河野の推理1
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待ち合わせ場所は河野が前にも行ったことがある、あの、廃墟だった。
河野がキャンベル一家のボスと初めて会ったあの廃墟だ。
河野たちが到着すると、もうキャンベル一家の連中から、マーティン一家の連中、それから警察まで、勢揃いでそこにいた。
「まったく。敵対している者同士を集めていったいどんなショーを見せてくれるのかね?」マイケル・ハワードが皮肉を言った。
「そうだ、そうだ。俺たちは暇じゃないんだ」
クリストファー・コリンズも言った。彼らは、あの、マーティン一家のボスを警護していたボディーガードだった。
「そう騒がないでくれ、俺たちだって事情は聞かされていないんだ」
ジョン・ウィルソンは困った顔をして言った。
「まあ。ここまで呼びつけたのだから、よほどのことなんだろうな?」
「そうですぜ。アイザック・トンプソンさん」
マイケル・ハワードはこびをへつらうような顔で言った。
どうやら、この男、アイザック・トンプソンこそが、マーティン一家のボスを引き継ぐ男らしい。
「心配するな、トンプソン。先生は必ず今回の事件を解決してくれるはずだ」
「そう願っているよ。しかし。私だって余り我慢強い方ではなくてね。待たされるのも困るんだよ」トンプソンは少し不機嫌そうに言った。
「お待たせしました」
河野たちはそのビルの一室に入ると急に態度を豹変させた男が二人いた。
「お、お前らは」マイケル・ハワードは言った。
「まさか、ボスを殺した張本人じゃないか」
クリストファー・コリンズも続けた。マーティン一家のボスが殺された時、彼らは確かに河野とその仲間のスコットに発砲したことを覚えていた。
大声でそれが辺りに響き渡ったものだから、マーティン一家の連中は黙ってはいなかった。
「何だって?」
「トンプソンさん。今すぐ奴らをとっ捕まえましょうぜ」
マイケル・ハワードはトンプソンに小声で耳打ちした。
「まあ、待て。状況を把握してからだ」
トンプソンは冷静だった。いかにも、マーティン一家のボスを務められそうな男だ。
「ジョン・ウィルソン」トンプソンは言った。
「何だ?」
「うちの者がやつらはうちのボスを殺した張本人だ、と言うことを言っているが、本当なのか?」
「そのへんのことも、先生たちに聞けば分かることだよ」
「なるほど」
「どうします?ボス」
「今は話を聞いてからだ、それに警察もいる、動くのは賢明だとは言えんな」
「そうですよ。動けば私たちがあなた方を逮捕することになるでしょうよ」ベイカー捜査官の登場だ。彼は今まで黙っていたのが嘘のように話し始めた。「それに、あなた方、確か、マシュー・スコットに河野卓一に、ソフィア・キャンベル、あなた方がしたい話が終わったのなら、即刻あなた方を逮捕しますからね」
「そのことも含めて、話があるんです」
「なるほど。まあ、おもしろそうだから付き合ってあげましょう。こう見えて私は結構楽しむのが好きでね」ベイカー捜査官は余裕の表情で言った。
「わかりました。私の話をしましょう」河野は話を始めることにした。
「みなさん。静かにしてください」
ざわめいている声が少し静かになって、辺りは静かになった。五月の風が廃墟の中を通り過ぎる音が聞こえた。
「では、始めましょう。まず最初に、マーティン一家のボスの殺害事件について、です」
「なるほど。推理をしようっていうんだな?まあ、聞いてやるよ」
クリストファー・コリンズは笑いながら言った。その男は片方の前歯がない口でにやりと笑った。
「これはもう、解決しているはずです。ジャクソン・ウィリアムズが犯人だということで間違いないでしょう」
「ちょっと待ってくれ。俺たちはここにいるスコットとかいうやつとあんたとスミスが中に入って、それから出て行った後にボスはボスの部屋で殺されていたんだぜ?そのことをきちんと説明してもらわなきゃな」
「確かに、私たちはマーティン一家のボスの部屋に入りました。しかし、その時はもうすでに、マーティン一家のボスはもう死んでいたのです」
「じゃあ、どうして逃げたんだ?正直に話せばよかったものを」
「逃げなければあなたたちは私たちの言うことなんか聞かずに私たちを速攻で殺したでしょう?」
「そうかもしれねえ。俺たちはそういう性分だからな。ボスが殺されたとあっちゃあ、黙って言うことを聞いて、はい、そうですかと引き下がれるわけがねえからな」
「そうでしょう?そして、私たちが入る前にマーティン一家のボスの部屋に入った人物、と言えば?」
「そうか、ジャクソン・ウィリアムズ」クリストファー・コリンズは言った。
「ちくしょう、あの野郎」
「しかし、先生、それだけでは確かな証拠にはなりませんよ?」
トンプソンは言った。
「そうです。それだけではジャクソン・ウィリアムズが犯人だということは証明できない」
「じゃあ、どう証明しようっていうんですか?」
「ジャクソン・ウィリアムズは自白しました。彼の証言の通りに捜査を進めれば、おのずと彼が犯人だということがわかるでしょう」
河野は言った。
「そうかい。奴は自白したのか」
トンプソンは苦虫をかみつぶした様子で言った。
「動機は一体何だったんだ?」
「ジャクソン・ウィリアムズは野球賭博でお金をかけていた。10万ドルもね」
「野球賭博?それはいただけませんね」ベイカー捜査官は言った。
「10万ドル?なんでそんな大金を?」
「マーティン一家のボスにそそのかされたらしいですよ。ファイアーズが勝つ、に賭ければ大金持ちになれる、とね」
「なるほど。しかし、勝ったのはウィナーズ」
「そうです」
「八百長のせいで、ウィナーズが勝ったのか……」ベイカー捜査官は感心したように言った。
「そのせいで、ジャクソン・ウィリアムズはマーティン一家のボスを恨むことになった」
「なるほど。それで奴はボスを殺したのか……」
「そういうことです」
「確かに信憑性はありますね。まあ、ジャクソン・ウィリアムズが事実を話せば、と言うことになりますが」
ニューヨーク市警の担当者は言った。ここで注意しておきたいのは呼び出された警察はCIAとニューヨーク市警の両方だ、と言うことだった。
ニューヨーク市警はニューヨーク市警で捜査を進めるし、CIAはCIAで捜査を進めていたのだ。
「それは簡単なことですよ。司法取引をすればいいんです」
「なるほど。マーティン一家から身を守ってやるから事実を証言しろ、と言うんですね?」
ニューヨーク市警の担当者は言った。




