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ラストシーン


28


 太陽が一面に降り注ぐ中、ソフィアは河野が勤める大学の構内にいた。彼女は暖かい日差しを受け、構内に取り付けられたベンチに腰かけている。

 河野はその隣にいて、彼女の話を聞いている。彼女はベージュのジャケットに白いパンツと言った格好で、あの時の真っ赤に染められたワンピースという恰好とは全く違った趣をしていた。

 その恰好は大学の中にいてもそれほど目立たないので、彼女がキャンベル一家の後継者であることは誰が見てもわからないだろう。

 スコットと大学の中を歩いたのはあの考えるだけで恐ろしいと河野に思わせる事件が起こる前のことだったが、彼と歩いていた時は本当に学生の目が気になって困ったものだった。

 しかし、ソフィアとベンチに座って話をしている場面は全く河野にとって違和感は感じられないと思った。

「結局スコットが悪いってことになっちゃったけれど。本当にあれでよかったの?」ソフィアは言った。

「仕方ないですよ。スコットさんが完全に自白までしたんだから……」

「今も、スコットはマフィアに追われているらしいわよ」

「そうですか」

「いくらCIAがかくまっているからって時間の問題でしょうね」

「そうですね。でも、まあどうなるかはわかりません」

「それで、あなたに約束していた100万ドルのことなんだけれど……」

「あれですか」

「指定の口座に振り込んでおくように言っておいたわ」

「ありがとうございます。あのお金があれば、私たちもとても楽に暮らせるでしょう」河野はソフィアに感謝の意を表した。

「それじゃあ、頑張ってね。あなたは大学で活躍して、私は闇の世界でマフィアとして活躍する、対照的だけれど、お互い頑張りましょう」

「そうですね。ではいつかまた会える日まで」

「まあ、おそらくそんなこともないでしょうけれど」

「そうですね。そうあってほしいものです。きっとまた、あなたたちとかかわり合う時は非常事態のときでしょうからね」

「そうね。じゃ」ソフィアはベンチから立ち上がった。それから不意に河野の近くに寄ってきた。

「何です?」

「忘れていたことがあったわ」ソフィアはそういうと河野の頬にキスをした。

 キスをされた河野の頬は赤くなった。

「びっくりするじゃないですか、いきなり」河野は取り乱して言った。

「びっくりさせるつもりはなかったのよ」そういうとソフィアは微笑んだ。「それじゃあ、今度こそお別れね」ソフィアはそう言うともう一度手を振り、河野から離れて行った。

 河野は呆然と立ち尽くしソフィアが消えるのを待った。

彼女とはそれからもう一度として会っていない。風の噂によればキャンベル一家のボスとして立派にやっているらしい。

スコットはどこかで死んだという噂だ。しかし、あの男のことだから、そう簡単に死んでいないのかもしれない。


                          (了)

読んでいただいたみなさん、ありがとうございました。

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