第9話「性別」
ギリギリ…今回は短いですね…
「自分が女であることを捨てろと何度言ったらわかるんだ!」
…
…………はい?
「ちょ、ちょっと待ってくれ!!!ルクスって男じゃなかったのか?」
「何言ってんだ主よぉ、このガキは胸こそちいせぇが、一応女だ。だがな、この名無しの場所で女ってものを守ろうものならすぐさまあの世行きだ。」
そういえば一年位前、凛が言ってたな。ストーカー被害にあってるから助けてほしいって。身内びいきするつもりはないが、妹である凛は可愛い。変な男が寄ってきてもおかしくはなかった。
すぐにストーカーを現行犯で捕まえ、ことなきことを得たからよかったが…
確かにここでは法律で人は縛れない。ましてや日本ですら法律に縛られない人間がいるんだ、こんなスラムみたいな場所では格好の餌だろう。
ただ、理屈では分かっていても理性の制御が追い付かないことだってあるはずだ。現に今の俺がそうだ。
この場所では女は捨てて生きる、そして命を繋げる可能性を増やす。確かにここでは正しいだろう。
しかし、現代日本を生きた俺が「はいそうですか」と簡単に割り切れるものじゃない。
頭では分かっているのに何とかして女の子が生きやすい世界にならないのだろうかと神のようなことを思い描いてしまう。
「宗…大丈夫?血…でてるよ。」
ルクスが久々に口を開いたかと思えば俺の心配をしてくれていた。
口を噛んで苛立ちを抑えていたらしい。ハンカチは…っと、ズボンの中に入ってな。
いつも外に出ることなんてなかった俺だが、凛はいつでもハンカチを身に着けておけるように気を配っていてくれた。
よくできた妹だ、俺にはもったいない。
そういえば凛は元気にしてるかな…
「おいおい、主の心配するなんて随分と優しいこったなぁルクス。」
「ち、違います!目の前で血が出ていたのをみたのでつい…」
どうやらルクスは根が優しすぎるんだろう、出会って間もない俺の心配をするくらいだからな。
ルクスの髪の毛はぼさぼさで、きっと櫛も通らないだろう。
汚れのため灰色っぽくなってはいるものの、洗えば金色のさらさら髪……いつか見てみたいな。
「ところでよ、ルクスのことを含めて今後の話をしていきたいんだがいーか?」
オルダムが場を仕切ってくれている。そこから俺たちは今後についての話し合いを設けることにした。
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<side ルクス>
「何度言えばわかるんだガキが!」
「っぐ…でも!オルダッっぐは!」
僕は今、説教を受けている。拾われてからずっとこうだ。
オルダムさんはいつも命に関わる内容の説教に限り、拳を使った武力で言い聞かせる癖がある。
けれども僕は反論しない、いやできないんだ。
だって正しいから。オルダムさんはここら一帯ではまとめ役のような存在だ。
名無しの場所において、生きる伝説である「剛腕」に拾ってもらえたことに感謝している。だからこそ僕はしっかりと勉強した。
勉強といっても貴族様みたいに文字を書いたり、計算なんて類ではない。
ここ、名無しの場所と皆が勝手に読んでいる名前も、象徴も、明確な立場も、食料もない場所で生き抜いていくための勉強だ。
オルダムさんに拾われてから半年余りが経ったと思う。正確に日時を判断する材料がないから、最近の温度の傾向からそう結論付けただけだ。
半年間、はじめは隠すように育てられていた。けれど、ある日を境に鍛錬を付けてくれるようになった。
嬉しかったよ。やっと命の恩人の役に立てるかもしれない、そう思えたんだ。
なぜかオルダムさんは成長が早い僕に疑問を抱いていた節があったけれど、成長できている実感を持てるってこと自体が嬉しかった。
ある日、鍛錬をしていると、いきなりオルダムさんに言われた言葉がずっと心の奥深くに根付いているんだ。
「ルクス、お前はこれ以上大幅に強くはなれない。
理由がわかるか?
それはな、お前が女だからだ。
今日をもって鍛錬はおしまいだ。
もう1から10まで面倒見ることはしねぇ。
人脈も作った、女である者の限界近くまで成長した。
教えることは何もない。
あとは精々死なないように生きろ。」
…。
僕は悟った。
あぁ、女ってだけでここは生きにくい世界なんだと。
そして、その日から私は僕に生まれ変わった。
ルクス君ではなく、ルクスちゃんでしたね
まさかのぼくっこでした。