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輝石の騎士  作者: Tandk
第一章 少年期
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第二十七話 『箱庭』・六階層 中ボス

ご無沙汰しておりました。

お待たせして申し訳ございません。


暫く体調が芳しくなかった為、勝手ながらお休みさせて頂いておりました。

ここ最近は落ち着いてきましたので、再開させて頂きます。


不定期の更新となってしまうかもしれませんが、

引き続き、どうぞ宜しくお願い致します。

「グモアァァァ!」

「ダメ、止まらない」


 イリアリアが放った影縫いは、アルトリオ達めがけて突っ込んできている者に対し、確かに作用した筈だった。しかし、その効力が発揮されることなく、猛烈な勢いで突進してきている。


「リア、下がれ。俺が抑える!」


 アルトリオが相手の機先を制すべく、新しい紅く鈍く光る相棒と共に突っ込んだ。

両者の武器が激突した瞬間、アルトリオはその衝撃に吹き飛ばされそうになるが、ぐっと堪えた。だが、その負担はアルトリオに大きく圧し掛かる。


 なぜならば、今回の敵はミノタウロスウォーリアー。巨大な戦斧を軽々と両手で振り回す、一撃必殺の戦闘スタイルを取る。そのタフネスさを根幹としたさながら捨身の如き圧力の前には、生半可な者では立ち塞がる事も叶わないと言われている。


 その戦闘センスによって力をある程度逃がしているとは言え、アルトリオに文字通りかかる負担は大きい。この均衡は長く持たないであろうことは一目瞭然だ。


Arcane(アーケイン) Bolt(ボルト)

「グモァ!?」


 そこへ、ネフェステスから紫色に光る一筋の矢が放たれ、ミノタウロスの顔面に直撃した。

大したダメージにはなっていないだろうが、動揺を誘い体勢を崩すことに成功する。


「ナイスだ、ネス! ――一閃」


 ミノタウロスの圧力から解放されたアルトリオが剣を一閃させ、ミノタウロスの脇腹を切り裂いた。


「グゥモオオオ」

「ちっ! 浅かったか」


 しかし、アルトリオの一撃はミノタウロスにとっては問題にならなかったのか、体勢を立て直して反撃してくる。

アルトリオはまた力比べにならないよう気を付けながら、注意をひきつける。


「リア、合図を出したら目を狙ってくれ! ネス、次で決めるぞ」

「分かった」

「まっかせて~!」


 アルトリオの指揮のもと、イリアリアはその瞬間に備えて待機し、ネフェステスは一撃を見舞うべく詠唱を始める。

彼女らにミノタウロスが注意が向かないように、アルトリオが適宜反撃を加えながら牽制する。


「そろそろ、幕引きだ」


 ネフェステスの詠唱が待機状態に移行したのを見て、アルトリオの動きが変わった。

これまで牽制を目的とした受け身の姿勢だったのに対し、苛烈に攻撃を加えていく。

必要最小限の動きを以て攻撃を躱し、もののついでとばかりにミノタウロスの体を切り裂いていく。


「グモア!」


 幾ら人外のタフネスを誇るミノタウロスであっても、痛覚はある。一つ一つは大したことではない傷でも、積み重なれば流す血の量も多くなり、無視出来なくなってくる。

怒りに燃えるミノタウロスが、目前の矮小な者を潰す為に、その両手で持つ戦斧を高く掲げた。これを渾身の力で振り下ろせば、たとえ躱されたとしても、攻撃の余波が追撃を容易にしてくれることだろう。


「――今だ、リア!」

「影針!」


 ミノタウロスが戦斧を振り下ろす瞬間、時機を待っていたイリアリアから一筋の影がミノタウロスの顔面に向かって迸る。


「グモッ」


 イリアリアが放った影針は寸分の狂いも無く、ミノタウロスの片目に突き刺さる。

さすがのミノタウロスも一瞬怯んでしまい、戦斧を振り下ろす機会を永遠に失ってしまった。


「|Arcane Bullet(アーケインバレット)


 ネフェステスの周囲に複数の紫色の球体が出現し、即座に幾筋もの紫色の閃光となってミノタウロスへと殺到した。


「グ、グモオオオオ」


 防御する間もなく、ミノタウロスは紫弾に打ちのめされ、断末魔を残して消え去った。

跡に残ったのは、五階層守護主のものよりも一回り小さい、丸い晶石のみだった。


「ちぇ~、中ボスとはいっても、ドロップはしょっぱいね~」

「そんなもんだろ」

「ネスは欲張り」

「二人は朴念仁過ぎるんだよ!」


 六階層は雑魚の魔物が居ない代わりに、階層守護主までの間に中ボスと言われる魔物が部屋毎に待ち構えている。

階層守護主ほどではないがそこそこ強力な個体が多い故に、ネフェステスはドロップにも期待していたのだが拍子抜けしたのだ。


 アルトリオとイリアリアはドロップ品には元々興味は薄く、当たれば素直に嬉しいが、外れの時はそんなものかと気にもしない。

そんな二人の様子にネフェステスは呆れたのだが。


「お前ら、無駄口はそれぐらいにしとけ。時間は貴重だ」


 バースがさも面倒そうに、一行へ先を促した。アルトリオ達を成長させるために口出しはしないが、彼とてイレーネから下された使命があるのだ。

時間は有効に使いたい。


「ほら、行こう」

「うん」

「――もう! 次こそ良いの出してやるんだから!」

「やれやれ」


 アルトリオとイリアリアが先へ進むと、ネフェステスがなんだかんだ言いながら先へ進む。

勿論、いくらネフェステスが気負ったところでドロップへ影響することは無い。バースは呆れながらも、若者たちの後に続いた。


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