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Feeling emotion  作者:
1/3

始まりのお話

この物語の主人公は黒髪紫目の青年。名前はロイス・ベルギート。あまり社交的ではなく、そういった面でとても不器用。家事一般はとても得意。金髪翡翠色の目の我が儘な妖精、ティアと契約をしている。

春は川にたゆたう桜の花びらを

夏は陽射しに負けんとする向日葵を

秋は散り行く紅い紅葉を

冬は物寂しさの中で色づく紅椿を



「ねぇー、ねぇったらぁ~!」


机に置かれた分厚い本に座った小さな妖精がひたすらに僕を呼んでいる。


「どうしたの?ティア。僕、今すっごく忙しいんだけど・・・」

「まぁーっ!私と話すことよりも大切なことなのっ!そんな薄情な人のお仕事なんて、もう手伝ってあげなーい!!!」


頬を膨らませたままぷいっと顔を背ける姿は何とも愛らしいのだが、今の僕には「めんどくさい」「我が儘妖精」としか思えなかった。


(でも、仕事を手伝ってくれないのは困る!断じて困るっ!!)


というのも、僕の仕事は写真をとることで、それがただの写真じゃない。

人は感動したり、懐かしく思ったり、時に怒り、悲しむだろう?その一時の感情を写真として残すんだ!


そのためには僕のお姫様、ティアという妖精の力が必須!!

彼女がその人の感情をエアと呼ばれるシャボン玉のような膜ですくいとり、僕の魔力をカメラのレンズに注ぎながら写真として映す。


妖精の力との相性、魔力の加減、色々な要素が組み合わさって写し出される。


感情なんて写真に残して何になる?、なんて人もたくさんいるけど、これがすっごくお金になるんだ。

特にこの世界は美に対しての執着が凄まじく、美が豊かさの象徴として扱われているからね。遺品として写真を遺したい人も多いし。


おっと!話が脱線してしまったけれど、そんなわけで僕が生計をたてていくためには彼女の力が必要不可欠なわけ。

だから、とりあえず機嫌を取ってみようと、僕は彼女の好きなチョコたっぷりのクッキーを差し出した。


「君よりも大切なものなんてあるわけないだろう?そうだ、クッキーでもおひとつどうぞ!」


そういいながら、にこやかに笑いかけてみる。

誰がどう考えても何のご機嫌取りにもなってないような感じだが、不器用な彼にとってはこれが精一杯の機嫌を取っているつもりなのである。


ティアはごくりと喉をひとつならすと、忌々しげにロイスをみた。少しは効果がありそうか?


「そんなことで喜ぶとでも思っているの?まぁ、やだやだ。これだからロイスは女の子のことなんてなーんにも分かってないって言われるのよ!」

「これが最後の一枚なんだけどなぁ~・・・。ティアに食べて欲しかったのに。君がいらないなら僕が・・・」


ティアがぷぷーっいっと顔を背けようとしたので、ロイスがクッキーを食べようという素振りをしながら慌てて言葉を付け足すと、ティアはひゃっとびっくりしたようにロイスの腕に抱きついた。


「い、要らないとは言ってないわよ!!!!しょうがないわねぇ。折角だから食べてあげる。」


そう言いながらクッキーを受けとるティアを見て一安心。人が食べたらすぐになくなるクッキーでも、背丈が20cmほどしかない妖精の彼女からしたら大量だ。

食べるのにも時間がかかると言うもの。


(それにしても、一時間ほど前にも最後の一枚っていったのに気づいていないなんて。しめしめ、あと一回はいけるかな~)


そうして、ロイスが書類の続きに取りかかろうとしていると、そんな彼の考えなど露ほどもしらない気ままな妖精は、クッキーを美味しそうに頬張っている。


「そういえば、ずっーと入国切符の手続きの書類なんて書いてるけれど、時間かかりすぎじゃない?ロイスは本当に書類系の仕事が駄目なのねぇ」


ティアが小首を傾げながらやれやれ顔で小言を言ってくる。


(誰のせいでこんなにめんどくさい書類を僕が書かなきゃいけないと思ってるんだ!!!)


さすがの穏和なロイスもその言葉には盛大にいらっとしていた。


「そのことなんだけど。お金もわりと貯まってきたことだし、そろそろ事務をしてくれる人材を・・・」

「女はぜっっっっったいに駄目っ!臭い男も髭もじゃな男もだめ!!!年よりなんて論外だわっ!」


そうはいってもこの世の中、事務に強くて見目麗しい美少年・青年なんてみつける事など難しい。だいたいそんな美少年・青年は貴族の家の使用人という働き口がある。無理無理。


「ティア。そんなことは言わずに・・・」

「だ~めっ!!!!」


この話になると頑固な彼女に辟易しつつ、大量の書類を見つめながら今日の晩御飯について想いを馳せるロイスなのでした。

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