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輝石の騎士  作者: Tandk
第一章 少年期
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第二十五話『箱庭』・五階層 レアドロップ

「影針!」


 イリアリアの影針が正面からナイトミノタウロスの量目を狙って放たれる。


『グモウ!』


 そのあからさまな攻撃な当然ナイトミノタウロスが盾を使って防ぐ。

しかし、それこそがイリアリアの狙いだった。


 ナイトミノタウロスの右手に抜けていたアルトリオが、イリアリアが気を引き付けている間に後ろに回り込む。


「――一閃!」


 その巨大な両足の膝裏を掻っ切るかのように、アルトリオの鋭い一撃が直撃する。

それは軽傷かもしれないが、盾を構えた為に膝に体重が乗っていたミノタウロスの体制を崩す事には成功した。


『モオオオ!?』


 ナイトミノタウロスは倒れこむ事こそなかったが、盾を支えにして左膝を折ってしまっていた。

前傾姿勢となったミノタウロスの頭部を狙って、アルトリオ達の本命の一撃が飛来する。


「ここよ!! |Arcane Ballet(アーケインバレット)!」


 裂帛の叫び声と共に、ネフェステスの周囲に紫色の球体が複数出現し、ナイトミノタウロスへ向かって殺到した。

幾筋もの紫色の閃光が迸り、大勢を崩していたミノタウロスの頭部へと直撃する。


『……グ、グモ』


 ネフェステスの強力な晶霊術は、ナイトミノタウロスの頭部へと致命的な損傷を与える事に成功していた。

最期に力なく声を上げたナイトミノタウロスは、そのまま床に突っ伏して力尽き、小ぶりな玉の形をした晶石と、銀色に鈍く光る長剣――人に合わせたサイズだ――を残して消え去った。


「おう、お疲れ。ネス嬢の晶霊術、一撃とは 反則だな」


 アルトリオ達の階層守護主との戦闘を全て見届けていたバースが、部屋の入口からアルトリオ達の元へ近寄ってきた。


「当ったり前じゃん! 私に不可能は無いのだ!」


 ネフェステスが弾ける笑顔でピースサインをバースに向ける。


「お、おおう。そうだな。さすがネス嬢だ」

「ふっふーん!」


 やや引き攣りながらバースが相槌を打つと、益々ネフェステスの笑顔が深まった。ついでに発展途上中の胸も反り返っていく。


「実際、助かったよ。俺とリアだけじゃ長期戦必須だった」

「予定外。でも、感謝」


 そこへアルトリオも会話に混じった。その手にはナイトミノタウロスからの戦利品を拾ってきていた。

イリアリアも突然のネフェステスの参加に内心不承不承だったが、この一件で彼女が今のアルトリオ達にとって必要な事を認め、彼女の参加を歓迎した。


「どういたしまいて、リアっち! それでアルト、その長剣ってもしかして――」

「――あぁ、ナイトミノタウロスのレアドロップ、ガーディアンズブレードだな」

「「おおおお」」

「大した運を持ってるな! 最期にドロップしたのは二、三年前だったはずだぜ」


 ネフェステスが注目したアルトリオの手にある、ナイトミノタウロスが残した長剣。

それはナイトミノタウロスのドロップ品の中でも希少品― ―レアドロップと呼ばれる― ― のガーディアンズブレードだ。


 無星ダンジョンとは言え階層守護主の落とすレアドロップの武具は、当面は装備の更新が不要になるほど強力な場合が多く、ルーキー達にとっては垂涎の的だ。


 ガーディアンズブレードは長剣だが片手で持てるほどに軽く、それなのにナイトミノタウロスを表すかのように非常に頑丈だ。

切れ味は良品と言って良い程ではあるが、名品と呼べるほどではない。

但し、アルトリオの様に守りに重点を置いた戦い方をする剣士にとっては、それはデメリットとはならない。


「まぁこれは、アルトリオ。お前が使うべきだな。その古いのは大事にしまっとけ」


 バースがアルトリオに促すのも当然のことだ。


「そう……だな、皆もいいか?」

「むしろ使うべき」

「当! 然!」

「ありがとう、大事に使わせてもらうよ」


 アルトリオは二人に感謝すると、腰に携えていたずっと使い込んできた剣をミニストレージリングに仕舞う。


「こいつにも世話になったな」


 真剣として初めて持つことになった剣だ。少年時代よりずっと使い続けていた。

毎日丁寧に手入れをしていたとはいえ、それなりにガタが来ていた。

このタイミングで武器を更新する事が出来るのには、何か運命的なものも感じられる。


「これから、よろしくな」


 手に入れたガーディアンズブレードを腰のベルトにさして固定した。このダンジョンを踏破したら、専用の鞘を拵えなければ少々不便だが、当面はこれで凌ぐしかないだろう。


「似合ってる」

「ありがとう、リア」


 やや赤みが買った刀身のガーディアンズブレードは、アルトリオの雰囲気も相まって良く似合っていた。

イリアリアがアルトリオへストレートに感想を言うと、バースが二人を茶化す。


「おーおー、ここはダンジョンだぞ。惚気るなら帰ってからだな!」

「バースが僻んでるー! みっともなーい!」

「ネス嬢、てめえ!」

「きゃー! 変態に犯されるー!」

「待ちやがれ、この!」


 二人を茶化したバースを今度はネフェステスがからかい、暫しの間一行は五階層守護主の部屋で戦闘後の休息を取る事となった。

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