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犯人確定?



 カメラのシャッターがまぶしく瞬く。鑑識の人間が次々と現場の状態を写真の中に保全していた。鑑識たちは部屋の隅々まで調べ、犯人の行方を探っていた。

警察が到着したのはもう、夜の9時ごろだった。

「みなさん、部屋の中央に集まってください、これから話があります」一人の刑事が言った。

 ウィリアム・キャンベルに先立たれたキャンベル一家は何か力なくぞろぞろと部屋の中央へ集まった。

「まずは自己紹介しましょう、私はCIAから派遣されてきたものですが、名前はジョン・ベイカーと言います。何か質問はありますか?」

「なぜCIAなんだ?普通の殺人事件ならニューヨーク市警が出てくるはずだろ?」

「答えは簡単です。あなたたちがマフィアであるから」

「一般市民と差別するのか?」

「差別なんて滅相もない。ただ私たちはニューヨーク市警よりあなたたちのことが少し詳しいので派遣されたまでです」

ジョン・ベイカーは言った。

「どうやらあなたたちのボスは心臓を拳銃で一発やられているらしいですね。

先ほど一通り成り行きについては話を聞きましたが、これからは詳しい話をしていただきましょう。では、ジャクソンさんにムーアさん、ボスが殺された時の状況について説明してくれませんか?」

ベイカーは言った。

「きっと、マーティン一家のやつらの殺し屋のせいに違いねえ。ずっとくすぶっていた火種がついに爆発したんだよ」

 放心状態だったムーアはやっとのことで口を開いて言った。

「そうに違いねえ。抗争は避けられねえな。しかし、まさか俺たちのボスから殺しやがるなんて本当に許せねえ」ジャクソンは言った。

「早まるのはよしてください、状況を確認してからです。ボスが殺された時、あなたたちは何をしていたんです?」

「何って、俺たちはボスに部屋の前で警護しているように言われたからそうしただけだよ」

「じゃあ、その時、二人とも部屋の前を空けたときはなかったのですか?」

「いいや、なかった」

「じゃあ、一人だけ、部屋の前を空けたことはあったんですね?」

「あった」

「いつですか?」

「いつってたびたびだよ。俺もムーアもたばこが好きでね。すぱすぱと吸ってるうちにすぐなくなるんだ。だから、今日もたばこを買いに行くために部屋の前を空けたことはあった。ただし、二人いっぺんにたばこを買いに行くことはなかったから部屋の前を完全に二人とも空けたことはなかったはずだ」

「ちょっと待ってくれよ、部屋の前を二人空けたときはあったな」

 ムーアは思い出したように言った。

「いつです?」

「いつかは忘れたが、ジャクソンが煙草を買いに行ったとき、俺も急にトイレに行きたくなってよ。それで空けてはいけないけれど、仕方なく部屋の前を空けたんだ。幸いトイレはおれが使っている部屋まで戻らなくてはいけなかったけれど、たばこを買うのに要する時間よりは短かったから、ジャクソンが煙草を買いに行っている間に、俺はトイレに行って帰ってきたってわけさ」

「つまり、部屋の前を二人で空けた時があって、それはジャクソンさんも知らなかった、ってことになるんですか」

「まあ、そういうことだ」

「だから言ったのよ。この間抜け二人に警護なんて任せるから。まったくこの二人ときたら体がでかいだけで全然役に立たないんだから」

 ソフィア・キャンベルは言った。彼女はこわもてで貫録のあったウィリアム・キャンベルの子とは想像もできないくらいの美人で、鼻筋は通り、目鼻立ちは整っていた。

「すみません。お嬢さん。私たちの責任です」

「あなたが謝っても、もう父さんは帰ってこないのよ」

「本当に申し訳ありません。俺が部屋の前を開けさえしなければ、こんなことにならなかったんです」ムーアは言った。

「ジャクソンさんに、ムーアさん、部屋を開けたことはわかりましたが、このホテルに到着してから、部屋を出入りしたのは何人くらいいましたかね?」ベイカーは確かめるように言った。

「二人とも部屋を開けていた時は誰が部屋の中に入ったかはわからねえが、二人、もしくは片方が部屋の前にいたときは、ここにいるベンジャミン・クックとジョン・ウィルソンと、ソフィアお嬢さんだけだ」

