時間操作で、一晩で千年後の文明へ
第14話への応援、感謝いたします! 伝説の魔女イヴを「非常用電源」として確保したアレン。 膨大な魔力リソースを手に入れた彼が次に着手するのは、誰もが一度は夢見る「時間の編集」です。 普通の国が数百年かけて築く文明を、アレンは一晩の「アップデート」で完了させようとします。 しかし、時間を弄るということは、世界のバグを加速させることでもありました。
「はぁ……はぁ……! アレン様、もっと……もっと私の魔力を吸い出して! 世界の真理が、もっと見たいの……!」
地下の魔力発電室で、イヴが恍惚とした表情で魔導書を抱きしめている。彼女から吸い上げられた黄金の魔力は、アレンが構築した制御回路を通じて、国全体を包み込む巨大なドーム状の結界へと注がれていた。
「……少しうるさいな。リィン、彼女に『消音』のパッチを当てておいてくれ」
「はい、既に適用済みです。……それでアレン様、本当にやるのですか? 『時間』の概念を書き換えるなんて、流石に負荷が大きすぎるのでは?」
リィンが心配そうに、アレンの手元で展開される複雑な数式を見つめる。 アレンの目の前には、この国の「時間軸」を示す一本の光るラインが浮かんでいた。
「大丈夫だ。全体を加速させるんじゃない。この国の『成長率』と『技術開発』という概念だけを切り取って、そこだけに『千倍速』の属性を貼り付ける」
アレンが虚空を激しくスワイプし、イヴから供給された魔力を一気に流し込む。
【スキル起動:時間軸エディット(Overclock)】 →対象領域:エディット・ネーション全域。 →処理:『文明発展速度』に『1000x加速』を付与。 →処理:『老い』および『腐敗』の概念を一時停止。
瞬間、国全体が白い光に包まれた。 ドームの内側では、時間が濁流のように流れ始める。 昨日まで木造だった建物が、一瞬で見たこともない高強度合金のビルへと組み換わり、住人たちが手にしていた鍬は、土壌の成分を瞬時に解析する「ナノマシン・ツール」へと進化した。
アレンは、加速する時間の中で、さらに「知識」の概念をコピペして国民に配布していく。
「……よし。これで、僕が前世の記憶から引き出した『現代文明』の概念を、彼らの『常識』に上書きした。あとは寝て待つだけだ」
翌朝。 朝日が昇った時、そこには昨日までの「ファンタジーな領地」の姿はなかった。 空を飛び交う無音のトランスポーター、清浄なエネルギーで自律駆動する都市、そして全住人が「概念通信」で意思疎通を図る、究極の超近代国家が誕生していた。
門番のガルガに至っては、アレンが与えた『空間切断』の概念を独自に解析し、視線だけで次元を切り裂く「概念生命体」へと進化を遂げていた。
「……おはようございます、アレン様。コーヒーの淹れ方を『分子レベルで最適化』しておきました」
リィンが差し出してきたのは、飲むだけで魔力が全回復し、幸福感で脳が満たされる究極の一杯だった。
「ああ、いい香りだ。……さて、一晩で千年分進めちゃったけど。外の世界の人たちは、この『文明のバグ』に耐えられるかな?」
アレンがふと外を見れば、鎖国の結界を叩こうとしていた他国の調査員たちが、目の前で起きた「一晩での都市変貌」という怪奇現象を前に、泡を吹いて気絶していた。
しかし、この極端な時間の加速は、世界の深淵に眠る「システムの掃除屋」を呼び寄せる結果となる。
「……アレン様、空に『黒いノイズ』が発生しています。鑑定不能……いえ、あれは『虚無』そのものです!」
リィンの叫びと共に、青空がデジタル崩壊のように欠け始めた。
第15話をお読みいただきありがとうございました! 一晩で千年後の文明へ。加速しすぎてSFの領域に片足を突っ込んでしまったアレンの国。 ですが、過度なオーバークロックには「熱(不具合)」がつきものです。
次回、世界のバグを修正するために現れた「デリート・エージェント」。 存在そのものを消去しに来た「無」に対し、アレンはどんなデバッグを仕掛けるのか。
「……消去命令? 悪いけど、僕の国は『読み取り専用(Read Only)』に設定済みなんだ」
次回**「世界の掃除屋VSバグの創造主」**。 お楽しみに!




