第9話 達人になる
次の街で小前田がクラスメイトに、気になる話を聞き込んで来た。
「来訪者をランク付けする話が持ち上がっているみたい」
いよいよ来たか。
これで大部分のクラスメイトがやる気をなくした。
野神を頂点としたピラミッド構造で、野神達が有能な奴なら問題ない。
問題ないどころか良い案だと思える。
だが実際は、野神がSランクで取り巻きがAランク。
戦闘職がBとCで、生産職がDとEだ。
生産職が良い装備を作らなければ、実力は底上げされない。
魔王討伐もおぼつかない。
それに実力でランクを決めるのではなくて、野神の都合のいいように決めたランクなど、何の役にも立たない。
差別感情と虐めの温床を作るだけだ。
「御花畑はどうしている?」
「あの魔導書を使って、部屋で訓練しているわ」
そうだ、指南書だ。
剣の達人間違いなしとか書かれた指南書もあるはずだ。
探しに行こう。
「どこいくの?」
「本屋」
「私も行く」
俺は古本屋に到着。
「見て、占いの本があるよ。買っちゃおう」
占いも役に立ちそうだ。
だが、運に頼る訳にはいかない。
これで今日から達人と表紙に書かれた本を見つけた。
本当にあったよ。
買う必要はないな。
本に目を通してから。
「カタログスペック100%」
俺は光り輝いた。
達人になったのか。
そんな感じはしないな。
宿に戻って裏庭に行く。
「小前田、小石をいっぺんに投げてくれ」
小前田が小石を集めて投げる。
俺は剣で、小石を全て弾いた。
足さばきが踊るようだ。
我ながらびっくり。
いよいよ、対決色を鮮明にするときが来たか。
二人だが強力な味方もできた事だし。
俺の存在をみんなに知らせても良いと思う。
俺はみんなが泊っている宿に行った。
そこで桜沢さんを見つけた。
ちょうど良い。
「あら、波久礼君じゃない。今までどこにいたのよ」
「ちょっと遅刻したんだ。来訪者のランク付けの話は聞いているか」
「ええ」
「どう思う」
「指揮系統を作るのは問題ないわ」
「聞いてるぞ。男子は遊び呆けていると」
「モンスターと戦うのが怖いのよ。女子にもホームシックになったり、何もしてない子は多いわ」
「日本に帰る算段ならついている」
これは嘘じゃない。
来訪者が役割を果たして元の世界に戻った物語は多い。
魔王討伐さえ終えればスキルの力で日本に帰る事が出来る。
「そう。良いニュースだわ」
「条件が色々とある。その中の一つとして魔王は倒さないといけない。それにはクラスメイトが一丸にならないと。その意味でもランク付けは反対だ。序列を作るべきではない。生産職にも本気を出してもらわないと」
「結果を知っているような口ぶりね」
知っているんだと声を大にして言いたい。
だが、それを言うと胡散臭がれるし、野神に復讐出来ない。
「俺の情報では、野神がSランクで、取り巻きがAランク。戦闘職がBとCで、生産職がDとEと聞いたぜ」
「それは酷いわね。特権階級を作るのは良くないわ」
「分かってくれたか。俺は生産職として、野神に決闘を申し込む」
「私はその場を作れば良いのね」
「頼むよ」
「了解したわ」
決闘の場が整えられた。
場所はギルドの修練場。
そこで俺は野神に対峙した。
「波久礼、久しぶりだな。どこに行ってた」
「遅刻したんだよ。伝えたはずだが」
「何の事かな。俺の方はランク付けの撤廃を賭けるとして、お前は何を賭ける」
「俺への貸しを忘れてやる。貸しがないなんて言わせないぜ」
「それで、いいだろう」
「じゃあ、さっさと決闘しようぜ」
「樋口、お前がやれ」
「はい」
「野神、お前がやらないのか?」
「スキルを一つしか持ってない奴とはやりたくない。弱い者虐めは嫌なんだ」
前回の時に散々俺を虐めたくせに。
スキルの練習台で斬られた事は忘れないぞ。
正直、今の野神なら勝てそうな気もするが、側近一人を始末できるのなら、それもいい。
「後悔するなよ」
そう俺が挑発するが野神は乗って来ない。
用心深い奴だ。
「しないさ」
修練場の中央で、俺と樋口は向かい合う。
樋口、こいつはちくり屋で嫌われている。
職業は暗殺者だ。
手の内はみんな分かっている。
記憶が甦る。




