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IT革命以後も、やっぱ父親は娘が大好き


 ……その頃、舞奈は。


「やっほー。捗ってるー?」

 舞奈がやって来たのは、データベースルーム。ここでは捜査に必要な情報を得ることが出来る。例えば、全日本国民の戸籍情報や住民票情報も簡単に検索できるのだ。これにより、身元の照会も一発だ。

「あ、小宮間さん。順調ですよ」

「そうなんだ。良かった」

 部屋にいた刑事は、他の子供たちについて調べていた。舞奈もその隣に陣取り、PCを操作する。

「えっと、朱雀心、玄武亜子、清流涙花、柏湖唄羽、と」

 先程の女児たちの氏名を入力し、戸籍と住民票の情報を請求する。ものの数秒で検索が終わり、結果が画面に表示された。……と思いきや、画面には何の情報も表示されていない。

「……あれ?」

「どうかしました?」

「えっとね、検索結果が表示されないの」

「ああ。それは該当者なしってことですよ」

「該当者なし……?」

 刑事曰く、要するに、あの女児たちの戸籍や住民票はないということらしい。とはいえ、漢字を間違えている可能性もあるので、舞奈は名前を平仮名にして、再度検索を試みた。この検索システムは、読み仮名で絞り込むことも出来るのだ。

「うーん……やっぱり、該当者なし」

 それでも結果は同じ。更には聞き間違いを考慮し、似た響きの名前で再度検索するが、それでも出ない。最後はインターネット検索してみるも、それでも結果は同じだった。

「あれー?」

 ここまで来ると、可能性は二つに絞られる。一つは、彼女たちが偽名を使っている可能性。もう一つは、彼女たちが無戸籍である可能性。しかし前者は、彼女たちも互いの名前を呼び合っているので、偽名の可能性は低い。というか、あの年頃で偽名を使うという発想が出来るのかが疑問だ。また、偽名にしては凝っているのも気になる。となると、残るは後者だな。

「うーん、無戸籍っていうのは面倒だなぁ……住民票もないみたいだし」

 戸籍も住民票もないとなると、この日本で身元を割り出すのはかなり大変だ。下手をすれば、家族や保護者を見つけられないことも考えられる。

「とりあえず、地道に探すしかないかな……」

 となれば、こつこつやるしかない。こういう場合、親は戸籍持ちのことが多いので、まずは苗字だけで検索することにした。彼女たちはどれも珍しい苗字なので、親や家族の戸籍はすぐに見つかるだろうという判断だ。

「あ、あった」

 案の定、それぞれの苗字だけで検索したら、それぞれ一世帯だけヒットした。

「……うーん、どれも遠いなぁ」

 しかしながら、本籍は東京、北海道、沖縄など、どれも遠方だった。直接会うにはどれも遠すぎる。

「住民票には電話番号は載ってないし……全部電話会社に照会しないと」

 そんなわけで、作業はまだ掛かる様子。……まあ、これが仕事だからな。仕方ない。



  ◇



 ……三十分後。


「というわけで、まだ暫く掛かるので、この子達を預かってください」

 会議室にて。戻ってきた舞奈は、優に対して頭を下げながらそう言った。

「私は別に構わないけど、普通は警察が預かるものじゃないの?」

「そうなんだけど、その子達ってちょっとあれじゃない? 警察で預かるのはちょっと大変っていうか……ぶっちゃけ手に余るんだよね」

「そう……まあ、それもそうよね。こっちとしても、もう暫く一緒にいたくなったし」

「どういうこと?」

 首を傾げる舞奈に、優は先程のことを話す。すると舞奈は感心したように頷いて、こう言った。

「さすがはお優さん。殺しても死なないとはまさにこのことだね」

「他人事だからって、そんなに軽く受け止めないで。私だから平気だったけど、普通は死んでるのよ? っていうかそこはどうでもいいし」

「分かってるよ。でも、だったら余計に預かってもらわないと」

「ええ、そうね。異存はないわよ」

 殺されかけたことをどうでもいいと切り捨てる優と、それを知った上でなおも女児たちを預けようとする舞奈。彼らの感覚がややずれているようにも思えるがそれはそれとして。四人の女児たちは、優たちで預かることとなった。



  ◇



 ……それから彼らは、優の家に移動することに。


「っていうか、あんたも来るんだな」

「そうだよ? だって、乗りかかった船だし」

 優の被保護者である狼や、同居人の闇代、一片だけでなく、美也も彼らについて来ていた。家には帰らなくていいのだろうか?

「伯父さんには事情を話してあるし、大丈夫だよ」

「まあ、それなら止めないが」

「っていうか、その人だけ家が違うの?」

「そもそも、みんな一緒に住んでるの? その辺どうなの?」

 すると、唄羽と亜子がそんな言葉を投げかけてくる。これから厄介になるんだ。ホストの家庭環境は色々と気になるんだろう。

「うんと、お優さんと狼君が義理の親子で、わたしと一片君は居候なの。あと一人、一片君の妹でてんちゃんがいるけどね」

「ぷっ……居候って」

「……一片君、この子、殴っていいよ?」

「遠慮しておく。児童虐待は趣味じゃない」

 折角説明したというのに、亜子の態度が気に入らず、一片を唆そうとする闇代。しかし、一片は彼女よりずっと大人なのか、スルーしていた。

「あーあ。私もこっちに移りたいなぁ」

「止めてくれ。俺があんたの伯父さんに殺される」

「あー、うん。あり得るかも」

「寧ろ、狼君がわたしのパパに殺されなかったのが不思議だよね」

「軽くボコられたけどな」

「あー、そういえばそうだね……」

「何その「娘さんを僕に下さいっ!」的なイベントッ!? 羨ましいっ! 私の伯父さんにもボコられてよ狼君っ!」

「無茶言うな」

「内輪ネタで盛り上がられると蚊帳の外なのよぉ!」

 完全に置いてけ堀を食らったのが不服だったのだろう。涙花がそんな声を上げた。ちょっと可哀想だな……。新規さんに配慮のない会話だったし。

「じゃあ、みんなのことも話してよ。ね?」

 それならばと言わんばかりに、闇代はそう返した。自分たちも女児たちのことを知りたかったし、丁度いいと思ったのだ。

「えっと、その……」

「とりあえず、子供の癖にお姉さんぶる金髪は嫌い」

「金髪限定なのは、何か意味があるの?」

「そんなことも分からないの? 病院行けば?」

「それもうただの暴言だよ? 名誉毀損で訴えたら勝てるよね?」

「子供相手に裁判とか本気なの? 正気?」

「狼く~んっ! この子の相手疲れるぅ~!」

「諦めろ。俺も色んなことを諦めてる。お前とか、美也とか、他にもな」

 狼が言っているのは、彼女たちに振り回されることを是とした、という意味だろうか。それならば、確かに色々諦めさせられたのだろう。

「みんな、そろそろ着きますよ」

「はーい」

「はーいなのよぉ」

「へーい」

「……」

 いつの間にか口調が戻った優の声に、女児たち(約一名を除く)は、各々返事をするのだった。

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