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クッキーとビスケットの定義




「やっぱりビスケットよりクッキーだなぁ・・・」


「・・・どっちも一緒だろ?」


休み時間のことでした。

私がたっぷりのチョコレートでコーティングされたクッキーを食べながらもらした独り言を隣の席の久瀬律は耳ざとく聞いていたらしいです。

教室で周りに聞こえるような独り言つぶやく私も私ですが。


「違いますよ。国によっても意味合いは違いますが、日本では脂肪分とか糖分の量で名前が変わります。何%だったか忘れましたが」


「ふぅん・・・でも同じものが入ってるなら味はたいして変わんないだろ?」


一々説明するのは面倒なのですけど、今食べているチョコクッキーはこの久瀬律がくれたものなので、無視することができません。

なぜか、ほぼ毎日、久瀬律は何かしらのチョコをくれるようになったのですよね。

非常にありがたいので、断ることもなく受け取っていますが、傍から見ると妙な関係に映るらしいです。

実は付き合ってるんじゃないの?とか久瀬律が宮野奈穂を好きなんじゃないの?という感じに思われたりしているようです。

それは誤解です。

第一久瀬律からそのような色気のある目線で見られたことはありません。

私はそこまで鈍感ではないので間違いありません。

久瀬律はどうも私がチョコをもらったときに見せる反応をみて楽しんでいるようです。

野生生物の餌付けに成功したぜっという感じでしょうか。

考えると、多少情けなくなりますが致し方ありません。

なぜ致し方ないか・・・これは先日トイレで手を洗ってる時に、なぜ久瀬律からチョコをもらってるのか説明してと呼び止められた時にも力説いたしました。

チョコが無料でもらえるのにどうして断らないといけないのですか?しかも自分では中々買うのを躊躇う高いチョコですよ?

じゃあ久瀬律の代わりにあなたがくれるのですか?毎日違うチョコを買ってきてくれるのですか?私から久瀬律からチョコをもらう権利を取り上げるのですか?

そうチョコ愛を力説すると「ああ、うん。宮野さん、よくわかった。分かったから」とすぐ引き下がってくれました。

同じようなことが他にも2回ほどありましたがその時もわりとすぐ引き下がってくれました。

どうやら、彼女達は久瀬律のファンとか取り巻き的な人達だったようですけど、怖い人がいなくてよかったです。

あれが絡まれるというやつだったのかもしれませんが、チョコのことを言われて興奮したため詳細はあまり覚えていません。

顔もいまいち覚えてないのですよね。

しかし、久瀬律の特別になりたいとかいう話なのでしょうけど、その座はいくらでも譲りますよ。

というより、必要ありません。

ただ、チョコレートをもらえる枠が1枠しかないならば、それはどうか私にください。土下座してでも頼みたいです。

とりあえず、久瀬律がチョコを恵むという行為を飽きるまではそっとしておいてください。

それぐらいには、チョコを頂くことに慣れてしまいました。

慣れって怖い。


「全然違いますよ。クッキーの方が濃厚な感じですし。ホクホクサクサクするのとパキパキザクザクの差というか」


「擬音で言われてもさっぱりなんだが・・・」


肘をついた手に顎をのせて眉間に皺を寄せる顔は、私が真似したらきっと不細工になるでしょう。

容姿が整っている人のみ許される仕草なのでしょうか。

しかし、私の説明じゃ久瀬律には通じないようです。

というか、自分で言ってて、こりゃ意味通じないなとは思いました。

実際体感してもらうしかありません。

私が鞄に常備するチョコにビスケットがありましたので実験可能です。

机の横にかけてある鞄を引き寄せて、中から安いチョココーティングされたビスケットを取り出しました。

自分で買ったものなので安いのですよ。

ぶっちゃけ、久瀬律のくれた200円ぐらいするチョコと比べるとあまり美味しくないですが、クッキー生地とビスケット生地の食感を比較する上ではいけるはず。

しかし久瀬律に体感として知ってもらうためには、これをあげなくてはならないわけで。

ということは、私が食べる分が減るわけで。


「・・・食べ比べるのが一番分かるとは・・・思うのですが」


「あのさ、明日はチョコ2個やるから・・・」


めちゃくちゃ出し渋っているのがバレバレだったようで、久瀬律は苦笑しながら言いました。

そこまで言われて渡さないのもひどいですよね。

名残おしいですが、さようなら・・・という気分でビスケットとクッキーを渡しました。

久瀬律は受け取ると、品良くビスケットとクッキーを食べ比べます。

なぜ、同じもの食べてるのに食べかすをほとんど落とすことがないのでしょうか。

私の机の上はクッキーの食べかすで汚いです。


「ん・・・クッキー生地の方が甘いな。歯ざわりも優しい。俺もこっちの方が好みだ」


「おおおお・・・・分かってくれましたか!でしょ?クッキーの方が美味しいでしょ?」


思わずニンマリ笑みを浮かべます。

自分の説明以上に理解したようなコメントに、自分の語彙力のなさとコメント下手が浮き彫りになり少々恥ずかしかったですが。

同じ嗜好だといわれると嬉しくなります。

久瀬律は私が笑った顔がよほど変だったのかどうか知りませんが、一瞬目を見開きましたが、ふっと小さく笑みをこぼしました。


「そっか、じゃあ今度からビスケット生地のは避けてクッキーのを買うようにする」


「ぜひそうしてください。クッキーの方が断然好きなので。そこにアーモンドが練りこんであったりなんかしたらもっと嬉しいです」


「他に好きなものは?チョコ以外で」


「食べ物でですか?そうですね、果物全般が好きです。あとはナッツ系も好きですけど、乳製品とかも好きですね」


「それは・・・チョコと合うものが好きってことか?」


まさにその通り。うんと力強く頷くと、久瀬律は今度はおかしそうにククッと笑い声を出していました。

今の話のどこに笑うポイントがあったのでしょうか。

そんなに面白い話ではないと思うのですけどね。

チョコ好きがひどすぎるってことを馬鹿にしたのでしょうか。


「・・・そんな顔するな。ほら」


ちょっとすねたような顔になっていたみたいで、苦笑した久瀬律は私の机のチョコクッキーを掴むと、私の口元に持って行きました。

思わず条件反射でそれをくわえてしまいました。

なんということでしょう・・・

うん、今のなしでお願いします。




筆者がクッキー派なだけです(´ω`)

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