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第27話「初めての魔法」

3月は一日一話登校できました!


天秤魔法。

イメージは重りを置いて、傾きを見る道具だったはず。この考えが正しいなら、俺は最強になれるかもしれない。



「宗、さっきから何一人でニヤニヤしてるの…気持ち悪いよ…。」



「ちょっと考え事をしてたんだよ!

上手くいけば、俺は最強になれるかもしれない…。」



「最強、ですか。そもそも、天秤とは何ですの?」



軽く現世の知識を使って、天秤について説明をしてみたが、いまいちな反応だった。



俺の勘が正しければ、天秤魔法は物々交換と同じ原理だ。例えば、リンゴが欲しい。手に入れるにはお金がいる。これが等価であり、二つは等しいものとなる。



つまり!例えば同じ価値のあるものを用意すれば、俺の魔法で交換ができるのではないかという事だ!これは使い方によっては強くなれる………わけあるか!



これでどうやって戦えって言うんだ神様よ…。どうせならチートが欲しかった。



「いきなり絶望した顔にならないでよ…気持ち悪い。」



「ルクス…俺はな、自分の魔法に価値を見出せないんだよ。」



全力で落ち込んでいると、メルが俺に近づいてきた。そして、そっと抱きしめてくれた。

俺、メルに抱き着かれると安心するって男としてどうなんだろうな…


いや、もちろん息子は元気ですよ。



「宗様、私が働いて宗様を養うので安心してください。少し辛い生活になるかもしれませんが、しっかりと支えて見せます。」



いや…あの、精神的に支えてもらうのは男としてとっても嬉しいところだけど、金銭で支えていただくのは、流石に男が廃るといいますか、恥ずかしいと言いますか…。



「いやいやいや!メル、俺はヒモになるつもりはないぞ?俺をダメ人間にしないでくれ!」



「そうですか…ご立派です。(とても残念です。)」



メルさんや、心の声漏れてますよ。



「と、とりあえず、魔法を使ってみたい。メル、どうやって魔法を使ってるんだ?」



話題転換。


「すみませんが、生まれてすぐに使えたらしく、手足を動かす感覚なのでよくわからないです。お力になれず申し訳ありません。」



「いや、気にしないでくれ。俺が特別変なだけだから。


じゃあ、アリアは?」



「そうですわね、強いて言うなら、見えない風をイメージしています。同じ加速でも、背中を押されているだけでは倒れてしまいますので、体に薄い膜を張ってそれごと押している感じですわ。


ただ、あくまで風魔法なので、旦那様のお力になるとは思いませんの。」



アリアの言いたいことは分かる。接してるのが点だと、力はその点に集中してしまい、体全体を押すことにはならない。


逆に、体の面を認識することで、魔法を実現しているんだろう。



「…となると、大事なのかイメージか。」



「宗、魔法なんて置いといて体鍛えようよ。」



唯一魔法を使えないルクスが切り込んできた。会話の仲間外れにするつもりはなかったけど、どうしても魔法を使いたいという男のロマンを誰が止められるというのだ!



「まぁ、体はもちろん鍛えるさ。けど、手札が多いことに越したことはないだろ?」



「それは…そうなんだけど。」



煮え切らないのかグチグチ言ってくるルクス。俺としては、魔法の性能を試して、それに合わせた戦闘スタイルを確立しようと思っている。


今度、ルクスに剣を教えてもらうのもいいだろう。



「というわけで、魔法の手掛かりはないんだが、使ってみますか。」



特に詠唱をみていないため、きっとイメージが大切なんだろう。


イメージをするんだ。


イメージ。


イメージ…


イメ…



そう考えながら、俺はゆっくりと眼を閉じた。








しばらくすると、風が吹いたような気がした。

いや、風が実際に体にあたっていることが分かる。



ゆっくりと眼を開けるとそこには…



一匹の黒い猫がいた。



理解が追い付かない。周りを見渡してみると、世界が黒く染まっている。なのに、目の前にいる猫が、黒色だという事は認識できる。



いや、この猫の黒のほうが、周りの黒よりも深く濃いんだ。



恐る恐る、その猫の下まで行こうと決意し、一歩踏み出そうとするが、体が言うことを聞かない。



「代償は?」



どこからともなく声が聞こえてくる。というか、この世界で俺以外にいる生物は猫だけだ。ただし、猫の口は動いていなかった。



「お前、の、声なのか?」



猫に問いかけてみる。もし、周りに人がいるのなら、頭のおかしい人間に見えているんだろう。なんせ、猫と会話ができると思っているのだから。



だがここは異世界。不可能はあるように、当然不思議なことは多くある。だから、俺は声をかけた。



「私に名前は無い。強いていうならば、天秤魔法そのものだ。創造神に作られたばかりで、体がなくてな。この猫の体を借りているのだが生憎と発声器官が違うため声が出ない。


仕方なく、無償でテレパシーという手段を用いて契約者に話しかけているだけだ。」



脳に直接声が届けられているような、不思議な感覚だった。言っていることが、なぜだか理解できる。



ただ、話ができるのは助かる。この声の主が俺の魔法というのなら、聞きたいことがある。



「お前は天秤魔法なのか。なら、自己紹介しないとな。

俺の名は秋元宗。日本ではニートをやっていた。これから、よろしく頼む。」



「ほう、呑み込みが早いな。結構結構。


自分から自己紹介してくれるのは助かる。私の発声にも、実は対価が必要だったのだ。」



言っている意味がいまいち理解できない。それに、さっきから対価だの代償だの、物騒な言葉が並んでいるのも理解の範疇を超えている。



「天秤魔法、呼びにくいから何て呼べばいい?」



「私は何でもいいぞ。名付けてくれるというのであれば、名前でも付けてもらおうか。」



デジャブを感じるな…。名前を付けるとか苦手…というかしたこともないってのに。深く考えても仕方がないか、猫だからタマでいいかな。



「じゃあ、タマで。」



「相分かった。今後、タマと呼ばれたら私だと認識しよう。」






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