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第4話「失敗」

宗の転生が…


うっすらと目を開けてみると、そこには壮大な景色が…という結果にはならなかった。



ところどころに穴が開いており、掃除はしたこともないような状態。


家具と呼ばれるものは椅子と小さな布団のみだ。誰かが住んでいるとは思われるが、果たしてこんな汚いところに人は住めるのだろうかと思わせられる。



生臭い匂いと、何とも言えない匂いが入り交じり、鼻が曲がりそうだ。


一周ぐるりと見まわしてみても、人の気配はない。窓があったので、一度辺りを見渡そうと開けてみることにした。



「…おい、なんだよここ。」



スラム街。そんな言葉が脳裏をよぎった。





------------------------------

<side オルダム>



「オルダムさん!こんなところにいましたか。」



「んだぁ、ルクスのガキか。15歳にも満たねぇような奴がこんなところに何の用だ。」



俺の名はオルダム。ここ、名もない場所で傭兵のような仕事を生業としている荒くれものだ。


ドワーフということだけあって他の奴らよりも一回り小さい分、腕力なら自信がある。



後、ドワーフと言えば酒が好きなやつがいるが、それはあくまで一部の富裕層に限る。


俺らみたいな社会のゴミは、酒なんて嗜好品にありつけることはまずない。




低身長ではあるが、筋肉はしっかりとついていると自負している。


ここら一帯で俺に頭を下げねぇ奴はいないからな。


だがそれはあくまでこの場所であるということを限定したらだ。世の中には思い出したくもないような化け物がゴロゴロといやがる。




そしてこいつの名前はルクス。最近俺の傭兵業の仕事を持ってきてくれるありがたいお人よしだ。


ただ、これは俺が目をかけているから死なねぇだけで、ほかの場所ならすぐ死んじまう奴だろう。



たまたま路地を歩いていたら、倒れていたルクスを介護したことで、なぜか下働きのようなことを買って出た変わり者だ。


この場所では、明日をも知れぬ命。当然、他人のために何かしてやろうなんて考えている奴らは真っ先にあの世行きだ。



「ルクス、仕事は片付いた。死体は好きにしろ。後、いつもの所に仕事の報酬を置いておけ。」



「え…、それはつまり俺を信頼してくれたということですか!」



こんな場所じゃ報酬は前払い、もしくは半額前払いで仕事終わりに残り半額が暗黙のルールだ。


ただ、俺はどうしても金が必要というほど困っちゃいねぇからな、一度このガキが信頼に足る人間なのか試験してやろうって魂胆だ。



だというのに、まるで疑うことが無いその目、吐き気がする。昔の俺を見ているようだ。


信頼なんて言葉は、母体の中にでもおいてきた奴が、ここでは長く生きることが出来るというものだと何度言っても聞く耳を持たねぇ。



「なんでもいいが、早くしろ。俺は疲れたから家に戻って寝る。


明日の朝見たときになかったら…、そういうことだ。」



俺は殺気を振りかざしながら、死ぬ気で守らなければ死ぬのはお前だ、という意味を込めてあえて言葉を濁した。早く独り立ちしてほしいもんだ。いつまでも見てやる気なんざねぇ。


こいつはここには性格が合わなさすぎるし、環境に適応することが出来ない人間だろう。



「オルダムさん、こういっちゃなんですけど、もう少し家具とか揃えたらどうですか?殺風景すぎるんですよあの部屋。」



「馬鹿言うんじゃねぇよクソガキが。明日死ぬかもしれねぇのにいちいち揃えてられるか。最低限のものさえあれば生きてけるんだよ。おまえだってわかってるんだろうが。」



この場所では力がすべてだ。それは何も戦闘力だけじゃねぇ。知恵、財力、人脈、情報力、何でもありだ。そんなことを考えながら家に帰った。



俺の家は二階建てで、ここらでは大きなほうだと思う。まぁ、何か置いてあるわけでもねぇから、ほかの奴らからちょっかいを出されたことはない。


元職人だからだろうか、細かなことはとても気になってしょうがない。



例えば、家を出る前に鍵は閉めたのか、井戸に蓋はしたのか、火は消化しておいたか、窓を閉めてきたかなど挙げればきりがない。


しかし、生まれながらの性格だからかそういった細かい性格にも慣れている。家の前に着いたとき、家が壊されていないか確認するために、窓のほうを見上げた。




「…いや、今日も確かに閉めたはずだ。」




いつも閉まっている窓が開いていやがる。



俺の記憶違いを疑ったが、今日もしっかりと確認したはずだ。


つまり、侵入者がいる、もしくはいたことになる。どこの差し金だ?戦闘力に偏った「牙」からのちょっかいか、金で人を雇った「糸」のやつらだろう。



そういえば今日の仕事はルクスが「糸」から受けてきたと言ってやがったな。仕事は完璧にこなしたはずだ。となると「牙」の部下どもか、野良の類か。どっちにしろ警戒は怠らねぇ。



「考えていても仕方がねぇか。よほどの馬鹿でない限りもう家にはいないだろうしな。」



そう、王都や貴族の治める街の家ならば、待ち伏せて攻撃することも可能だろう。だが、ここは名無しの場所だ。家なんて御大層に呼んではいるが、いつ崩壊してもおかしくない。



つまりは、待ち伏せのときに動かなくても音が鳴ることが多いということだ。そんなところで音もなしに移動できるやつがいたらこの首は飛んでいるだろうな。



一応の覚悟は決め、一階に入った。




「…、…………!!……………!!!!!」



よく聞こえねぇが、二階に誰かがいることは確定した


。はぁ、野良の馬鹿どもが俺の首でも取りに来たんだろう。



今は仕事終わりで気分が悪い。まぁ、一度だけ警告して、向かってきたら叩き潰してやる。仕事ではないが、今までと同じことの繰り返しだ。梯子をあがり、二階に到着した。


多分この奥の部屋だろう。



周りへの警戒を最大限に引き上げながら一歩ずつ歩いていく。どんな仕事、作業だろうが決して手は抜かねぇ。これが俺の流儀だ。



さてさて、どんな野良がいるんだろうか、腕がなるぜぇ。

扉を開けようじゃねぇか…





「お!お邪魔してます!」


転生、失敗してしまったようですね。

宗はすでに家主であるオルダムに見つかってしまいましたね。治安の差によりどうなることやら…

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