(1)遺言~部屋は片付けましょう~
あー、頭がズキズキする。今日も飲み過ぎたなぁ。大体さ、孝が煽るのがいけねぇんだよなぁ。まだまだ学生のノリが抜けねぇな~
蛇口をひねって、零れるのもお構いなしに水を注ぐと、ごくごくと一気に飲み干す。
それにしても、なんかヤバくないかな?異常に頭が痛いぞ
そこで俺は、酔いが冷めそうな考えに至る。
ヤベ…
もしかしてさっき?
今日は草野球チームの仲間で、忘年会だった。クリスマスだっていうのに、俺のいる草野球チームのメンバーはみんな予定ガラガラ。これはもう笑い話にしよう!って事で、忘年会を開催することにした。
いつものごとく、ベロベロに酔っぱらって帰ってきてトイレに入って、千鳥足で部屋へ戻ったんだけど。
俺の部屋は汚かった。
25歳。彼女もいない一人暮らし。
部屋なんて片付ける訳がない。そこら辺にゴミが散らかり、俺の大好きなアイドルのCDとか写真集にエロ本まで無造作に積み上げられていた。
いつものようにチョイチョイと足でゴミを避けて通り道を作る。
でも今日は、酒の飲み方が悪かったのか。いつも以上に足下が覚束なかった。そして、積み上げられていたエロ本に豪快に躓き、受け身なんて取れるはずもなく、テーブルに思いっきり頭をぶつけた。
『…いってぇ』
頭をさすりつつも眠気には勝てず、そのままベッドへ体を投げ出した。
どのくらい眠ったか、喉が渇いて目が覚めて…
そして気付く。
尋常じゃない頭痛。
ズキズキなんてもんじゃない。これを世間では、バットで頭を殴られたような痛みって言うんじゃないか?
鼓動がドクドクと早鐘を打つ。
ヤバイ、ヤバイぞ。
俺もしかして死ぬんじゃないのか?!
こんな死に方アリか?!
ちょっと待てって!
今をトキめくアイドルグループ、ABC84の年越しライブ。
初めてのアリーナ席だぞ!やっと掴んだプレミアチケットだぞ!
あのコンサート行かずして死ねない…絶対死ねない!
あぁマジで調子に乗って飲みすぎるんじゃなかった…
部屋、片付けとけば良かったな…
みんな部屋は綺麗にしましょう…
それを最後に俺は、ズブズブと真っ白な意識の淵へと堕ちていった。