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幕間 判明した共通点(マルグリット視点)


ドロテーア・ストランドという貴族の身分を隠し、市井におりてマルグリットと名乗るようになってから早数年、最初はかなりの部分を使用人にやってもらっていたが、最近は作った薬を納品する際に馬車を出してもらったりするくらいで、ほとんど一人でやっていけていると思う。


最近ではたまたま魔力暴走した場に居合わせたことがきっかけで、リンデル家の娘のマリアンナと知り合った。


魔力暴走をきっかけにして金の目を得て髪は白銀になったという。

得体が知れないと思った。


だがここまで『金』に関わってしまうのも何かの縁かもしれない。

見捨てておけなくて、マリアンナの家庭教師になった。


最初は魔力暴走が気になったから引き受けたのだが、そのうちその才能に魅せられた。

まだ2歳であるというのにたまに大人といるような気にさせられる子だ。


見張っていないと何が起こるか分からないと思っていたが、何度か通ううちにこの子なら大丈夫だと確信した。




そんな折、息子のエドガーから手紙が届いた。



『母上のところで子どもを一人預かってくれませんか』






***



「一体どういうことなの?」


エドガーが入室するなり、マルグリットは席を勧めることもなく話を始めた。


「…お久しぶりです。母上」


エドガーは断ることなく椅子に腰掛ける。


2人がいるのはストランド伯爵家の応接室だ。

マルグリットにとっても久しぶりの帰宅だった。

人払いをして防音魔法を施している。


「殿下についてなくてもいいの?」


「ええ、最近は部屋に籠りきりですので、休みをもらいました。

念のため部屋を防御魔法で守って護衛騎士は置いています」


「殿下に何が?」


エドガーは、この2ヶ月ほどの間に起こったすべてを話した。

転移で離宮に行っていたこともすべて隠さずに。


暴走を起こした結果披露目が延期され、見放されたと思った殿下が塞ぎこんでいる。

このまま城にいても事態が好転するとは思えない、なんとか殿下を城から出してあげられないかと。



「…殿下の事は、王太后様に話してみましょう。あの方は積極的には動かれないけど、殿下の事は気にされているから。

協力していただけると思うわ」


「どうかお願いします。」


エドガーはほっと笑顔を見せた。



「それで、殿下が暴走を起こしたのは…5の月の21日だったりしないわよね?」


マルグリットはまさかと思いつつ確認した。


「どうしてご存じなのですか?」


エドガーが目を見開く。



マルグリットはその質問に答えることなく、思案するように腕を組んだ。



殿下が王立公園内の離宮で暴走を起こした。

離宮には子どもがいて、まるで殿下の魔力を吸い取って助けてくれたようだという。

離宮は立ち入りが制限されているため『精霊』だったと結論づけた…


同じ日に王立公園で倒れて魔力暴走を起こしたマリアンナ

目覚めたら『金』の目を持っていた。


「そんな、まさか…馬鹿げているわ」


マルグリットは首を振った。


「母上?」


万が一離宮に入る手段があったとして、暴走を起こした殿下の魔力を受け取って自分のものにしたというの?

あんな小さな子が、あり得ない。


そう思うのに、完全に否定することができない。


2歳とは思えない大人びた言動。

もともとの魔力は小さかったけれど、持って生まれた器がとてつもなく大きかったということ?


あの子ならもしかしたら、と思わせられる。



「エドガー、もし殿下をうちで預かるとして…もう一人平民の子がいても大丈夫かしら」


「は?」



エドガーの間抜けな顔を見て、マルグリットは何とかマリアンナを連れてこようと心に決めた。



面白そう、と思ったわけではない。きっと。




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