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女の子はフランボワーズみたい




我が愛しのチョコレート。

今日もあなたはとっても美味しい。

私を幸せにしてくれるその色その香りその味。

私はあなたの虜です。


お昼ごはんの後はお楽しみの時間。

大好きなチョコレートを堪能する時間なのです。

本日は期間限定のフランボワーズ入りチョコレート。

フランボワーズって木苺ですけど、見た目も可愛いし味も甘酸っぱくてチョコとの相性抜群。

君はなんて素敵なのですか。

内心ムフフとほくそ笑みながら頬張っていると、小学生の時からの友達・しおさんこと金井詩織が話しかけてきました。


「奈穂良い席引いたねぇ」


「ですよ~最後尾かつ窓際というベスポジです」


お昼前がちょうど担任の現国の授業だったため、授業が終わる10分ほど前に席替えタイムとなりました。

私は正直今まで席運というものがほとんどなく、教卓前は結構常連と言われてもいいレベルの引き具合でした。

生来どちらかと言えばまじめなので、教卓前で問題ありかと問われると何もないですけど。

ただこっそり内職やら今度買いたいチョコリストをこっそり見ることができないのは痛かったですが。

そんな私が人生初の窓際最後尾という先生からもっとも遠い上、ぽかぽか陽気な日はぬくぬくの席をゲットしたのです。

高校2年の初冬にしてようやく念願が叶ったのです。

これを僥倖と言わずしてなんと言いましょうか。


「さらに、あの久瀬君の隣だよ。ホント席かわってほしいよ」


「あれ・・・そうでしたか。それはどうでもいいですけど、しおさんの席は窓際3列目の一番前じゃないですか。代わるわけありません」


そういえば、お隣の席の人を見ていませんでした。

当たった席があまりに良席であったため、そんなことに意識がむいてなかったのが原因でしょうね。

もっとも隣の席なんて正直どうでもいいです。

お隣さんとはせいぜい小テストを交換して採点し合うということをするぐらいです。

私は点が悪かろうと交換することに躊躇うことはありませんので問題なしです。


「えー久瀬君超かっこいいじゃん。奈穂は気にならないわけ?今彼女いたっけなぁ・・・1年のときの子は知ってるけど今は知らないな。彼女に立候補とかできないもんかなぁ」


ちょっとうっとりした様子でのたまうのは、今年同じクラスになって仲良くなった、めぐめぐこと、三上めぐみです。

彼女は彼氏がいるにも関わらず男前には目がなくて、こういうことをを言うのですよね。

彼氏に不満でもあるのでしょうか。

その割りに彼氏とは仲が良いように思うのですけど。

カッコイイ人にあこがれるのは彼氏がいようといまいと関係ないものよ、等と普段から女子トークで公言していますが、彼氏にはバレないようにしています。

私にはこういう感覚はよくわかりません。


「彼女いたと思うけど。確か吹奏楽の子だったかな。あ、違うその子は前だ。今は確か男子バレー部のマネだったかも」


「まじで~男バレのマネってうちと同じ中学だったけど顔だけだよ。性格悪いよー・・・久瀬君って見る目ないのかね?」


しおさんが久瀬君の彼女のことを言うとめぐめぐはあからさまに眉をしかめていました。

私はというと、久瀬君の話しで盛り上がる2人を横目に、もぐもぐチョコを咀嚼。

本当にこれ美味しいです。

にんまりしていると、同じように久瀬君に興味がない様子の白川柚季ちゃんと目が合いました。

ふんわりした雰囲気の彼女もまた、めぐめぐと同じく今年同じクラスになってお友達になった子です。

癒し系で可愛い子なのです。私はこの出会いにすごく感謝しています。

クラス割決めた先生ありがとう・・・。


「奈穂ちゃん、そのチョコ美味しそうだね」


ぎくっ!

