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閑話

唐突に閑話挟んですみません。


「報告を」


王の執務室。

国王の言葉に、どこからともなく現れた男が首を垂れた。


「マリアンナ様は恙なくお過ごしでした、が」

「が?」

「唐突な独り言が気になります」

「……気を付けるように伝えよう」

「後は誰もいない廊下で転んでしまい、顔を真っ赤にしてきょろきょろ辺りを見ておりました」

「…見なかったことにしてやってくれ。怪我はないか?」

「派手に転んだので心配しましたが平然としておりました」

「ふむ。他には?」

「早速見つかってしまったかもしれません」

「…早くないか?」

「突然こちらを振り返って首を傾げておりました」

「…護衛をつけたことは話しておく」

「寮から出てきたところから、帰った時までですからね。

私生活は覗いていませんのでしっかりとお伝えくださいね!」

「それにしてもお前、なぜ学園の制服を着ている」

「学園に潜伏するのですから念のためです」

「いい年して何を考えている」

「…まだ何とか?」

「何ともならん。見つかったら完全に不審者だ。即刻やめろ」

「…えー」

「えーじゃない」




***




「くそ…っ!また遅れをとってしまった」

「まあフィリップ、口が悪いわ」

「必死で勉強している風には見えないのにな…余程優秀なのか」


1年生のみ入学時の初日にも試験が行われるが、学園の筆記試験は前期、後期の二度行われる。


前期の試験結果は長期休暇明けに、後期の試験結果は学年が上がった次の年に適用され席順が決定するのだ。



最終学年のみ後期試験は行われず、代わりに実技込みの資格試験が行われる。

その結果により就職希望者は勤務場所が決まることになっていた。


優秀な者になると各王族の側近に引き抜かれることもあった。



そんな学園の試験で、長期休暇明けに発表された席順は変わらずマリアンナが1番、フィリップが2番。


「2番でも凄いわ。わたくしなんて特別クラスから落ちないように必死なのに」


オリヴィエは卒業後就職するわけではないのでそこまで必死になる必要はない。

そもそも貴族令嬢は余程悪い成績でなければ良いという者が多く、特別クラスにいる女性はマリアンナとオリヴィエだけだった。


同学年に婚約者がいるご令嬢などは順位が分かりやすいので将来の夫より上になるわけにはいかないという暗黙の了解もあるのかもしれない。


「1番である必要はないが、悔しいではないか。

…まあ君は確かに頑張っているな」


フィリップがオリヴィエの頭を撫でた。


「も、もう…!子ども扱いはやめて」


オリヴィエは真っ赤になって怒っているが、フィリップはそれが照れているからだということは分かっているし、オリヴィエが特別クラスから落ちないように頑張っているのも出来るだけフィリップに近い所にいたいからだということも知っていた。


「そうだわ!今度マリアンナさんを我が家にお招きして勉強会をしない?」

「…彼女は平民だぞ。公爵家に呼ばれたら気を失うんじゃないか」

「そうかしら?…なら寮に馬車で迎えに行って、うちに入って席に着くまで目隠しでもしてもらう?」

「やめなさい」


「ねえ、勉強会についてあなたはどう思う?お父様にお願いしてもいいかしら」


オリヴィエが後ろに控えていた侍女を振り返った。


「ええ、よろしいと思いますよ。

旦那様にはわたくしからもお伝えしましょう」


もうそこそこの歳だろうに、背筋をピンと伸ばした侍女が意味ありげに笑った。




***



「はあ…」


「辛気臭いわね。今日は休みだったんでしょう?

今はここに来る必要もないのに何してるのよ」


「習慣とは恐ろしいものです」


マリアンナとクラウディオが婚約を結び精霊を通してやり取りができる今、エドガーの2人を繋ぐ役目は終わってしまった。

しかも城でマリアンナが『アイリス』として出歩く際はエドガーは意図的に外されていた。


何しろ幼い頃からの馴染みなのだ。

お互いに気安い為ボロがでないようにするためだ。


エドガーは図書室の本棚から、一冊の本を取り出した。

表紙を開くと、まだ幼いマリアンナの写真が貼られている。

クラウディオに乞われて昔から撮っているマリアンナの写真集だ。


最初の頃は魔導具の性能が悪く少しぼやけた感じだがマリアンナの可愛さは失われていない。


ゆっくりとページを捲ると、時折マルグリットやエドガーも一緒に写ったものもあった。

まるで家族写真だ。


定期的に欠かさず撮ってきたものだが、実はクラウディオはまだ見ていない。

これまでが慌ただしすぎて頭から完全に抜けているのだろう。


「…大きくなったなあ…」

「そうねえ…少し寂しいわね」

「そうですね」

「殿下に取られちゃったみたい」

「娘を嫁にやった父の心境はこんな感じでしょうか」

「……」

「視線が痛いです」


カチャ、と図書室の扉が開いた。


「先生、エドガーさんもこんなところにいたんですか」

「「マリー!」」


マルグリットとエドガーは、驚いて立ち上がった。


「こんな時間にどうしたんだ?」


学園が終わったくらいの時間だ。


「相談があるんです!後で兄さまも来るので一緒に聞いてください!

王太子殿下があああ~~~~」


「あらあらどうしたの」

「さ、座って」


マリアンナを迎え入れながら、マルグリットとエドガーは顔を見合わせて苦笑した。



まだこうしてマリアンナに頼ってもらえることが、殊の外嬉しかった。




時系列

1.アレクシスと話した数日後。

  (マリアンナには護衛がいないので念のため姿を隠せる者がつけられました。

  護衛の彼はマリアンナが精霊の乙女だとは知りません)

2.後期授業が始まってすぐ

3.アレクシスと話した当日

  (エドガーは授業が無くて休みをもらいました)

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