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11.結婚式

王族の結婚式は城の中にある大聖堂にて行われる。


バージンロードを歩くというようなことはなく、舞台横の扉から直接入場することになっていた。

マリアンナは扉の外で、クラウディオと一緒に待機していた。


クラウディオはマリアンナのドレスに合わせて白の礼服を仕立てていた。

詰襟の礼服に片方の肩にマントを羽織っていて、刺繍と飾り緒、留め具に金色を使っている。


「綺麗だ…」


式の前に二人で写真撮影をしたのだが、その時も散々言われて恥ずかしい思いをした。


出来上がったマリアンナのドレスは白一色だ。

胸元から首まで注文通りあまり透けない白いレースで隠れていて、腰から下はドレープになっていて裾がふわりと広がり、後ろは少しだけ長くなっている。


髪はゆったりと一つに纏め上げ、白い花飾りをつけている。


「クラウディオ様も素敵です」


マリアンナが隣に立つクラウディオを見上げると、クラウディオはふっと視線を逸らした。


「…心臓が痛い…マリアンナに殺される」

「それを言うならクラウディオ様も私を殺しにきていますよ!」


髪をセットして礼服を着たクラウディオは非常に魅力的だった。

心臓を撃ち抜かれて倒れそうな気分になる。



『はいはい分かったから今は自重しろ。

そこの扉係が困っているぞ』


「う…」


今日はシロが一緒だ。

扉係と言われた使用人が確かに頬を染めて俯いていた。



カラーン、カラーンと鐘の音が鳴り始めた。

「お時間です」使用人が扉に手をかける。少しほっとしたように見えたのは気のせいではないかもしれない。


「行こう」


クラウディオがマリアンナに手を差し伸べる。

マリアンナはその手に自分の手を重ねた。


扉が開き、ゆっくりと入場する。



大聖堂は、正面に色とりどりのガラスが幾何学模様に配置され、そこから外の光が差し込んで非常に美しい。

高い天井を大きな柱が支えていた。


舞台の下には多くの貴族が集まっており、ものすごい視線を感じる。


マリアンナはそちらを見ることが出来ず、正面を向いて歩く。

反対側の扉からアレクシスとレベッカが入場してきていた。


二人と目が合い少しだけ微笑み合う。



舞台の真ん中までたどり着き、正面を向くと国王陛下が待機していた。

国の成り立ちに関わることなのか、わが国には神職というものがない。


結婚証明書への署名に家長が立ち会うくらいである。

信仰というなら精霊信仰なのだろうが、特に祀ったりということはない。


「アレクシス・エクヴァルはレベッカ・オーリンを妻とし、これを愛し常に支え合って生きていくことを精霊に誓うか?」

「誓います」


陛下の言葉に、アレクシスとレベッカがそれぞれ答えた。



陛下がクラウディオとマリアンナの方を向く。


「クラウディオ・エクヴァルは精霊の乙女アイリスを妻とし、これを愛し常に支え合って生きていくことを精霊に誓うか?」

「誓います」


「精霊の乙女アイリスはクラウディオ・エクヴァルを夫とし、これを愛し常に支え合って生きていくことを精霊に誓うか?」

「はい、誓います」


「では結婚証明書に署名と魔力登録を」


自分たちの前にある台に置かれていた証明書に署名する。

マリアンナはクラウディオの下に『アイリス』と記載した。


そしてクラウディオと一緒に証明書の上に手を置き魔力を流す。

2人の魔力が混ざり合い、金色に文字が輝いた。


隣ではアレクシスとレベッカも署名が終わったようだ。



「ここに2組の夫婦の婚姻が成立したことを証明する」


陛下の言葉に、会場がわあっと沸いた。



『では私からも祝いをやろう』


突然、シロが国王陛下の顔の前あたりに浮かんだ。


「シロ?」


マリアンナとクラウディオが反応すると、隣のアレクシスがマリアンナを見た。


「どうした?」


シロが浮いたままくるりと宙返りをする。

すると2組の夫婦の上に金色の粒のような光が降り注いだ。


「まあ…」

「これは…!」


『見た目だけだが効果的だろう。さすがに祝福までは無理だったが…

他の者にも見えるようにしたから結構魔力を消費したな。あとで補給を頼む』


ありがたさが半減である。


「今のは?精霊殿か?」


アレクシスが声を潜めてマリアンナに問いかける。


「えっと、精霊から見た目だけ祝福もどきのお祝いだそうですよ」



「何という事だ!精霊殿から王子の婚姻に祝福をいただいた!

この者たちが支える王国の未来は明るい!」



マリアンナの言葉を拾った国王陛下が、集まった貴族たちに向かって宣言すると、会場が大いに沸いた。



『な?効果的だろう』



そんな宣言をしてしまって大丈夫かと不安になったが、シロが満足そうなので良しとする。




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