「なるほど、では、最後にその三人の中で部屋を出入りしたのは誰ですか?」

「ソフィアお嬢さんだ」

「その前に部屋を出入りしたのは?」

「ジョン・ウィルソンだよ」

「ということは最初に部屋を出入りしたのはベンジャミン・クックさん、と言うことですね?」

「そうだ」

「では、最後に部屋を出入りしたというソフィアさんに質問します。その時もう、ウィリアム・キャンベルさんは亡くなっていましたか?」

「ええ、死んでいたわ。だから、すぐに部屋の外のこの二人に言いに行ったのよ」

 ソフィア・キャンベルはジャクソンとムーアを指差した。

「では、その前に部屋を出入りしたジョン・ウィルソンさん、その時はもうウィリアム・キャンベルさんは亡くなっていましたか?」

「いいや、死んでなかった」

「なるほど、彼とはどういう話をなさったんですか?」

「キャンベル一家のこれからについてだよ」

「具体的に言うと?」

「マーティン一家とどういう風に付き合っていくのかを話していたんだよ」

「では、ムーアさんにもう一度お尋ねしますが、ムーアさんとジャクソンさんが二人とも部屋の前を離れたのはソフィアさんが来る前で、ジョン・ウィルソンさんが来た後ですか?それとも、ジョン・ウィルソンさんが来る前ですか?」

「ソフィアお嬢さんが来る前でウィルソンさんが来た後だったよ」

「なるほど。わかりました。と言うことは二人が部屋の前を開けたのはソフィアさんが来るのとウィルソンさんが来る間の時間に部屋を開けたんですね?」

「そうだ」

「なるほど、読めてきました」

「本当か?」

「ええ、ボディーガードの二人が部屋を開けた時間帯は、ソフィアさんが訪れる前で、ウィルソンさんが訪れた後、と言うことは普通に考えるならば、犯人はソフィアさんが来る前に部屋に侵入してウィリアム・キャンベルさんを殺したことになります。そのあとソフィアさんが犯人が殺したキャンベルさんを目撃し、二人のボディーガードに伝えた。普通に考えるならば、です」

「なるほど。ではやはり犯人は部外者の人間か。おそらく、マーティン一家の殺し屋に違いねえ」

「しかしながら、話にはまだ続きがあります。これはキャンベル一家の人間がすべて本当のことを話していたら、という前提があっての推理です。事実は違うでしょう」ベイカー捜査官は言った。

「どういうことだ?」スコットは言った。

「スコットさん、もう少し私の話を聞いてくれませんか?」

「わかった。聞こうじゃないか」

「私はキャンベル一家の人間が全てうそをついているとは思いませんが、うそをついている人間だっているはずです。それはムーアさん。あなたですよ」

「俺は嘘なんか言っちゃいねえ」ムーアは急に声を荒げて行った。

「あなたは先ほどの私の質問に関して、一つ、うそをつきましたね?」

「だからついてねえって」

「本当はボディーガードの二人で部屋の前を空けたときなんてなかったんじゃないですか?」

「あったさ」

「それは犯人が部外者の人間であることを示そうとしたんじゃないんですか?」

「……」

「本当はキャンベル一家の次のボスであるソフィアさんを守るためについた嘘じゃなかったんですか?」

「……」

「もし、あなたが嘘をついていて、本当は二人で部屋の前を空けたときなんてなかったと仮定する。そうすればおのずと答えは出てくるはずです。なぜならば、部屋の前は完全に少なくとも一人のボディーガードによって守られていたのだから……。とすれば、犯人はボディーガードの顔見知り、つまり、部屋に入ることができた、ベンジャミン・クックさんに、ジョン・ウィルソンさんに、ソフィアさん。あなたたちのうちの誰かだ、と言うことになります。

 ベンジャミン・クックさんに、ジョン・ウィルソンさんにソフィアさん、この順番で部屋に入ったのである上に、ジョン・ウィルソンさんは部屋に入った時にウィリアム・キャンベルは生きていたと証言していた。

 しかしながら、ソフィアさんが部屋に入った時には死んでいたとソフィアさんは証言している。

 とすると犯人は誰か?

 ジョン・ウィルソンが部屋に入った時にウィリアム・キャンベルは死んでいたと証言しているところから、ソフィアさん、あなた、ということになりますね」

 あたりは静まり返った。

「ちょっと待ってよ。犯人は私なわけないじゃない。私が父さんを殺すわけないじゃない」

「いいえ、あなたは莫大な遺産目当てにウィリアム・キャンベルさんつまりはお父さんを殺したのです」

「そんな、馬鹿な。私はやってないわ」

「言い訳は結構です。あとは警察署で話を聞きましょう」

 ジョン・ベイカーは冷たく言った。あたりは驚きで、まだ、何も言えない様子であった。


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