第77話 人魚討伐
国境の宿場町では今あるモンスターの噂で持ちきりだ。
なんでも国境の河に人魚が出没して舟の乗員を誘惑してみんな食っちまうのだそうだ。
俺達は人魚退治を買って出た。
パーティメンバーに王女を加えてミーティングが始まる。
「舟の上は敵のフィールドだ」
「こっちの有利な場所におびき寄せないと」
俺の言葉に御花畑が答えた。
「怪魚の時みたいに釣るのは駄目なの」
小前田が言った。
「人魚が釣り針に引っ掛かった事は無い。いかに大物でもなんなく釣れる仕掛けを作っても、食いつかないのではな。それにあの仕掛けは魚限定だ」
「誘惑を防げばよろしいのではなくて」
王女が意見を言った。
「いや駄目だ。誘惑を防いでも少し頭があれば舟の底に穴を開けるぐらい平気でやるだろう」
「はい、田舎のお婆ちゃんに聞いたのだけど。戦後のどさくさの時に魚を獲る為に毒を流したって」
小前田が手を上げて発言した。
「毒はな。後で人間が困るだろう」
「えっと、お婆ちゃんの話では魚だけに効果のある毒なんだって」
「レシピに都合の良いのがあるのか」
「無いけどそこは反則スキルでなんとか」
「人魚だけに効く毒か。調べてもなさそうだな」
人魚と人間が恋をした物語はあったが、人魚専用の毒が出てくる物語はなかった。
やっぱり毒は少し物騒だ。
ここは一つ人魚を騙すか。
人間だと思ってかじりついた人形が爆弾とかどうだろう。
いけない、いけない、物騒な方に思考が流れてる。
よし、モーゼに習おう。
河の水を割れば良いんだ。
水が無ければいかに人魚とて動きがとれないだろう。
幸いこの手の話は定番で、海を割ったという話は色々とある。
その中で満月の夜に神に祈ったら湖が割れ対岸の恋人に会えたという話が一番簡単だった。
何せ満月の夜に神に祈れば良いんだから。
「恋人役は誰がやる」
「当然この中で一番適任なのは私でしょ」
御花畑がなにやら根拠のない事を言い出した。
「私も立候補します」
王女もなぜか立候補してきた。
「じゃ私も」
小前田もついでみたいな乗りで手を上げた。
誰かを贔屓すると後で言われそうだな。
よし。
「じゃ三人同時だ。パワー三倍だろう」
「仕方ないわね」
「私も異論はありません」
「もてもてね」
俺達は満月を待ち、対岸に彼女達を安全に送る為に橋を掛ける事にした。
一時的に橋が架かる伝説は定番だからな。
丸太を浮かべて『樹精霊の蜜』を振り掛ける。
この蜜はただのメイプルシロップだが名前が『樹精霊の蜜』だからカタログスペックの対象だ。
伝説が書かれた本を片手にスキルを掛けると丸太はぐんぐん大きくなり立派な丸太橋となった。
三人と王女の御付きの者が橋を渡る。
彼女らが対岸に着いた頃に恋人の伝説を片手に持ち神に祈りを捧げ。
「カタログスペック100%」
河が割れその中央には人魚がびたんびたんとのた打ち回っていた。
見た目は美女だ。
おっぱいが丸見えで目のやり場に困る。
グラマーと言ってもいいほどの巨乳だ
それにしても行動は完全に魚だな。
水から出ればこんなものか、ハイハイするという考えは無いようだ。
グラマーな見た目も、のた打ち回っていると興ざめだな。
もの凄い勢いで対岸から御花畑が駆けて来る。
「邪魔する奴はー、ホースキック」
巨大な蹄鉄の形をした鉄の塊が現れ、人魚を跳ね飛ばした。
人魚は空中で魔石になって落ちてくる。
俺は魔石をナイスキャッチした。
「何か言ってよ」
俺が来るのを待っていた御花畑が催促した。
それにしても、ホースキックという魔法は御花畑のオリジナルなのか。
形意拳のイメージかな。
馬の蹴りを魔法で再現したという。
どうせやるなら鷹の爪とか蛇とか、もっと言えば竜とかなんか別にあるだろう。
「なんでホースキック?」
「良いじゃない、気分よ、気分。他にないの」
「うん、お疲れ」
「そこは『会いたかったよ』じゃないの」
「毎日会っているだろ」
遅れて王女と小前田が到着した。
「みんなもお疲れ」
「楽しかったね。月明かりに河が割れるところちょっと感動した」
「お城の外は驚きに満ち溢れているのですね」
「こいつのスキルが変態なだけだから」
「水が元に戻る前に河から出よう」
こうして人魚討伐は一瞬で終わった。




