第21話「合流」
もう20話超えていますね…
アリアからメルをもらい受ける約束をした俺は、運んでもらった人間がルクスという情報ももらってきていた。
というかアリアが幸せそうに語ってくれた。
「一応、ルクスに感謝を伝えとこうかな。」
そう思いつつ、先にメルに現状を伝えることが優先事項だと気づいた。
多分、心配しているだろうし、今後のことを結局話せていない。とりあえず、貸してもらっている自室に向かった。
「…それで?なんでこんな状況になってるの?」
そこにはルクスとメルが一着の服を奪い合っている最中だった。
というかその服は俺の上着だった。
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<side ルクス>
(なんでだろう、宗に包まれている感じがして安心する。)
宗を部屋に運んだあと、神様のせいか極端に体に怠さがでてきたため、一室で休むことにした。
もちろん、服は着替えてないよ。別に他意は無いけどね、いや本当に。
(僕は誰に対して焦ってるんだろう。)
途端に馬鹿馬鹿しくなった僕は、宗のことを思い出してみる。確か、この部屋の隣に居るはず…なんだ。
「ぼ、僕が運んだってことでも言って、恩を売りつけてしまおうかな。」
そう言った僕の顔は今まで以上にゆるんでいたけれど、それは鏡しか知らない。
逆に言えば鏡を見た僕が気づいてしまった…は、恥ずかしい…。
最低限の身だしなみを整えて、宗の部屋に向かう。どこの部屋にも鍵はついていないけれど、万が一のことをある。一応、ノックをしてみるけれど、中からの反応はn…
「はい、どちら様でしょうか。」
反応があった。おかしい、僕は部屋を間違えたのだろうか。今の声は聞き覚えがあるようなないような…
「はい。あ、ルクス様でしたか。どのような要件でしょうか?」
「君は…誰?」
「はっ、そうでした。私はメルと申します。ルクス様に憑依した神様にもう一度人生を与えていただいた者です。」
そういうことか。僕には微かにだけれど、視界に映っていた記憶は残っている。ただ、この女の子のために、僕は裸にさせられたのか。
「宗は?」
「はい、旦那様は今、アリア様のもとに交渉しに行ってくださっています。」
宗とはそこまで長い間一緒にいるわけじゃないけれど、頭は…いいと思う。とても教養が見についてて、実は貴族のお坊ちゃまでした、と言われても納得いくくらい話し方は流暢だったっけ。
「部屋の中で待たせてもらってもいい?あなたと少し話がしたい。」
「奇遇ですね、私もお話したいと思っておりました。
主に、その上着についてですが。」
そういった瞬間、メルは僕にとびかかってきた。流石は暗殺部隊の身のこなし。なんとか避けることに成功したけど、退路は絶たれてしまったようだ。
「どうしていきなり襲ってくるのさ、君の主に言いつければまたすぐに死ぬんだよ?」
「大丈夫です、旦那様が私を欲しいとおっしゃってくださいました。私は旦那様を信じていますので。」
どういう意味かようやく分かってきた。多分、この子の身柄を宗が引き取るってことをアリアに話に言ったんだ。
そう納得がいくと同時に何とも言えない沸々とした思いがこみ上げてきたんだ。なぜだろう、この子に宗を近づけたら危ない、さっきからそう頭の中で警鐘が鳴ってるんだ。
「メル、この上着をどうするつもり?」
「お教えする必要はございません。」
「そう。なら、奪ってみなよ。」
そうして僕たちの戦闘は開始したんだ。メルも客人と分かっているからなのか、殺傷力の高い攻撃はしてこない。けれど、暗殺に慣れているということは、対人戦闘に慣れているということだよね、油断できない。
「っは!」
上段からの蹴りを交わした際に、上着の片腕を脱がされてしまった。…こうなれば意地の張り合いだ。
「ってぃ!っは!離せぇぇぇ!!!」
僕が片方の上着の腕を掴んで、メルは反対側の腕を掴んでる。僕と力勝負できる女の子なんてそういないと思っていたけれど、メルはどうやら強い分類に入るらしいね。
「…それで?なんでこんな状況になってるの?」
戦闘に夢中で僕としたことが、他の人の侵入に気づけなかった。
扉の先には、今しがたまで奪い合っていた服の持ち主が呆れたように立っていたんだ。
「「っ!」」
僕は驚いて手を放しちゃって、メルも手を放しちゃったらしく、上着がひらひらと床に落ちていった。
「説明、してくれるよね。」
この後の説明という名の説教が続いた。
オルダムさんが呼びに来てくれるまで、10分以上も正座?というものをさせられたんだ。
宗、怖かった。
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<side 宗>
お互いに罪を認めようとしないどころか、擦り付け合いを始めてしまったから、とりあえず怒ることにした。
「宗!メルが僕の着ていた服を奪おうとしてきたんだ。」
「旦那様、私は旦那様の服をお返ししようと…」
二人の話は怒られていても全然変化していかない。そこまでこの二人は仲悪かったかな…と思いつつ。そもそもなんで俺の上着をルクスが着ているのだろうか。
話を聞いていくと、どうやらクラドールが憑依した後、裸になってしまったらしい。そのため、服が早急に欲しくて、アリアに頼んで持ってきてもらうまでの間、俺の服を借りていたらしい。
その後、脱いで返すほどのことでもないと思ったらしいルクスは、借りているよという事を伝えようと、俺の部屋に居たという。
一方メルはというと、ルクスが入ってきた瞬間に、俺の服を着ていることに気づいたらしい。アリアが持ってきてくれた替えの服は部屋にあるのだから、脱いでくれれば、俺に返せれると思ったという。
二人とも、そんな服一枚で喧嘩しなくても…と思ったけれど、それをいったら、二人から怒鳴られてしまった。女の子怖い。
とりあえず、服は俺に返してもらうことで決定した。ルクスが丁度いることだし、オルダムを招いて今後の話でもしようかと考えながら叱っていたら、いいところにオルダムが来てくれた。
二人は助かった…みたいな安堵の表情を浮かべていたんだけれど、そこまで俺は怖くないと思うぞ…
「主よ、今後の話をしたいんじゃが、そのだなぁ。
アリアのメイドがおると少し話しにくいんだが。」
そういえば、アリアからもらい受けたことは伝えてないんだから、心配するのも当然のことか。
「オルダムの疑問は最もだな。まずはそこから話そうと思う。
簡単に言うぞ。メル、お前は正式に俺の下に来れることが決定したぞ。」
そういい終えた瞬間に、メルは泣き始めた。まあ、今までのことを考えると仕方がないかもしれないな。
聞いた話だと、何でも実の兄貴に殺されたらしい。一番優秀な人間を使っただけとアリアは言っていたが、この内容だけでどれだけアリアが壊れているかが分かる。
「ありがとうございます…ほ、本当に私は旦那様のお傍にいられるのですね。」
「ああ、そういうことになるな。だからオルダム、メルはもう俺の家族のようなもんだ、この話し合いにはいてもいいよな。」
「なるほどな、そういう話なら了解したぞ主よ。」
そうだな、メルのことを話したらルクスが起るかとも思ったけれど、そんな心配はなさそうだ。放心しているような気もするが、きっとなにか考えているんだろう。
さて、この世界に来てから一日が経ってしまっているが、ようやく俺の知りたい情報が集まる時が来たようだ。
現在進行形で書いております。