(3)おっちょこちょいな神様がいました。
『オホン、あー起きてくれるか?』
日本語…?
に、日本語ーーー!
嬉しさにハッと目を覚ますと、一面真っ白な、雲に包まれたみたいな世界にいた。
『え?』
『お?』
『誰…だよ?』
『オホン。ワシは神様じゃ!』
これ以上ないくらいのドヤ顔で、胸を張って威張ってくる白髭の老人。いかにもな、先がぐるっととぐろに巻いた形の杖を持っている。
『マジで神様?』
『そうじゃ!』
『マジでそんな杖持ってんだ?』
『これか?これはな蔵天のスーパーセールで買ったんじゃ』
『は?』
『そうかそうか、ミヅキちゃんはまだ7歳じゃからな。蔵天とか知らないかな』
ミズキちゃん?
7歳…?
『いや、ちょっと待て。7歳って?』
『ミヅキちゃんの歳じゃろ。…それにしても、そんな男らしい話し方じゃったかのぅ?』
『俺、男だよ?』
『え?』
『え?』
『タケダミヅキちゃん?』
『タケダミズキくん』
『…ちょっと待ちなさい』
神様を名乗るオッサンは、徐に杖の上のとぐろ部分を引っ張る。すると、それがパカッと外れ、そこからスマホを取り出した。
『え?!スマホ?!』
『あーこれ、スマホケースじゃ。スーパーセールで100円じゃった』
投げ売りだね。
そんな邪魔くさいスマホケース作った人を褒めたいよ、俺は。
『あ、もしもし?ちょっとさ、紙とペン持ってきてくれんかの』
スマホをまたケースにしまうと、天使がひらひらと飛んできた。手には紙とペンを持っている。
『えっ?!天使?!スマホで呼ぶの?!』
『いや本当は念じれば来てくれるんじゃが、文明の利器を使ってみたくての~』
なんか調子狂うな。本当に神様なのか?
オッサンはサラサラと紙に字を書く。
『竹田美月ちゃん?』
言いながら紙を見せてくる。
俺は、紙をひったくるとサラサラと名前を書いた。
『武田瑞希くん』
『…ノォォォォォォウ!やってしまったぁぁぁぁ』
察するに、壮絶にやっちらかしてるみたいだ。
俺を同姓同名の7歳の女の子、竹田美月ちゃんと間違えたらしい。
『ね、いつ死んじゃった?』
『え?た、多分12月25日かな…?』
あの頭痛。あれからの記憶がないし、あの後、転生的な記憶があるから、死んでるとしたら飲み会をしたクリスマスだ。
『…ノォォォォォォウ!一日間違えた!』
『えっ?!どゆこと?!』