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この子達は精神年齢十五歳くらいなので大丈夫的な言い訳


 ……その頃、優たちは。


「ふーむ……魔女の部屋というから期待したのに、全然普通なのよぉ」

「どんなのを想像してたんですか?」

 優の部屋にて。中央に布団が三組敷かれ、真ん中に優が、両隣に心と涙花が座り込んでいた。寝巻き姿なので、寝る直前なのだろう。

「もっとおぞましく禍々しいこ雰囲気で、黒魔術の本とか、魔法陣とかがいっぱいあると思って、わくわくしてたのに……がっかりなのよぉ」

「雰囲気作らなくても、魔道書や魔法陣がなくても、魔女の力は使えますから。それに、あまりあからさまだと魔女狩りされますし」

「魔女狩りなんて、指一本で吹き飛ばせばいいはずなのよぉ」

「そんなに簡単じゃないんですよ? 魔女だって人間と同じなんですから。一人では生きていけませんし、一人は寂しいですから。無用な争いは避けるんです」

「それは意外なのよぉ。勉強になったなのよぉ」

 自身を魔女と称するくらいなので、本物の魔女に対して憧れていた様子の涙花。しかし、実態は大分違っていた。……優は確かに魔女ではあるが、実は人間の血のほうが多い。遺伝子的には殆ど人間なのだ。ただ、優の場合は隔世遺伝により、魔女としての力が強く出ているのだが。

「さ、そろそろ寝ますよ。涙花ちゃん、心ちゃん」

「はいなのよぉ」

「……」

 優は部屋の照明を落とすと、二人に促しつつ、自分の布団に入った。心と涙花も同様に、それぞれの布団に入る。

「……」

「……あら?」

 と思ったら、心が優の布団に潜り込んできた。優の腕に抱きついてくる。

「うにゃ~」

「こっちもですか」

 そして、反対側からは涙花が。幼女二人、両手に花状態な優。

「……暖かい」

「ぽかぽかなのよぉ~」

「あらあら」

 優の体が余程気持ちいいのか、涙花だけでなく心まで、そんなことを呟いた。……心の奴、何気に本日二回目だよな、喋るの。

「……二人とも。安心して、ゆっくり眠ってくださいね」

 そんな彼女たちを抱き締めながら、優も眠りに就くのだった。



 ……その頃、別の場所では。


「……そうか。彼はしくじったか」

《どうします? 今からでも始末しますか?》

「いや、もう手遅れだろうね。無駄な危険を冒してまで口封じをしなくてもいい。……では、そういうことで」

 携帯電話で話しているのは、スーツ姿の男。相手の男に指示を出して、通話を切った。

「……さて、どうしたものか」

「どうするも何も、取り戻すしかないわよね」

「そうだね」

 男の隣には、同じくスーツ姿の女がいた。二人は背中を合わせて、親しげに話している。

「とはいえ、あの魔女が保護しているっていうのはね……ちょっと困ったことになったかな」

「そうね。あの魔女には、正攻法じゃあ太刀打ちできないもの」

「うん。あの魔女は本当に恐ろしい。例えどんな兵器を用意しても、あの魔女には通用しないからね」

 会話の中に出てくる「魔女」という単語。それは、もしかして、優のことなのか?

「でもね、あの魔女には弱点がある」

「どんな?」

「あの魔女は、優しい。だから、誰かを殺すことが出来ない。殺生を躊躇うんだ。ついでに仲間思いで情に脆い。そこも利用しよう」

「なるほど」

 男女は笑い合いながら、夜の街を歩いていく。彼らは一体、何者なのか?



  ◇



 ……翌日。


「おはよー……」

「よう」

 朝。起きてきた闇代に、狼が声を掛けた。彼女はどうも眠たそうだった。

「寝不足か?」

「うん……亜子ちゃんが寝かせてくれなくて」

「そうか。仲いいな」

「どこが!?」

 相変わらず、亜子と仲良しだと思われたくないらしい。とはいえ、喧嘩するほど仲が良いとも言うし、彼女たちはそれがしっくりくるのだが。

「おはよう、お姉さん」

「あ、唄羽ちゃん。おはよー」

 今度は唄羽も話しかけてきた。というか、亜子以外は全員起きているようだな。

「どう? 昨日はよく眠れた?」

「うん。昨日はお兄さんが暖めてくれたから」

「……え?」

 唄羽の言葉に、闇代の表情が固まる。……どうやら、変な想像をしてしまったみたいだ。

「お兄さんがぎゅっと抱き締めてくれて、そのまま愛し合ったんだから」

「だ……!? 愛……!?」

「おいこら嘘吐くな! んなことしてねぇよ!」

「でも、一緒に寝たのは事実だよね?」

「それは、まあ、そうだが……」

「一緒に寝たの!?」

 最初に大きな嘘を吐いて、後から真実を話す。どっかで聞いた詐欺の手口みたいだな。……小学生と一緒に寝たからといって、別に疚しいことはないし。そもそも狼がそういうことをするなどあり得ない。冷静に考えれば分かることだが、思考が卑猥なほうへ引っ張られているので、闇代が冷静になるのは不可能だった。

「わたしも一緒に寝る! そしてそのまま子作りする!」

「おいこら子供の前で何言ってんだ!?」

「そうだよ。お兄さんの初めては私が貰ったんだから」

「狼君!」

「だからなんでそういうことを―――」

「あれ? 初めてだって言ってたよね?」

「それは、まあ……」

「やっぱり!」

 唄羽のささやかな悪戯に、闇代と狼が翻弄されている。子供に弄ばれるなよ。

「一片もなんとか言ってくれよ」

「昨日はお楽しみダッタナ」

「そうでしたね」

「それはお前らだろ!」

「狼君! 今から一晩ハッスルするよ!」

「もう朝だっての!」

 一片兄妹にまで見放され、本格的に収拾がつかなくなってきた。……つーか、朝からする話じゃないだろ。

「だって、狼君の不能はわたしが矯正するんだから!」

「何失礼なこと言ってやがる!」

「本当のことでしょ!?」

「お兄さんって不能だったの?」

「事情が事情なんだから仕方ないだろ!」

 おまけに狼の不能話まで持ち出されて、朝の食卓はカオスの様相を呈していた。何度も言うが、今は朝である。更に、子供の前だ。そういう話をする状況では、決してない。

「みんな、いい加減にしてください」

 すると、優が朝食を持ってやって来た。これでこの騒動も終わる……と思ったら大間違いだ。

「闇代ちゃん、子作りなら学校が終わってからにしてください。どうせなら美也ちゃんも一緒に」

「何悪化させてるんだよ!?」

「はーい!」

「「はーい!」じゃねぇよ!」

「さ、狼君。早く学校に行って子作りしよっ!」

「そして完全に間違ってるぞ!」

 そういうわけで、朝っぱらから最悪の展開だけは避けられた。実際には何の解決にもなっていないのだが、それはまあ、お約束ということで。

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