第79話 影魔と太陽の欠片
俺達は村を幾つか経由して、大きい街に入った。
今この街の話題は夜に屋外を出歩くと行方不明になる事だ。
モンスターの臭いがぷんぷんするな。
俺達と桜沢さん達は手分けして夜間のパトロールをする事になった。
俺と御花畑と王女は連れ立って夜の街を歩いていた。
ちなみに小前田は幽霊が恐いのでパスするそうだ。
今回用意したのはダンジョンで使ったどこまでも光が届くカンテラだ。
実体を持たないモンスター退治は御花畑が頼りだ。
夜の街は灯りがなく行方不明の噂もあって人影はない。
何時もは開いているであろう酒場なんかも閉まっていて街全体が死んでいるような不気味な感じがした。
ガタっと音がした。
その方向に目をやると猫が走り去っていくのが見える。
緊張し過ぎかな。
腕を回して肩の筋肉をほぐす。
二人を見ると落ち着いて辺りを見回していた。
「怖くないのか」
「ホラー映画よりはね」
「モンスターは怖くありません。宮廷の陰謀に比べたら大したことではないですね」
二人共度胸があるな。
モンスターには早く出て来て欲しいところだ。
「王女様は御付の人を連れてこなくていいのか」
「ええ、信用されてますから」
「一回聞きたかったが野神とはどうなっているんだ」
「あの方はなんでも魔王討伐の褒美として私との結婚と王の地位を望まれたとか」
「ふーん、あいつは最低だからと言っても、しょうがないか」
「そうですね、政略結婚ですから」
俺達が墓地に差し掛かった時に、ちらっと黒い影がカンテラの灯りに照らされた。
遂においでなさったか。
カンテラのカバーを空け松明に火を移す。
松明を幾つも地面に刺すと沢山の黒い影が地面にある。
敵は透明人間か。
それなら影だけという事はないだろう。
影は建物の影と一体化して溶け込んだ。
結局どういう敵なんだ。
その時松明が一斉に消えた。
「御花畑、魔法で灯りを」
「ライト」
黒い影が知らない間に近寄っていた。
魔法に照らされ黒い影はまた建物の影に入る。
「聞いた事があります。影魔というモンスターが居ると」
王女から話し掛けられた。
「どんなモンスターなんだ」
「暗闇に潜み人を襲うとか。光でダメージを与えられると聞きました。非常にしぶといそうです。松明の灯り程度では僅かなダメージしか与えられないと」
その時、御花畑の魔法が消える。
まずい、影魔が魔法のような物を使ったのだろう。
「御花畑、強い光だ」
「あいよ、フラッシュ」
閃光が生まれぎゃという叫び声が上がる。
カンテラで照らしたが魔石は落ちていない。
王女の情報通りでしぶといな。
この場に絶対消えないカンテラがあるのは心強い。
俺は太陽の欠片を作った時の模型をアイテム鞄から取り出した。
模型を設置して。
「灯りを頼む」
「ライト」
俺は模型に触り物語を片手に。
「カタログスペック100%」
太陽の欠片が産まれた。
それを火兎の手袋で手に取りかざした。
辺りは真昼の明るさを取り戻し、影だけの影魔は次々に魔石になる。
「くそう、上手くいってたのに……」
一際大きな影から声が聞こえてきた。
「悪は滅びるのよ」
御花畑が胸を張って言った。
大きな影は巨大な魔石になり、大勢の衰弱した人々が現れた。
きっと行方不明になった人達だな。
「何事だ?」
物音に様子を見に来た住人が問うた。
「モンスターを退治した。名もなき勇者をよろしく」
「天照す獄炎の賢者ミイコよ。私がモンスターを退治しました」
御花畑、必死だな。
「どこのお貴族様かは存じませんが、ありがとうございます」
みんな王女を讃えた。
一番偉そうな人がリーダーという事だろう。
「ずるい」
「どもども」
俺の所にも住人が挨拶にきた。
しょげる御花畑。
「まず、魔女ルックをどうにかしないとな」
「これはアイデンティティの問題だから、譲れない」
「じゃあ。賢者らしさを前面に出したら」
「どうやってよ」
「杖を持つとか、髭を生やすとか」
「馬鹿にしているの」
「やあ、どもども」
握手を求められた。
御花畑の所へは来ない。
「また、貧乏くじ」
「まあ、頑張れ」
衛兵を呼びこの事件は解決した。




