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輝石の騎士  作者: Tandk
第一章 少年期
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第二十話 三人目

「「――済まなかった!!」」


 冒険者ギルド中央本部長執務室。二人の少年少女に対し、厳ついお兄様達――五星のバース率いる六星パーティ―、サラ・ガーディアンズが頭を揃えて下げて謝罪していた。


「俺はもういいさ。換金できればそれでいい」

「興味ない」

「……そ、そうか。感謝する」


 少年少女――アルトリオとイリアリアのつれない対応に、顔を引きつらせながらも礼を言うバース。

いつもは豪胆なバースも、流石に本部長の眼がある中ではそうもいかない。と言っても、毎回騒ぎを起こすので今更ではあるのだが。


「バースさん達には、一週間奉仕活動をして貰います」

「サラお嬢の仰るとおりに」


 サラがイレーネと視線の会話を行った後、バース達に処分を伝える。これも毎度の事なのだが。


「奉仕活動の内容は私が決めてやろう。バース、一週間以内にアルト達のパーティーを結成させろ」

「イレーネ本部長、承知致し……って、えぇぇ!? そらあ無理でさあ! パーティーを結成するには無星ダンジョンを二つ踏破しないといけねえ! それをひよっこ共が一週間でなんて、無茶ってもんですぜ!」


 イレーネが放った衝撃的な一言に、バースが驚愕に目を見開いた。


 冒険者がパーティーを組むのに必須の条件。それは、パーティー候補による無星ダンジョンを二つ踏破する事だ。

当然、攻略中の不正を冒険者ギルドに隠すことは事実上不可能な対策がされており、正真正銘本人たちで踏破しないといけない。

但し、先輩冒険者が一名アドバイザーとして同行する事は許可されている。勿論手出しは現金だが。


 幾ら無星ダンジョンとはいえ、通常なら一つのダンジョンを初挑戦から踏破するのには数か月を要する。

元々高名な実力者であったとしても、ダンジョン探索は武力だけで成し得る物ではない。


 迷宮都市バーズ及び近郊に存在する無星ダンジョンの歴代催促踏破が四週間と聞けば、イレーネの指示がどれほど無謀かは分かる事だろう。

それに、そもそも――


「おまけにこいつら――」

「アルトだ」「リオ」

「――アルトとリオはコンビだ! 最低でも四人は居ねぇと話にもならねえ! イレーネ本部長、申し訳ないが断らせて頂きやすぜ。罰金でも何でも構わんです」


 ダンジョン攻略には転移装置の関係で最大七名が一つの集団単位としての人数だ。

探索に必要な技能を踏まえると、最低でも四名が必須というのが常識となっている。


「まぁ、落ち着けバース。驚くのも無理はない。何、私もそこの二人だけで、とは言っていない。アルト達のパーティーと言ったんだ」

「……ってぇと」

「そうだ、私の方から一人、メンバーを用意する。そいつを含めて三人でなら可能だ。それに手を抜くのは許さんが、未達成の時にバースへのペナルティは無い」

「イレーネ本部長の肝いりが参加する……となりゃぁ、別って訳ですかい。その条件でなら承知致しやした」

「あぁ、頼んだぞ」

「へい」


 イレーネの説明にバースが納得して奉仕活動の内容が確定した。

しかし、今のイレーネの説明にアルトリオが待ったをかけた。


「イレーネさん、今のお話だと見知らぬやつと連携して前代未聞な事を成し遂げろと聞こえましたが? それに、バースさんには罰則が無くても、俺達にはあるってことですね?」


 そう、アルトリオとイリアリアはここに至るまで二人でやってきたのだ。突然見知らぬものと命を懸けて連係しろと言われても、そう易々と出来る筈もない。

それにイレーネは、バースへのペナルティは無い、と言ったのだ。なら、他の者にはある事を指している。


「異論は受付けぬ。達成できなかった場合、とっておきのおしおきを用意しておく。楽しみにしておけ」

「……! 分かりました」


 有無を言わさぬイレーネに、アルトリオは悔しげに引き下がった。先ほどの約束を変更されても困るのだ。強くは出れないし、拒否権も元々ない。


「さて、話が纏まったところで、三人目を紹介しよう」

「――え? 支部長、他に誰か呼んであるんですか?」


 こんな場面に予め誰かを呼んでおくことなど、とても無理そうな話だが。サラの疑問をよそに、イレーネは扉の外へ声をかけた。


「おい、もういいぞ。入ってこい」


 その言葉が終わると扉がゆっくりと開き、新たな人物が皆に注目されながら入ってきた。


「全くもう、待ちぼうけにもほどがありますよ、姐さん!」


 ぷんすか起こりながら入ってきたのは、イリアリアと同じぐらい小柄な発育途上の、端正な顔立ちに浮かぶ豊かな表情が可愛らしいダークエルフ。


「まぁ、そう言うな。 さて、お前達。こいつは、ネス。私の妹。アルト達のパーティーの三人目だ」


 静寂に包まれている執務室にイレーネが妹を紹介する声が良く通った。


「「「――はああああああああああああ!?」」」


 その発言に呆然とする事十数秒後、一同は揃って驚愕の声を上げた。あの、イリアリアでさえも。


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