表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻像写真館  作者: 黒木露火
第8話 欠けてゆく月
14/18

エピローグ

「大丈夫よ。お姉ちゃん、死なないから」

「ほんと?」

 穂香ほのかの頬が涙で光る。

 円香まどかにとっては、さびしがり屋で泣き虫の妹だった。七つも年が離れているとかわいくて仕方ない。

 それでも、もうこれ以上はここにはいられなかった。

「お姉ちゃんはね、月の子になったの。ほら、この目、見て」

 姉の瞳は月の光を反射して、金色に輝いていた。

「月の子ってなに? 人間じゃなくなったの?」

「そういうことかな。いつの間にかこんなになってた。私、人間じゃなくなったのよ」

 そう言って、円香は手すりの上にするりと立ち上がる。 

「お姉ちゃん……」

「だから月に帰るの。死ぬんじゃない――帰るだけ」

 小さなつぶきのあと、「見てて」といたずらっぽい声で、円香は空中に足を踏み出した。

「お姉ちゃん。イヤだ!」

 止めようとして勢いあまってコンクリートの壁にぶつかる。痛みと恐怖に目をしっかりつぶって穂香は頭を抱えて転がった。

 くすくすと笑う声がして、恐る恐る目を上げると、穂香の目の前の空中に円香は浮かんでいた。

 満月を背にした円香は、白いドレスのような寝巻がふわふわと月あかりに透けて、風とじゃれあうように長い髪の毛が舞っていた。そんな姉をキレイだと穂香は思った。

「もしあなたも月の子になったら、迎えに来るから」

 じゃあね、と踵を返すと、円香は月に向かってどこまでも空中を歩いていった。白い後ろ姿はしばらく藍色の空に見えていたが、小さくなってやがて消えた。



〈了〉

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