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輝石の騎士  作者: Tandk
第一章 少年期
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第三十一話『箱庭』六階層・四戦目

 リザードマンたちが残した僅か張りの晶石を回収すると、アルトリオ達は次の部屋へ向けて移動を始めた。


「まぁそう悩むな、アルト。今考えてもどうしようもねぇことはある。まずは早いとこ此処を攻略して、外で考えようぜ」

「――そうですね、バースさん。お気遣いありがとうございます」

「おう、いいってことよ」


 宛のない戦力増強に頭を悩ませるアルトリオを見かねて、バースが声を掛けた。

確かにバースの言う通り、今此処で悩んだところで何も解決はしない。それならば、迅速に行動を起こして『箱庭』を攻略し、街に戻ってから考えた方が余程実りがある。

アルトリオは気持ちを入れ替えると、悩み事は横において、次の部屋での魔物について思いを巡らした。


「次を倒せば、ようやくフロアボスか。雑魚が出ないとは言え、面倒だったな」

「まぁまぁ、アルトっち。私らの連携も、もう立派なもんじゃん」

「練習、出来た」

「ま、そうだよな。よし、じゃあもうひと頑張りしようか」

「その意気だぞ。さぁ、次は遠距離対策が必須だぞ」


 話が落ち着いたところで、バースが次の部屋で待ち受ける中ボスを見ながら助言をした。


「はい。俺達ならいけます。リア、ネス、行こう」

「うん」

「遠距離はまっかせなさ~い」


 アルトリオがバースにそう答えると、一同を促し部屋へ入る。


「――!」


 部屋で待ち構えていた中ボスはその羽を広げ、一瞬のうちに宙に飛び出す。

バースが遠距離対策が必須という次の敵は、フレームモス。紅い大きな蛾だ。


 アルトリオ達が行動を起こす前に、フレームモスから先制攻撃が放たれる。

頭部の中央にある紅い触角の先に火の玉が複数出現し、アルトリオ達へ向かって放たれる。

放たれた火の玉たちは一直線に後衛――イリアリアとネフェステスに狙いをつけられているようだ。


「甘いな! 一閃」


 だが、火の玉がアルトリオを無視してイリアリア達へ向かおうとしたところ、アルトリオがその場でジャンプして火の玉達を切り裂いた。


「アルトっち、やるねえ!」

「アルトなら、これぐらい当たり前」

「その剣、うまく使いこなしてるじゃねえか」


 通常なら、魔術を物理的な攻撃で相殺する事はほぼ不可能だ。

だが、アルトリオが先ほど入手した新しい武器がそれを容易にさせる。


 五階層守護主ナイトミノタウロスのレアドロップ、ガーディアンズブレード。

護りに重点を置いたこの武器の最大の特徴は、マナ還元付与が施されている事だ。


 人類が行使する晶霊術も、魔物達が使う魔術も、その力の源にはこの世界に存在しているマナが作用している。

マナ還元付与は、付与された武具にマナを用いた術式の効果を無効化する作用がある。

晶霊術でも魔術でも、術式を構成しているマナが還元されてしまうと、術式が維持できなくなり、術そのものも無効化される。

対術の効果が施されているからこそ、このガーディアンズブレードの価値は非常に高く、需要が絶えないのだ。


 尤も、その効果を発揮するには”放たれた”術の術式を的確に攻撃する事が求められる。

つまりは、術が発動する前に止める事は出来ず、また術の核に攻撃を当てないと、十分に機能しない。

使い手を選ぶ、正に後の先の剣である。


 確かにアルトリオは壁役(タンク)としての経験はこのパーティーが結成されてからと浅い。

しかし、これまで培ってきた騎士としての腕前はそれなりのものだった、という事だろう。


「皆照れるだろ! さあ、反撃開始だ」


 アルトリオが照れを隠すかのように、低空を飛行するフレームモスに向かって駆ける。

だが、このままではフレームモスの放つ魔術の迎撃はできても、相手へ攻撃をする事ができない――アルトリオだけならば、だが。


「影縫い」

「落とすよー! Arcane(アーケイン) Bolt(ボルト)


 先行するアルトリオを追い抜かして、イリアリアとネフェステスの攻撃がフレームモスに殺到する。

イリアリアの影はフレームモスの羽ばたきを一時停止させ。

動きの止まった羽をイリアリアの一撃が穴を空ける。


「――!」


 フレームモスは声にならない叫びをあげながら、墜落していく――下で待ち受けるアルトリオの頭上へと」


「一閃!」


 アルトリオの一閃は、フレームモスの頭部を斬り飛ばし、この部屋での戦闘は数分も経たずに決着がつく。


「まぁ、対策が出来ていればこいつの地力は無いからな。こんなもんだろう」


 バースがアルトリオ達の戦闘をみてそう評した。

元々、魔物の中でもモス系の者達の殆どは個体そのものの戦闘力は低い。

その代り、魔術や固有能力を使える事が多いが、それも対策出来れば問題は無い。


 フレームモスは空中から火属性の魔術を中心に攻撃してくるため、遠距離対策が出来ていなければ苦戦していただろう。

だが、アルトリオ達は確りと連携を取る事で、自分たちの強みを活かして早期決着を図った。

個々の力とパーティーとしての力。アルトリオ達は順調に成長していると言って良い。


「さあ、フロアボスはこうも簡単にはいかねえからな。坊主達もひとまず休め」

「はい、バースさん。皆、休もうか」

「休む」

「了解! おやつあればな~」


 バースが言うように、次が六階層最後の敵。

六階層守護主が待ち受けている部屋に行く前に、アルトリオ達は小休止を取る事にした。

 




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