年には付き添いがいるのか。
さすが貴族。
「で、こちらがディオ」
エドガーが後ろを振り返る。
それまでじっと黙っていた少年、ディオが口を開いた。
「…ディオ、だ」
声が小さいです!
もしかしたら嫌がられているのかもー。
マリアンナはディオのほうに一歩踏み出す。
「よろしくおねがいします。ディオさま」
「…私も、ディオ、と。よろしく頼む」
おお、意外と受け入れてくれているのかもしれない。
貴族の子なんて平民には尊大で偉そうで嫌な奴かもと思ったりしていたのに申し訳なかった。
近くで見るディオは金髪に濃い碧の目をした美少年だった。
私もたいがい美少女だと思ったけれど、ちょっとこれは規格外に綺麗な子だ。
結婚の申し込みとか嫌というほどもらってそうだ。
「ディオも私が魔法を教えたのよ。マリオから見たら兄弟子ね」
マルグリットが4歳から魔法を教えた才能のある子がディオらしい。
それはすごい!ぜひ私の魔法もみていただきたい!
「そうだね、兄さんだと思って頼るといい」
「おい…」
エドガーの言葉に、ディオが困惑したようだ。
お兄さま!前世も今も私はお姉ちゃんだ。
一度は欲しかった兄!!
「では、いろいろおしえてください…兄さま」
興奮のまま兄さまと口に出してみたら死ぬほど恥ずかしかった。
見るとディオが真っ赤になっている。
エドガーとマルグリットは口元を押さえて身悶えしていた。
「ご、ごめんなさい!イヤですね」
気軽にお兄ちゃん扱いしてすみませんー!!
「い、いや、かまわない。兄、と」
それまで硬かったディオの表情がふわりと緩む。
眼福すぎて鼻血が出るかと思った。
いや、私少年趣味はないですけど!




