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河野の考え


20


 ジャクソン・ウィリアムズを連れて、河野たちはジョン・ウィルソンとの待ち合わせの場所の、とあるスラム街のビルの一室にいた。そこは古ぼけた建物で、部屋はそこそこ広かったが、それはもう、使い古された、という表現が一番しっくりくるような部屋だった。

 部屋の中には物一つ置かれていなく、その部屋を誰も使っている様子はなかった。カビ臭いにおいが鼻を刺すように漂っていた。掃除もあまりされていないのだろう。

「残念な知らせが一つある」

 ジョン・ウィルソンは言った。その横にはアイデン・ムーアやダニエル・ジャクソン、といったおなじみのボディーガードもいた。

「いったい、何の知らせだ?」わかっていたけれど、聞くしかなかった。

「スミスのことだ。奴はどうやらもうだめらしい。搬送先の病院が、死亡が確定したことをこっちに知らせてきたよ」

「そうか」

 スコットは悔しがりも、泣くこともしなかった。そういう表情はこの場にはふさわしくないと思ったらしい。

「それで?そっちの取り調べは終わったの?」ソフィアは言った。

「ええ。終わりました」

「厳しかったでしょう?」

「取り調べは厳しいものでしたがこっちはそんなことなれていますから」

「そうね」

「それで?そっちが話したいって言ってきたんだから、要件っていうものがあるだろ?」スコットは言った。

「ああ。その男のことだ」

 ジョン・ウィルソンは、ジャクソン・ウィリアムズを指差して言った。

「ジャクソン・ウィリアムズがどうしたんだ?」

「その男はスミスの話とおまえらの行動から察するに、どうやら今回の事件の重要人物らしいじゃないか」

「そうだな」

「だったら、俺たちにも、その男のことを説明してくれないか?」

「わかったよ。この男はマーティン一家のボスを殺した男だ」

「なるほど。それは重要なわけだ。しかし、うちのボスも殺された。そいつがやったんじゃないのか?」

「それはどうやら違うらしい」

「どうしてそんなことがわかるんだ?」

「かなりきつく取り調べたからな。ソフィアお嬢さんが」

「なるほど。お嬢さんが取り調べたなら、信憑性は確かに出てくるな」ジョン・ウィルソンは納得した様子で言った。

「しかし、うちのボスが殺されたのはどう説明するんだ?ほかに犯人がいるとでも言うのか?」

「そのようだ。先生の話によるとな」

「また、先生か……」ジョン・ウィルソンは退屈そうな顔をして言った。

「そうだ」

「先生。本当なのか?本当なら俺たちにもわかるように説明してくれ」

「ええ。本当です。うまく説明できるかわかりませんが説明しましょう」

「頼む」

「私が思うに、どうやら、キャンベル一家のボスを殺した犯人は、身内にいる、と思われます」

「何?俺たちを疑うって言うのか?」ダニエル・ジャクソンは言った。

「まあ、そう言われても仕方ないでしょう」

「なるほど。ボスを殺した人間はおれたちの身内にいるっていうことなんだな?」

「ええ。キャンベル一家のボスが殺された状況を思い出してみてください」

「ああ、確か、部屋の前にダニエル・ジャクソンとアイデン・ムーアの二人のボディーガードがいたよな。それから、そのボディーガードのうち一方が部屋の前を空けたことはあったということだったな。タバコがなくなったという理由でな。あ、そうそう。ムーアの話によれば、部屋を二人とも開けたときもあった、っていう話だったな

 そのボディーガードをすり抜けることができたのは3人、ベンジャミン・クックにソフィアお嬢さんにそしてこの俺、ジョン・ウィルソン。まあ、部屋を二人とも開けたときに部外者が入って来たなら、話は別だがな」

「ええ、よく覚えていますね。あの状況では、部外者が犯行に及ぶことはそう簡単ではありません」

「なるほど、確かに考えてみるとそうだな。部外者が部屋の中に入るためには、ボディーガードが二人ともいない時に入るしかねえ」

「そうです。ということは、ムーアさんかジャクソンさんのどちらもいない少しの間に犯行に及ぶ必要がある。しかも、二人ともいない時間帯ができたのは偶発的な出来事からでした。犯人がそれを予測することは不可能です」