柚季ちゃんが、にっこり笑ってそういったのに対して、私は硬直したことは言うまでもありません。

いや、普通硬直はしないでしょう。

単なる私の様子を見ての感想なのですから。

でも私動揺しました。柚季ちゃんはこのチョコを美味しそうと言っているのです。

期間限定フランボワーズ入りのめちゃくちゃ私好みのチョコレートです。

販売メーカー様には足を向けて寝ることなどできません。

開発者は神様です。

とこのように私はこのチョコに対して恋とも言える感情を持ってしまっています。

ですが、私の癒しでもある柚季ちゃんが美味しそうと言っている・・・つまり一粒ぐらいあげるべき。

たった一粒のチョコをあげなかったばかりに、友人関係に亀裂が入るなんてあってはなりません。

私はチョコを一つまみすると震える手で差し出しました。


「柚季ちゃん・・・あ、あげます」


「ああ、ううん、違うの!奈穂ちゃんがすっごく美味しそうに食べてるから幸せそうでいいな~って思っただけで欲しいわけじゃないの。

 気持ちだけもらっておくから、奈穂ちゃんが食べてね」


私が少し目を潤ませていることに気づいた柚季ちゃんは、大慌てで手を顔の前で振って私にニッコリ微笑みかけました。


「そのチョコ奈穂のお眼鏡にかなったのねぇ・・・チョコに関してはうちらに気をつかわないで良いって言ってるでしょ。自分で食べなさい」


しおさんは長い付き合いの分、私がどれほどチョコを愛しているか知っているので、無理に取り上げたりはしないと言ってくれています。

それどころか、私の誕生日や私が落ち込んでいる時などチョコレートをプレゼントしてくれるこの3人は女神達なのです。

チョコとフランボワーズのようにこの3人とは相性ばっちりです。

持つべきものは友。

これは名言だと思います。


昼休みはしおさんの席を中心にして、近くの席を借りて4人でご飯を食べていました。

予鈴がなったので、くっつけていた席を直し借りてた席の持ち主、辻村君に軽くお礼を言い自分の席に戻りました。

無論、例のベスポジです。

お隣さんはまだ戻っていませんでした。

彼はどこでご飯を食べているのでしょうか。

先ほどのしおさんとめぐめぐの話の経緯からほんの少し気になりました。

一度も昼休みに教室でご飯を食べているところを見たことがないなぁと思ったので。

と、お隣さんのことを考えている場合ではありません。

次の時間は苦手な数学です。

嫌いな数学には拒否反応が働き、頭の中が沸騰してしまうのです。

少しでも予習というほどでもないですが、ページをペラペラめくっておくことぐらいはしておこうと思います。


教科書とにらめっこしていると、教室に先生が入ってきました。

いつの間にかお隣さんも席に戻っていたようです。

全く気づきませんでした。

我ながら集中力があったのか、それとも逆に注意力散漫なので気づかなかったのか・・・どちらだろう。

ちらりと彼を盗み見てみました。

ほんの少しだけ髪色を茶色に染めて、制服をきっちり着るのが面倒なのかちょっと緩めたネクタイ。

目元はシャープで、顔立ちはかなり整っています。

これでバスケ部スタメンでなおかつそこそこ勉強の成績も良いとくれば、モテ要素ばっちりです。

私は別に男前が嫌いなわけではありませんし、一般的な審美眼も持ち合わせているつもりです。

なので久瀬律なる人物に対して、見た目での生理的な嫌悪感は持ち合わせていません。

ただし、チョコレートの敵としては見ていますが。

ここまで近くではっきり見たのは小学生以来かもです。

整った顔立ちはそのままですが、小学生の時とは違ってやはり大人びて見えますね。

同じクラスなのに間近で見たことがないことは別に対した理由はないですよ。

あのですね、教室内で歩いていてたまたま彼の横を通ったこともありますよ。

ですがね・・・彼と私の身長差では通りすがりに顔をはっきり見ることは不可能です。

久瀬律は身長180cmとか言う話ですが、私は残念ながらひゃくごじゅ・・・いえ、155cmなのです。

次の健康診断ではそういう結果が出る、と信じているので嘘ではありません。

・・・私もバスケをやれば伸びるでしょうか。

とにかく、かなりの身長差があるわけです。

小学生の時はまだ身長差がなかったので廊下ですれ違う時に顔を見たことはありますが。

なので、現在では直接話しかけて視線を合わせる以外で目も合うはずもなく、顔をまじまじ見ることができません。

そして用がないので話しかけたことがないということで、顔を間近で見る機会がなかったということが分かっていただけたでしょうか。


おっと、それどころではなかった。

今日は宿題の問5が当たる日でした。

数学がそこそこできるしおさんに答え合わせをお願いしたので問題ないはずですが、解答し終わるまでは油断大敵です。

余所見せず、授業に集中しましょう。



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