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デートはデッド。ライフはないです、はい。


 ……さて、残りのメンバーは。


「瞳君、天ちゃん、行きますよ」

「了解した」

「はい」

 優は一片兄妹を連れて、ある場所へと向かっていた。それは―――

「あ、お優さん。やっほー」

 待ち合わせしていたのは、舞奈だった。彼らがやって来たのは、警察署。捜査の進捗を尋ねに来たのだろうか。

「小宮間さん。どうですか?」

「うーん、まだまだかな。一応、関係者っぽい人たちの捜査を頼んであるんだけど、音沙汰ないし」

 しかしながら、捜査のほうは進展なし。とはいえ、それも予想通りだが。

「そうですか。……後は、「ラボ」の件ですね」

「うん。あいつら、まだ動く気配がないけど……狼君のときは十何年も経ってから動いたから、油断は出来ないね」

「どうなるか分からない分、小宮間さんも十分に警戒してくださいね」

「うん。それはもう、警戒しまくりだよ」

 「ラボ」対策についても話し合う二人。……っていうか、一片兄妹がいる意味あるのか? それとも、暇そうだったから連れてきたのか?

「だから今日だって―――」

「お兄様っ……!」

「分かっている」

 と思っていたら、一片兄妹の様子がおかしい。突然叫び出し、どこかに視線を向ける。

「お二人とも、あちらです……!」

「噂をすれば、何とやらダナ」

「まさか……「ラボ」ですか!?」

「そのまさかダ」

 どうやら、「ラボ」の連中とやらが現れたらしい。……一片は既に説明した通りだが、妹の天も霊感を持っている。彼らは退魔師一族の生まれで、除霊師である闇代とは似たような境遇なのだ。そんな二人が、何か異常を察知したのだった。

「私のほうでも捉えました。前方三キロメートル……確かあそこは、廃ビルでしたね」

「うん。しかも、「ラボ」の拠点だった場所。地下の下水道とも通じてるよ」

「皆さん、行きましょう。先制攻撃です」

 優の言葉に、他の三人は無言で頷いた。



 ……さて、デート組はどうなっているのか。


「お兄さん、ゲーセン行って見たい」

「小学生が行くような場所じゃねぇよ」

「……」

 狼と唄羽、心の三人は、商店街から離れ、繁華街へ来ていた。唄羽の言うゲーセンは勿論、服屋や雑貨屋、飲食店も数多く展開していた。

「じゃあ、あそこは?」

「下着屋じゃねぇか。子供にはまだ早い」

「えー?」

 だが、唄羽の次なる希望はランジェリーショップだった。しかし、あそこに子供用の下着は売っているのか? ……これだったら、ゲーセンのほうがいいな。狼もそう判断したのか、溜息混じりにこう言う。

「ったく、ゲーセンな。お前もそれでいいのか?」

「……?」

 声を掛けられて、心が不思議そうに顔を上げた。まさか、話し掛けられるとは思っていなかったのだろう。

「お前もゲーセンでいいのか?」

「……」

 再度問われて、心はこくりと頷いた。

「じゃあ、行くか」

「わーい」

「……」

 そういうわけで、彼らはゲーセンへと向かった。



 ……その頃、美也たちは。


「えっと、ベイクドチーズケーキとチョコムースとパンプキンプリンと小倉トーストと黒糖餡蜜とストロベリーパフェと……涙花ちゃん、他に何かいる?」

「レーズンタルトと厳選ガレットと抹茶ロールも所望なのよぉ」

「以上で」

「は、はい……」

 美也と涙花が出した注文に圧倒されながらも、ウェイトレスはそう言って店の奥に引っ込んでいった。……彼女たちがいるのは、近所で有名な喫茶店。二人は入店早々、飲み物には目もくれず、スイーツを片っ端から頼んだのだ。

「お姉ちゃん、ご馳走してくれるのは嬉しいけど、お勘定がガクブルなのよぉ?」

「ああうん、大丈夫。ちゃんと伯父さんおねだりして、軍資金を貰ってきたから」

 美也は伯父から、スイーツ調査の名目で金をせびっていたのだ。その額は五桁……このくらいの無茶では、そうそう枯渇しないだろう。

「スイーツなんて滅多に食べられないから、わくわくなのよぉ」

「私も、太るからって、伯父さんが許してくれないの」

「おおう、それは酷すぎなのよぉ!」

「でしょ! 伯父さんったら、乙女にとって、スイーツがどれだけ大切か分かってないんだもん!」

 スイーツが来るまでの間、二人は雑談で盛り上がっていた。……主に、美也の伯父に対する悪口で。

「大体、伯父さんったら非常識なんだよ。体重の話もそうだけど、下着や生理の話までしてくるし……正直、吐き気がするときだってあるもん」

「それは鬼畜なのよぉ」

 美也が言っているのは、下着や生理用品を買うために支給されているお金の話だ。男一人で女の子の面倒を見なければならない都合上、その手の物は自分で揃えたほうがいいだろうという配慮なのだが、微妙に通じていない。まあ、「これは下着と生理用品を買うお金だから」とか言って渡したら、嫌われても仕方ないだろうが。

「そんなおっさん、豚箱送りにしてやれば万事解決なのよぉ」

「うーん、それはちょっと可哀想っていうか……伯父さんには、それ以上のお世話になってるし」

 そんな致命的な擦れ違いがあっても、美也は伯父のことを信頼している。それは、彼女の過去と関係があった。

「お待たせしました~」

「あ、来た来た。さ、涙花ちゃん、食べよっ」

「了解なのよぉ」

 それはそれとして。運ばれてきたケーキに、二人は揃ってフォークを入れるのだった。



 ……その頃、闇代は。


「あ、その服可愛い」

「ふん……あんたのほうがお似合いよ」

「え、そう? じゃあ、買っちゃおうかな?」

「子供服が似合う女子高生……ぷっ」

「そんなに褒めても何もでないよ?」

「……」

 いつものように嫌味を放った亜子に、闇代は屈託のない笑顔でそう返してきた。……二人がいるのは、子供服専門のブティックだ。彼女たちは、ここへ洋服を買いに来ている。普段、子ども扱いされると憤慨する闇代だが、子供服を着ることには抵抗がない。前に狼から「子供服がとても似合う」とべた褒めされたのが原因だ。

「ん? どうしたの?」

「別に……気持ち悪い奴だなって思っただけ」

「何でそうなるの!?」

「いや、普通そうでしょ? その自信はどっから来るの? 普通に頭おかしいから」

「ひ、酷い……」

 亜子にボロカス言われて、闇代は涙目だった。……まあ、闇代の言い方もあれだったし、今回ばかりは仕方ないか。亜子の主張も変だけど、それはいつものことだし。

「そんなこと言うなら、亜子ちゃんに可愛い服を着せてやるんだからね!」

「……は?」

 しかし闇代は、突然妙なことを言い出した。何故そこでそうなる?

「覚悟してよね! 亜子ちゃんを、今時のいけてるJSにしてあげるんだから!」

「い、要らない……」

「だーめ」

 そして、思い立ったが吉日。闇代は亜子の肩を掴んで、更衣室まで引っ張るのだった。……闇代のファッションセンスは気になるところだが、亜子が可哀想なので、内容は割愛する。

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