「なるほど」

「よって、部外者による犯行の可能性は低い、と思われます」

「なるほど。しかし、この二人のボディーガードのうち一人と部外者が組んでいたっていうことはあり得るんじゃないのか?」

 スコットは言った。

「そんなわけねえだろ」アイデン・ムーアは言った。

「確かにその可能性もありますが、部屋の前には二人のボディーガードがいた。ここに注意を払えばおのずとその可能性も低いことに気付くはずです」

「どういうことだ?」

「部屋の前に二人のボディーガードがいた場合、一方のボディーガードと部外者が組んでいたとします。そうすれば、部外者はもう一方のボディーガードがいない時に部屋に入ることができるが、その時間はごく限られた時間だ、ということをまず頭に入れてもらいたいです」

「確かに、そうかもしれねえ」

「そのうえ、です。もう一方の犯人と組んでいないボディーガードが部屋の前を開けるのはいつ開けるかわからない、といった状況です。もしかしたら、部屋を開けない可能性だってあったかもしれなかったんです。そんな、偶然頼みの計画を犯人は練りますかね?おそらくしないでしょう」

「なるほど」

「とすると部外者の犯行である線は薄いわけです」

「ということは身内の犯行になるっていうことか?」

「そうです」

「なら、CIAのベイカーの言うようにソフィアお嬢さんが犯人だっていう可能性もありうるわけだな?」

「確かにそうです」

「私はやってないわ」ソフィアは当然のことのように言った。

「確かに、いろいろな可能性について考えてみる必要があります。そのためにはもう少し時間が必要なんですが……」

「なるほど」

「それにこれは私の勘なんですが、この事件は何かもっと大きな陰謀によって入念に計画された事件だと思うんです」

「ただ、マーティン一家のボスがジャクソン・ウィリアムズによって殺され、キャンベル一家のボスがほかの人間に殺された、というだけというわけではなく、か?」

「そうです」

「なるほど。確かに興味深い意見だな」

「そして、どうにかして、私たちはその陰謀を阻止しなければならないのです」

「わかったよ。あんたの言うことはわかった。俺たちはもう少し考えてみなければならないようだな」

「そうですね」

「そうだな。もう話すこともないしひとまずここはお暇するとしようか」ジョン・ウィルソンは腕時計を見ながら言った。

「そうですか」

「ところで、そのジャクソン・ウィリアムズ、という男のことだが、もうそっちでは用無しだろ?」

「ええ。一通りのことは聞いたので」

「ならば、こちらに引き渡してくれないか?」

「くそ、そんなことよりも早く病院に連れてけ。俺は足が痛くてたまらねえんだ」ジャクソン・ウィリアムズは怒って言った。

「まあ、そう騒ぐな。病院はおれたちが連れてってやるから」

 ジョン・ウィルソンは諭すように言った。

「それじゃあな。俺たちはこれで、お暇させてもらうよ」

「また、会いましょう」

「あんたたちの捜査がうまく行くことを願っているよ」

「ええ」

「あとでまた、話を聞かせてくれよ」

「わかりました」

 ジョン・ウィルソンはそう言い終えると、部屋から出て行った。

 河野とスコットとソフィアの3人はその部屋に取り残された。

「しかし、先生。そうは言ったが、あんたどこから捜査をやるつもりだい?」スコットは心配そうに言った。

「そうだよ、先生。あんた。捜査に何か糸口でも見つけたの?」

 ソフィアも心配そうだ。

「なかなか難しい事件ですね」

「そうかな?俺には単純な事件のようにしか思えないけれどな」

「単純ではないですよ。一見、単純そうに見えますが事件は意外と複雑です」

「二つの事件、つまり、マーティン一家のボスが殺された事件とキャンベル一家のボスが殺された事件が偶然ほぼ同時に起こったんじゃないのかね?」スコットは河野の考えに疑問を呈した。

「その可能性も確かにあります」

「そうだろ?」

「しかし、どうしても私には別々の犯人によってそんな大きな事件が二つ同時に偶然に起こるとは思えないんですよ」

「なるほど。難問ね」ソフィアはうなずいた。

「そうですね。さあ、車に戻りましょう」

「そうね。車に戻ってから、もう一度じっくりと考えましょう」




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