第1話「ゴミ」
初めまして。まずはこのページを開いていただいたこと感謝します。
ド素人が行き当たりばったりで考えていきながら展開していきたいと思います。作者の好きな世界観丸出しですが、どうぞよろしくお願いします。
ここは闇だ。
すべてのゴミはここに集まる。それは何も生活した際に出るものに限らない。確かに人は生活をするうえで決して少なくはないゴミを出す。ここではそんな高品質なゴミの話ではない。
人間は何をもってゴミをゴミであると決めつけるのか。色々な言葉で説明ができると思うが、結局は“人間がいらないと思った不要なもの”がすべてなのではないだろうか。
少し前までは売られていた食材も、傷んだり、余ったりすればゴミに分類される。この上なくシンプルな考えで行き着く答えである。では、人間が人間をいらないと分類してしまうとどうなるのか。
隣人がうるさいからいらない、昼間から酒を飲んでいる怠け者がいらない、などいくつも理由がある。それでも人間は人間をゴミだとは思わない。
それは、社会に最低限必要な人間であり、対象を自分と同じ人間だと認識しているため、人間をゴミと認識を変えることができないのである。
では前提を変えてみよう。その人間が社会に不必要であると誰しもが認識していたら、ゴミと認識されるのではないだろうか。社会に必要ない人間=ゴミである、そのような公式が成り立ってしまった世界がある。
ここは名の無い街。いや、街ですらないゴミの集まる場所。あえて呼ぶのであればスラムが一番わかりやすいだろう。
この場所こそ、歴史に名を轟かせる悪魔。地域によっては英雄であり、信仰の対象であり、侮蔑の名称である男が生まれた土地として、世界中に存在を認められる場所となっていく。
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「コンビニでも行くか…」
俺の名前は秋本宗。大学を中退し、親のすねをかじって生きている所謂ニートだ。両親と妹と合わせて四人で暮らしている。好きなRPGを終え、夜中の2時を回っており、誰も起きていないだろう。
「兄さん、どこか行くの?」
前言撤回。妹が起きていた。名前は凛、一つ年下の女子高生だ。小柄ながらも発育はよく、愛嬌がある。誰にでも話しかけていくタイプで、ザ・人気者といえよう。
大学を中退してからというものの、両親とは少し関係が悪い中、いつも数少ない味方でいてくれる。こんな時間に起きているなんて珍しい。
「ああ、少し飲み物が欲しくて。凛も何か欲しいか?」
少し考える素振りを見せたものの、すぐに笑顔になった。ゆっくりと近づいてきて、くるりと一回転してから返事を返してきた。
「兄さんと一緒に行く!」
「…今何時だと思っているんだ。補導されるぞ。また今度な。」
「お、お願い!家からすぐ近くだし、見つからないよ。それに最近兄さんと一緒にいる時間が足りない。」
こんな兄に、なぜそこまで付きまとってくるのか理解に苦しむところである。無論嫌ではないが。きっと周囲からは、早く兄との関わり合いをやめなさいみたいなことを言われているのだろう。
「…まあ、たまにはいいか。ほら、いくぞ。」
すぐに準備してくるから待ってて!という言葉を残して凛は自室に戻った。別に誰か知り合いに会うわけでもないのに、女の子というのは理解しがたいものだ。
そんな思考を繰り広げていると、5分もしないうちに準備が完了して、二人でコンビニに向かうことにした。
たわいもない会話をしていたらコンビニについた。本当に2分くらいの近場だ。だが、この時ほどコンビニに行くという選択肢をとったことを考えさせられることはないだろう。
遠くでサイレンが鳴っていた。あまり気にせずに帰り道を歩いていると、サイレンの音が近づいてくる。
「兄さん、警察が…その、私未成年で…」
凛の言いたいことはわかる。さらに近づいているのであろうサイレンの音を聞くと、すぐに凛に向き合った。
「凛、先に家まで走って帰ってほしい。俺はこの荷物もあるし、補導されるような年でもないから、のんびりと帰るよ。」
二人で走って家に向かうという選択肢はない。ニート生活で運動することが億劫になっている。凛の足が速すぎることも理由の一部ではある。
大半は俺が走りたくないだけであるが。凛もそこのところは理解しているのかすぐに走り出してくれた。
「凛速いな…って本当にサイレン近い。なんか声聞こえるし、車でも追いかけてんのかな。」
「―――――そこの車!!停まりなさい!!」
後ろから夜中だというのに大きな音が聞こえてくる。それと同時に警察は停まらない車を追跡していることがわかる。当然巻き込まれたくないと思う一方で、若干見てみたい衝動に駆られた。
「もうそろそろここを通るだろうし、脇道から覗いていこうかな。」
脇道に入り、待つこと数十秒。後方からサイレンが迫ってきた。
少し顔を出しつつ、確認をすると、いまだに犯人は諦めないのか逃走劇をしていた。別に死刑になるわけでもないのに、なぜそうまでして逃げるのだろうか。
「結構速度出てるな…!!」
目の前を通り過ぎていくと思い込んでいた俺は、咄嗟に動くことが出来ないでいた。
なぜなら、暴走した車がスピンし、こちらに突っ込んできていたからである。
一瞬にして距離を詰められた俺には、1トンの鉄の塊をどうすることもできずに、激突した。
秋元宗、死亡。
1話は比較的短めだと思います。
冒頭の「ゴミ」に関する記述は後々の布石だと考えてもらえれば光栄です。