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第6話「幸運の女神」

一番初めの仲間は…


「じゃんけんをしましょう。」



おじさんの目が点になった。それもそのはず、異世界なのだからじゃんけんという概念そのものがあるはずがない。



「じゃん………けん?だと、そりゃ聞いたことがねぇ試合方式だな。どういった内容だ。」




俺は懇切丁寧に説明した。


グー、チョキ、パーの概念がないこの世界では、あまりなじみがないらしく、お互いの掛け声で手を出すことに決めた。



じゃんけん、ぽん。ただこの一瞬ではあるが、何を出すかとても悩む。このおじさんは多分そこまで賢いほうではないと思う。完全に勘ではあるけれどもな。まぁ、俺の勘なんてあてにならないけどな。



スラムみたいな場所で生活している人が、正々堂々なんて真似してくるはずがない。


俺は決めた。相手の手が出てきた瞬間を見定めて、ギリギリばれないいかさまをする。


命がかかっている場面で、いかさまをしない道理はない。




俺がじゃんけんに持ち込んだにはもう一ついかさまができるほかに理由がある。自慢ではないが俺はじゃんけんが強い。それは、凛とのじゃんけんでは8割以上の勝率を誇っているのだ。



なぜこれだけの勝率が出せるのかは完全に不明である。目隠しをしていても、後ろを向いていても、どんなじゃんけんの試合でも勝てるのだ。



まずは相手を観察する。武器はない、つまり拳で戦うタイプの人間だ。そうすると、一番出しやすい手はグーか。



おじさんの性格はわからないが、俺がパーを出したほうが勝率は上がるだろう。



よし、パーで行く。人生で一番緊張感のある戦いが、じゃんけんになろうとはな。





-------------------------

<side オルダム>


俺の前には奇怪な服を着た小僧が腕を組んで考え事をしている。


じゃんけん、こんな適当なことで命を懸けてくる小僧の神経は正気の沙汰じゃねぇ。5秒以内の戦闘とかにしておけば、生き延びれる可能性が広がるというものを。



だが、この小僧は多分「異世界人」だ。どんな恩恵を持っているかわからん。


そんな上品な服はこの場所では違和感でしかない。迷い込んだか、逃げ込んだ可能性もあるな。




しかし他人である事実、これは情けという概念を捨てるには十分だ。



相手の土俵ですら、敵を圧倒する。まだ俺の中にも戦士としての心意気が残っていたのかもしれんな、寿命が縮まるだけだというのに。




…この小僧、考えていることが小声だが聞こえておるぞ。俺らドワーフは聴覚も人間なんかとは比べ物にならんほど発達しているからな。



なるほど、俺がパーを出すと予想するとしたら、小僧はチョキを出す。裏をかくなら俺はグーを出せば勝てるということか。



恨むなよ小僧。ルールがあろうがなかろうが、ここは常に非情だと教えてやる。





----------------------------

<side 宗>


おじさんのあの顔、俺の声に反応したな。


RPGでは、聴覚が優れているのはエルフだと記憶しているけど、そんな常識がここでは通用しない。あの反応を見る限りグーを出してくれそうだな。



手を見てからのいかさまでは絶対こちらのほうが不利だからな。賭けだけど、小声で話す作戦は成功していてほしい。




「では、おじさん。いきますよ。」



「待て、小僧。相手の名前も聞かないで戦おうってのか、そりゃ死ぬに死ねねぇぞ。俺の名はオルダム。しがない傭兵だ。名乗ってみろ。」




このおじさん、何気に律儀なんだな。もし部下になってくれるのなら、信頼を置いてもいいかもしれない。



「俺の名前は秋元宗、よろしくお願いします。」



礼儀には礼儀をもって。目には目をではないけれども、これぐらいしたほうが雰囲気は出るだろう。


さて、命をチップにした一世一代の大勝負。





「いきます!じゃんけん…



ぽん!!」






宗→パー

オルダム→グー



…か、勝った。異世界での第一歩を踏み出せた、そんな気がした。



おじさん、もといオルダムは硬直している。


それもそのはず、今の勝負によっておれはオルダムを配下に加えることに成功した。知らない人間に付き従うんだ、そんな人生は真っ暗だろう。硬直するのも無理はない。




「…が、がは。がははははっ。は、はぁ。」



なんか怖いんですけど!いきなり腕を組んだとおもったら、あぐら書いて座って笑い出したぞ。




「俺の負けだ。部下として扱うもよし、俺としては潔く殺してくれるとありがたいんだがな。」



今、話していた人の命をそんな簡単に奪えるほど肝は据わっていません…勘弁してくれよ…



「こ、殺しませんから落ち着いてください。」



「はぁ…喰えん男だな。まぁ、しょうがない。とりあえず契約をしようか。」




やっぱりあるのかそういった契約。多分奴隷契約とかかな、と思っているとオルダムがどこからか短剣を取り出した。



「知らねぇだろうから教えてやる。これは契約だ。


複数ある契約でも、この契約は面倒なものでな。代々戦士の家系にのみ伝えられる方法なんだが、効力はない。」




効力がない契約って、口約束みたいなものだろうか、それなら俺の命はまだ危ないのでは…と考えているとその続きを話してくれた。




「もちろん、奴隷契約なんてものもあるんだが、こんな場所では奴隷商がまずいない。奴隷は国が管理しているから、そこいらで量産することは出来ねぇんだよ。



戦士からしたらこの契約を破ることが死罪よりも恥ずかしいとされている。無論俺もそうだ。



今まで契約はしたことないが、これからは、宗といったか。お前の剣となり盾となろう。」




オルダムが悪いということはない、むしろこの世界で頼れる人間ができることはいいことだ。







ただ一つ言いたい。仲間にするなら女の子が良かった…



じゃんけんは人生を変える!

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