第73 紛争の気配
街に着いた俺達はさっそく行動を開始した。
「よし、手分けして情報収集だ」
俺は御花畑と小前田二人と分かれ独自に情報収集する。
まずは『アミオンの目』で領主を偵察しよう。
若い領主は精力的に政務をこなしていた。
側近にも怪しい者はいない。
この街は違ったのかな。
二人の帰りを待つ事にした。
「分かったわよ。ここの領主は軍備を増強しているわ。怪しいと言えばその一点だけよ」
御花畑が報告。
「私も聞いたよ。農村から出稼ぎに来た青年を兵士に勧誘しているんだって」
小前田も続いて言った。
モンスターの被害も増えているし、軍備の増強は不自然ではないんだよな。
でもなんとなく気になる。
その方面に的をしぼって観察してみるか。
兵士がたむろしている酒場にフードを被った姿でくり出した。
酒を頼まない俺達は奇異な目で見られたが、食事だけの客もたまにいるから邪険にはされなかった。
兵士のグループが次々にやってくる。
兵士達の会話には不自然なものは無い。
たが何か違和感がある。
兵士の一人がいやに非人間的なのだ。
そして気づいた機械音声みたいなんだと。
俺は『真実印』をそっと組む。
その兵士はなんとモンスターだった。
のっぺらぼうの顔はドッペルゲンガーだったと思う。
二人に合図してそのモンスターの兵士の後をつける。
兵士は領主使用人の宿舎に入って入った。
俺は『アミオンの目』で中を覗く。
中にはメイド姿の女が居て、兵士に化けたモンスターはその女に何やら報告をしている様に見える。
メイドの女は黒髪で金色の目。
黒猫を思わせる風貌で、ほとんどの人が美人だと思うような体型と顔だ。
「ねぇ、ぼーっとしてどうしたの。中に踏み込まなくともいいの」
「スキルでマーカーみたいな物を付けたからしばらく泳がす」
「へぇ、何時の間に。なんか怪しいんだけど」
やばい、覗き能力がばれそうだ。
なんでこんなに勘が鋭いんだ。
「波久礼君、素直に白状した方が良いと思う」
「まぁなんだ。秘密だ」
ここは惚ける一手だ。
「それでこれからどうするの」
疑ってはいるが許してもらえたようだ。
「マーカーが付いているとカメラの役割をするからそれで見張る」
「そのマーカーってのはどんな形」
「それも秘密だ」
「あんた私達にもそのマーカーを付けてないでしょうね」
御花畑と小前田は盛んに自分の背中を見ようと身をよじる。
これはスキルで千里眼を獲得したなんて言ったら怒られそうだな。
「つけてないったら、ない」
俺は手を振って否定した。
「まあ良いでしょう。おかしな事したら半殺しの上で絶交よ」
「覚えとくよ」
怪しいメイドの女を『アミオンの目』で見張る。
女は領主の担当のメイドのようだ。
だが、領主のそばにいるだけで仕事はしていない。
領主がたまに仕事を言いつける事があっても、他のメイドに命令して済ましてしまう。
こいつは黒だな。
メイドの女が何回か兵士に用事を告げる場面がある。
俺は『アミオンの目』で兵士の尾行を開始した。
兵士は街の外に出ると街道の途中で馬車の中身をアイテム鞄に受け取り、街に戻った。
馬車の中身は驚く事に全て武器。
兵士はその武器を武器庫の武器と取替え、通常の勤務に戻った。
武器には例の黒い水晶が嵌っているじゃないか。
そういう事か。
兵士を知らず識らずのうちに洗脳しているな。
問題は兵士を使って何をやらかすかだ。
「兵士の武器に黒い水晶が嵌っている」
「なんで分かったの」
「透明になる鉢巻を使い、さっき忍び込んだのさ」
「へぇ、そうなの」
完全に疑われているな。
クラスメイトの覗きなんてしないと説得できたら良いんだが。
仕方ないなループ前の男子生徒のサルぶりをみたら、理性を信じてくれとは言えない。
数日経った時に、兵士が何をやるのかの謎が解けた。
立て札が立ち、そこには『税を一割にする。この街は圧政に苦しむ他の街を救う為に軍を起こす』とある。
なるほど表向きは正義を騙るのだな。
魔族の狙いは戦乱か。
さてどうやって阻止しようか。
領主の目を覚まさせるのに踏み込むと洗脳された兵士が自爆覚悟で立ちふさがるって寸法だろう。
まずは洗脳を解く事だな。




