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輝石の騎士  作者: Tandk
第一章 少年期
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第二十二話 『箱庭』

「違う、リア嬢! ヘイトを取りすぎないよう足止めするんだ! アルトは突出しすぎだ!」

「バース、私は~?」

「ネス嬢は真面目にしろ!」

「そのうちね、そのうち!」


 イレーネがアルトリオ達に貸した試練、パーティーの結成。

その達成条件となる二つの無星ダンジョンの踏破を目指し、昨日初めて出会って一宿一飯を共にした一行は、迷宮都市バーズの中心にある無星ダンジョン『箱庭』へと早速挑戦していた。


 昨日既に二階で連携を固めたアルトリオとイリアリアだったが、先達のバースから見ればまだまだその連携は荒く、二人には細かく助言をしていた。


 二人に対し、当初こそ幾つか忠告というか冒険者の心得を教わったネフェステスだったが、今はもっぱら放置されてしまっている。


「バースさん、終わりましたよ」

「疲れた」

「あ、ああ。お疲れさん。まぁ何とか及第点と言ったところだな」


 バースがネフェステスに気を取られているうちに、戦闘を終えたアルトリオ達が戻ってきた。


「やっと、及第点ですか。三階層でこれでは、少々厳しいですね」

「ふん、当たり前だ。いくら無星とはいえ、ダンジョンはダンジョンだ。足元を固めねぇうちに上へ行っても、自滅するだけだ」

「確かに、その通りですが……間に合いますかね?」


 アルトリオ達は今、全十階層の『箱庭』の三階層で戦闘時における連携を高めている。

バース曰く、五階層以上はパーティー結成の登竜門と言われるほど、メンバーの連携が求められてくるらしい。

朝から訓練を初めて昼を過ぎた頃で漸く、バースから合格点が出たところだ。本当に目標を達成できるのか不安が残る。


「アルトとリオ嬢が基本を押さえて、ネス嬢が一発ぶちかます。そうすれば、無星ダンジョンなら単純な戦闘力だと敵無しだろうよ。上手くできればだがな。尤も、俺が面倒見る以上は上手くいかせるがな」


 バースにとって予想外だったのは、アルトリオとイリアリアの地力だ。

元々冒険者は腕に覚えがあるものが門戸を叩く場合が多い。成長過程の若者であっても武術経験者が多い。

全くの初心者向けに冒険者ギルドで初心者講座も希望すれば受けられるが、利用者は少ないのだ。


 そういった数多くいる新人冒険者の中で、十代後半の若者としては頭一つ抜けた実力が二人にあることをバースはその目で確認した。

アルトリオは護りに重点を置きつつ手数は少ないが、一太刀の威力を重視した騎士流の剣術。

イリアリアは刺突剣を使った護身術と、汎用性の高い晶霊術。

それぞれに個性派あれど、五星の実力者のバースから見ても悪くないコンビだ。


 ――それに何より


「ネス嬢の瞬間火力は相当なもんだ。活かせる状況は限定されるが、流石はイレーネ本部長の教え子といったところかだな」


 イレーネが送り出したダークエルフの里の種、ネフェステスの扱う晶霊術は一線級の威力を持ったものだった。

但し、彼女自体は武術を嗜んでいるわけではなく、誰かと連携しての戦闘も経験が無かった。

何せ、このダンジョンに来るまで実戦経験すらなかったのだから。


 三人の少年少女――一人はダークエルフにしては、と注釈がつくが――が目標を達成するには、取れる手段は一つしかなかったのだ。


「ネス嬢にヘイトを向けずに彼女を活かすことが、アルトとリオ嬢の使命だ」

「うん、分かってるよ」

「がんばる」

「宜しくね、二人とも!」


 バースの言葉に各々返事する三人。バースに対してアルトリオが冒険者ギルドでの接し方と違うのは、出会いこそ良くなかったが、彼の指導が的確だった為だ。


「――よし、休憩はもういいな。ここからはペースをあげるぞ」


 休憩が十分と見たバースがアルトリオ達へ先を促す。あと七階層もあるのだ。この『箱庭』にかけられる時間はそう多くない。

一行はそれから一時間程度で四階層まで踏破し五階層へと到着した。


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