建国宣言、ついでに王権を強奪する
第7話への評価、ありがとうございます! 勇者という「システム上の最強」をデバッグし、ただの敗北者に変えたアレン。 しかし、彼は復讐だけで満足する男ではありません。 今回は、自分たちを捨てた王国に対し、物理的な攻撃よりも残酷な「概念的な略奪」を仕掛けます。 「王」とは何か? 「国」とは何か? アレンの答えをご覧ください。
地面に這いつくばり、自分の剣の重さにすら耐えかねて震えている元勇者ジークと、失禁して言葉を失ったレオン団長。アレンは二人を冷めた目で見下ろしながら、指先で空中に複雑な数式を描き出した。
「さて、リィン。せっかくお客様が来たんだ。お礼に、あちらの国へ『建国のご挨拶』を贈ろうか」
「挨拶、ですか? アレン様」 空から降り立ったリィンが、不思議そうに首を傾げる。
「ああ。国が国として成り立つためには、隣国からの承認……いや、圧倒的な格差の提示が必要だ。リィン、君に僕の魔力をパスする。君の『光』の概念を使って、王都の空に特大の『映像』を貼り付けてくれ」
アレンがリィンの背中に手を触れると、膨大な魔力が彼女の光の翼を介して空へと放射された。 数百キロ離れた王国の王都。その真昼の空が、突如として巨大な鏡のように輝き始めた。
王都の民、そして玉座で震えていた国王の目に飛び込んできたのは、荒野のど真ん中に建つ白亜の豪邸と、無様に転がる勇者の姿だった。
『親愛なる王国の皆さん、こんにちは。元・ゴミ鑑定士のアレンだ』
空から響くアレンの声に、街中がパニックに陥る。
『君たちは僕を「無能」と呼んで捨てた。だから僕は、この荒野に新しい国を創ることにしたよ。名前はそうだな……【エディット・ネーション】。ルールは僕が決める。……まずは、その象徴である「権威」をいただこうかな』
アレンが王都の玉座の間を【遠隔鑑定】する。 国王が座る、金剛石が埋め込まれた重厚な玉座。そこには歴代の王たちが積み上げてきた**【支配の正当性】と【絶対的権威】**という概念が、重々しく書き込まれていた。
「……【概念奪取(Cut)】」
王都の玉座から、黄金の光が剥がれ落ちた。 次の瞬間、国王が座っていた椅子は、ただの「古びた木材」へと変貌した。それどころか、国王自身の頭上にあった「王としての気品」までが霧散し、彼はただの「怯えた老人」にしか見えなくなった。
「な、なんだ……!? 体から力が抜けていく……! 予の言葉が、誰にも届かぬ……!」
王が叫んでも、衛兵たちは彼を王だと認識できず、不審者を見るような目を向けた。
一方で、アレンの手元には、眩いばかりの「王権」の結晶が浮かんでいた。 アレンはそれを無造作に、自分が座っている椅子の足元にある「玄関マット」へと叩き込んだ。
【概念付与(Paste)】 →対象:玄関マット。 →属性:『王権の極致(EX)』を付与しました。
「よし。これで僕の家の玄関マットは、世界で最も『権威』ある布になった。……リィン、これからは客が来たら、王国の歴史を踏みつけながら入ってもらおう」
「ふふ、アレン様。それは素敵な嫌がらせですね」
アレンは空に浮かぶモニター越しに、絶望に染まる王都を見つめて告げた。
『追放してくれてありがとう。おかげで、世界がいかに「書き換えやすい」かよく分かったよ。……いまさら謝っても遅い。君たちの国の「繁栄」というコード、次は僕がまるごとコピーさせてもらうから』
建国宣言。それは同時に、王国の終わりを告げる死刑宣告でもあった。
第8話をお読みいただきありがとうございました! 王都の空をジャックし、玉座の権威を奪って玄関マットにする。 アレンの「ざまぁ」は、物理的な破壊よりも精神的・社会的な根底を破壊する方向に進化しています。
次回、権威を失い崩壊し始めた王国が、最後の手段として「隣国の独裁帝国」に救援を要請。 帝国が誇る「数万のゴーレム軍団」に対し、アレンはたった一つの概念を「デリート」して対抗します。
「……動くものから『動力』を消したら、ただの粗大ゴミだよね?」
次回**「帝国軍襲来、ただし一歩も歩けない」**。 お楽しみに!




