第18話「意外な再会」
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「あら?私は首を繋げただけであって、メルは死んでいますわよ?
第一死んだ人間を生き返らせるなんて無理に決まっていますわ。」
アリアは当たり前のように言い放った。さも当然のように言い放ったんだ。
「死体になって愛されるなんて、メルも幸せ者ですわね。羨ましいですわ、本気で死者蘇生の研究に資金を使ってみようかしら。」
「…。ねぇ、そっちの世界ではどうだったのか知らない。
けれど、この世界では人は死んだらそれまでなんだ。そこは分かっていてほしいよ、宗。」
ルクスが俺に言った言葉も耳を通り過ぎた。魔法なんて耳当たりのいい言葉に縋っていた俺が悪かった。まだ、考え方が甘かったんだ。
ここでも、人の命は救えない。
「…。この子、メルを連れて帰る。文句はねぇよな?」
自分でも驚くほどに低い声が出た。
その声を出した直後、一陣の風が吹いたかと思えば、ルクスやオルダム、アリア達が胸を押さえて苦しんでいた。ありえない者でも見たような、そんな目をしていたけれど、決して目を合わせてはくれなかった。
後からルクスに聞いたところ、魔力があふれ出て殺気になっていたらしい。
無造作に解き放たれていた殺気で、みんな苦しんでいたらしい。
申し訳ないことをしたと思う。
そして、一陣の風が吹き去った後に、ルクスに異変が生じた。よくわからないが、自分の手をできうる限り上にあげ、いきなり聞いたこともないような言語で呪文を唱え始めた。
「そvhrhhvmぃほhdfmんrぎfんlりjvdrkんhvldlhv」
俺達は、いや俺は次々と理解できないことが目の前で起きて、ただ立っていることしかできなかった。苦しんでいるように見えるが、拒絶しているようにも見えた。
長く、短いような時間が終えた後には、見慣れた顔が姿を現した。
神話に出てくるような服装。
ひげが伸びている。
優しそうな笑顔。
神、クラドールだった。
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時は少し遡る。
<side クラドール>
ミミとルルの転生を優しく見守っておしまい、そう誰もが思っておったんじゃ。まさか、介入してくる者がいるとはな。
宗殿が了承した後、本来であれば我らの指定した世界に転生させる予定じゃった。
だが、どこから情報を拾ったのか、コード17UMCO3927の世界におる魔王の奴が、持ちうるすべての魔力を使って、介入してきおったんじゃ。
本来であれば、こんな危険で戦争の絶えない世界から介入があるはずはないんじゃ。だが、、一時的とはいえ各自の受け持つ世界の観察を疎かにしてしまったことが原因じゃろう。
介入してきた内容は主に二つ。
1・魔王のいる世界に宗殿を転生させるように仕向ける
2・宗殿に渡したチートスキル”共通言語”以外の消去
とても痛いところをついてきた奴じゃ。ほんの小娘のくせに。
転生の際に、光が赤黒く染まったのも十中八九やつのせいじゃろうな、面倒なことをしてくれるわい。
対策をしているうちに、宗殿の世界では一日過ぎてしまったようじゃ。本当に申し訳ないことをしたんと思っておる。
あの世界には、神力をもっておる生物が少ないからな、乗り移って説明しに行ける生物を探しておったんじゃ。
とりあえず観察をするとしよう。
……
「この子は…ふむ、ルクスという子か。この子、自分では分かっているのか知らぬが、いい神力をもっておる。
この子に憑依することで、一時的にあちらの世界に行けるかもしれんな。」
こうしてわし自ら、下界に赴くことにしたんじゃ。
もちろん、他の神には反対されたがの。わしに勝てる子はおらんよ。ふぉっふぉっふぉ。
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<side 宗>
クラドール、昨日ぶりだというのに随分と久しぶりの再会に思える。
ただ、ルクスがいた場所にクラドールがいることを考えると、多分憑依したりして、無理矢理来てくれたんだろう。
「昨日ぶりじゃな、宗殿。」
「あ、あぁ。クラドール、どうしてここに?」
「どうしてもなにも、聞きたいことがあるのは宗殿のほうじゃろ?
少し手違いがあっての、こんな世界に転生させてしまったことを謝罪させてほしい。
この通りじゃ。」
そういってクラドールは思いっきり頭を下げた。
普通、神様が頭を下げるなんてことはない……と思う。だからこそ、心底謝罪したいという気持ちがあることも理解できた。
ただ、俺はまだまだ子供だ。謝られたからと言ってなんでも許せるほど今の俺は余裕がない。
「クラドール、俺はいま余裕がないんだ。この怒りをどうにかしないと俺は…
どうなるかわからない。」
少しの間、伸ばした髭を撫でるようにしつつ、周りを一周して見渡しているクラドール。いったい何を考えているのかわからない。
「なるほどの、大体わかった。宗殿、今回に限りわしの力を使って世界を歪ませよう。せめてもの償いじゃ。」
そういったクラドールの指先は、眩い光が集まっていた。そして、集まった光は徐々にメルの体に近づいていき、ついには胸のあたりにすっと収まっていった。
「その子を助けられなかったんじゃろ?今、その子に命を渡した。
何せわしは創造神じゃからな。ただ、世界に干渉することは本来であればあまり良しとされぬ。
今回限りじゃと思ってくれ。わしが他の神を説き伏せておく。」
そういったクラドールの体は、薄くなっていた。終始笑顔だったけれど、きっと無理をしていたんだろう。
「そうじゃ、あまり時間がないからこの先に関わる大事なことを言っておく。宗殿の転生に干渉してきたのはこの世界の魔王じゃ。
ただ、きついお仕置きを加えたいところじゃが、そうできないのが残念で仕方がない。
干渉した内容は大体わかっておるな。」
淡々と説明を行ってくれる。
簡単にまとめると、俺はこの世界で生きていくしかないということ、そしてスキルは共通言語以外すべて失っていること。
そして最後に、一言こう付け足してくれた。
「無能力ではそう長く生きれないじゃろう。だから、わしが一つだけ新たにここでスキルを渡しておくぞ。」
そういったクラドールの指に、またも光が集まってきた。スキルの提供で完全にクラドールの体は透明になっていった。
最後に笑顔のまま消えたクラドール。残した光の下に歩いていくと、すっと頭の中に光が入ってきた。
“ スキル 天秤魔法を取得しました ”
おじいちゃん…天秤魔法ってなんですか…