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第2話「混乱」

続けての投稿となります。

まだ、転生はできません。

俺は車にはねられた。


無知でもわかることだ、あれ程の物体にぶつかった人間の末路など。せめて妹が無事に家に着いたかだけでも確認できたら…いや、もう死んでいるのだから仕方がないか。



ん?なぜ俺は死んでいると自分を認識できる?

とりあえず現状を確認してみよう。うっすらと目を開けてみると、そこには真っ白な世界が広がっていた。ただ、誰もいないということはなかった。



複数の人間がそこにはいた。まるで見世物にでもなっている気分だ。複数の人間に囲まれて見下ろされている中、小柄な少女が二人、目の前に現れた。



服装は神話によくでてくるような布とベルトのみの簡素な作りだ。


二人とも水色の髪がセミロングに整えられている。ちょこんと飛び出たアホ毛が可愛い。顔立ちは幼さが残るものの、将来間違いなく美人になると思われる。



双子かな、そんな考えが思い浮かんだ時、声をかけられた。




「「おにーさん、おにーさん。おめでと。」」




この子たちが何故、俺なんかにおめでとうと言っているのか訳が分からなかった。


よく見ると周りの大人たちは優しく見守っている。理解が追い付かない状況にあるため、疑問が幾つも湧いてくるが、とりあえず返事をしないと失礼か。



「ありがとう。」



できうる限り刺激を与えないように笑顔を頑張った。


そういえば凛には、人前で笑顔を見せたらダメ!と何度か言われたことがある。そんなに俺の笑顔はひどいのだろうか。そうだとしたら今の笑顔は逆効果だったのではないだろうか。



「「…」」



二人が黙ってしまった。とりあえず、立ち上がり周りの大人に声をかけて状況を打開しようと試みた。



「すいません、子供に失礼なことをしてしまったのなら謝ります。」



大人たちが目を合わせ、小さな言葉で何やらコミュニケーションをとっている。相手からしたらいきなり知らない人がいた、という環境で困っているのかもしれない。



少ししてから、老人という年齢に当てはまるであろう大人が一歩前にでた。ここの長なのだろうか、貫禄があるような気がする。



「初めまして、地球のお方。まずは名前を聞いてもよろしいでしょうかな。」



痛恨のミスだった。


確かに、会話をするにも、相手の呼び方に困ることはわかりきっていたのに。俺は冷静だと思っていたが、そうでもなかったらしい。



「そうですね、自己紹介させていただきます。


俺の名前は秋本宗あきもとしゅう、宗と呼んでいただいて構いませんよ。こちらもお名前を伺ってよろしいですか?」



そう尋ねると、皆が驚いているように目を見開いた。双子は俯いたまま目が見えない。



「ふむ。これはすまなかった。名前はクラドールと言う。状況が呑み込めないと思うので、まずはわし等の説明を一通り聞いてくれるとありがたいですな。」



願ったり叶ったりの提案だった。そこで話を聞いていくにつれて、生前からの記憶に合点がいった。

まずここは神界であること。ここにいる全員が司るものは違えど、等しく神の身分であることが分かった。



一番初めに見た双子は、見た目通り双子の神であった。名前はルルとミミ、司るものはまだ無いという。成長していくと割り振られるらしい。


双子ということだけあって、意思や繁栄などが候補に挙がっているらしい。



そして俺のことだ。まず、神界にいる時点で一度死んでいることは確定しているとのこと。


ここに呼ばれた理由は、この双子の神様が転生の儀をすることで一人前となってほしいらしい。簡単に言うなら、転生する可能性をあげるから、神様の成長に付き合ってほしいということだ。



ちなみに双子は、かれこれ何年も地球をみており、俺のことは知っているらしい。


悪逆非道な人間を転生させたことで、異世界に悪影響がでることは避けなければならないと説明を受けた。そしてなぜか70億もいる人間の中から、俺が都合よく死んだため、ここに連れてこられたとのこと。



神様が転生の儀をするのはかれこれ2千年ほど行われていなかったらしく、興味本位でほとんどの神様が見に来たため、これだめの神様が集まったらしい。普段は各々仕事をしているため、珍しいことだと言っていた。



双子は実力的には申し分ないらしいが、どうもあがり症になるらしく、転生が成功する可能性は5割らしい。いざとなったら、周りの神様が修正してくれるから心配はしなくてもいいとこっそり教えてくれた。



小さい頃の凛を見ているようで、協力してあげたくなった。話を聞いていると、どうやらルルとミミという名前が双子についていることが分かった。



アホ毛が左側に出ているのがルル、右側に出ているのがミミということ以外で区別のつきようがないくらいそっくりである。




とりあえず、さっきから下を向いている双子に声をかけてみることにした。




「ルル…様とミミ様。」



「「…様いりません。おにーさん。」」




「私はルルでお願いします。」

「私はミミでお願いします。」



幼いとはいえ神様に対して敬語不要とか言い始めたら、社長クラスともため口ができるじゃないか…などくだらないことを考えていると、双子がのぞき込んできた。



「おにーさん、転生の儀に協力してもらってすいません。その代わり、できる限り恩恵をあげるから。おにーさんのことずーっと見てたから優しい人なのは知ってるから!」



「ミ、ミミも恩恵いっぱいあげます。だって、ルルちゃんだけずるいもん…。私だっておにーさんに見てもらいたいし…。」



最後のほうはよく聞き取れなかったが、小さな子が兄姉をほしがるような現象程度に捉えていた。


それにしても神様から恩恵をもらわなければ生きていけない環境って少し怖いな。いきなり砂漠のど真ん中に落とされたりしないように願っておこう。



「では、宗殿。転生の儀をするのでこちらに来てください。」



クラドールに案内され、神殿のような大きな建物に入っていく。


簡素な作りではあるものの、手の込んでいる装飾が見られた。きっと神様の中には、装飾などを司る神様もいるのだろう。異世界転生系の本みたいに、いきなり転生して説明適当で放り出されるよりかはましかな。



「そういえば、転生の儀では俺は何をしたらいいですか?」



「そうじゃな、軽く教えておくとしよう。まずは、最上級の魔法陣をつかって魔力を込める。


これは神が勝手にしてくれるから、宗殿は見ておるだけでよい。そのあと、詠唱が開始され、神から一つだけ願い事をされる。その願い事を受けることで初めて転生が始まる。」



「ちなみに、今までのお願い事って例えばどんなものがあったんですか?」



「確か転生後に人を殺めないことを誓うだとか、神によっては魔王討伐の補助を願うやつもおったな。そう気負いすることはない、あの子らは優しい子たちじゃ。無理難題はいってこんよ。」



確かに、さっきまでの光景を思い出してみても、神様という身分であってもありがとうと言える、これは人格がまともである証拠だと思う。力を手に入れて精神が成長していない子だったら危なかった。



しかし、魔王なんて存在がいるのか。穏やかではなさそうだな。



願わくは、平穏な生活ができるように生きていこう。地球での生活より多少不自由になることはあるだろうけど、もともと養ってもらっていた身だ、最低限の生活ができれば良しとしよう。


次回やっと転生が……できるといいですね

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