表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/9

第一章:世界を「編集」する男

はじめまして。あるいは、いつもありがとうございます。 数ある作品の中から本作を見つけていただき、感謝しかありません。


「鑑定士」という不遇な役職。 ただ見るだけの男が、もし世界の「設定」そのものを弄れるとしたら? そんな妄想から生まれた、ちょっとデタラメで、最高にスカッとする物語をお届けします。 どうぞ、最後までお付き合いいただければ幸いです。

「アレン。君の【鑑定】スキルは、我が『黄金の獅子』騎士団には不要だ。……いや、この戦乱の世において、ただ『見るだけ』の男に居場所などない」


 豪華な大広間に、団長レオンの傲慢な声が響く。周囲の騎士たちは、憐れみと蔑みが混ざった視線をアレンに投げた。


「待ってください、団長。僕の鑑定があれば、敵の弱点も、隠された罠も、すべて——」 「黙れ。昨日入団したばかりの【火術師】の方が、よっぽど敵を焼き払う戦力になる。お前は今日限りで除名だ。……ああ、その汚い鑑定士のコートも置いていけ。それは騎士団の支給品だ」


 アレンは無言でコートを脱ぎ捨て、薄汚れたシャツ一枚で大聖堂を後にした。  無一文。装備なし。目的地は、魔物が徘徊する「名もなき荒野」。  それが、五年尽くした騎士団が彼に与えた「退職金」だった。


 荒野に一人放り出されたアレンは、乾いた風に吹かれながら、ふっと口角を上げた。


「……やっと、自由になれた」


 彼は知っていた。自分の【鑑定】が、単に情報を読み取るだけの不遇職ではないことを。  鑑定を極限まで突き詰めた先。彼の視界には、世界を構成する「文字」が見えていたのだ。


 アレンは、目の前にあったひび割れた大きな岩に手をかざした。   【対象:荒野の岩】 【属性:硬質(C) / 重厚(C) / 不動(D)】


「さて。まずは武器が必要だな」


 アレンが指先を動かすと、岩の表面から光り輝く「文字」が剥がれ落ちた。


【スキル起動:概念奪取(Cut)】 →『硬質』を奪いました。


 その瞬間、巨大な岩はまるで湿った砂のように崩れ落ち、ただの砂山へと変わった。  アレンは次に、足元に落ちていた「枯れ枝」を拾い上げる。


【対象:枯れ枝】 【属性:脆弱(E) / 可燃(D)】


「ここに、さっきの『硬質』を……【概念付与(Paste)】」


 シュン、という電子音のような音が響く。  ただの枯れ枝が、ダイヤモンドのような光沢を放ち、鋼鉄をも容易に切り裂く「究極の硬杖」へと変貌した。


「よし。次は『移動手段』だ」


 アレンは、荒野を通りかかった獰猛な魔獣「ワイルド・ラプター」を見据えた。  魔獣が鋭い爪を立てて襲いかかってくる。アレンは動じない。


「君の『俊敏』をいただくよ」


 魔獣がアレンの鼻先に迫った瞬間、その動きがピタリと止まり、魔獣は情けなく地面に転がった。  奪った『俊敏』を、自分の「ブーツ」に貼り付ける。


「……ふむ。歩くだけで風になれるな」


 アレンは、騎士団が必死に守っていた城壁の方角を振り返った。  あそこには、強力なスキルを自慢する騎士たちが大勢いる。だが、彼らは気づいていない。  彼らの「強さ」も、彼らの持つ「伝説の武器」も、すべてはアレンが指先一つで剥ぎ取れる「ただの設定」に過ぎないということを。


「レオン団長。君が自慢していたあの『伝説の炎剣』……次に見る時は、ただの『熱い棒』に変えてあげるよ」


 アレンは軽やかなステップで、誰も住めないと言われた「死の荒野」へと踏み出した。  そこを世界で最も豊かで、最も「デタラメ」な王国に書き換えるために。

第1話をお読みいただき、ありがとうございました!


ただの枯れ枝が、ダイヤモンド以上の硬度を持つ「聖枝(?)」へ。 これが世界のルールを書き換える【概念編集】の力です。


次回、アレンは誰も住めないはずの「死の荒野」に辿り着きます。 そこで彼が「ペースト」したのは、およそ荒野には似つかわしくない『ある概念』でした。


「……とりあえず、喉が渇いたから『水源』をどっかから持ってこようかな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