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第72話 寄生スライム

「はーい、次の方」


 立ち寄った村で、治療が出来るクラスメイト達は、村長の家で臨時の診療室を開いていた。

 俺が何の気なしに村人の会話を聞いていると。


「虫に刺されたのかねぇ。こんなに腫れちゃって」


 見るとほっぺがみんな腫れている。

 おたふく風邪じゃないかな。


「やだ大変、モンスターが取り付いているわ」


 新郷(しんごう)さんが診断を下した。


波久礼(はぐれ)君、『女神の涙』をちょうだい」

新郷(しんごう)さん、ちょっと待って。それって状態異常なのか」

「誰か鑑定お願い」

「鑑定。取り付いているだけみたい」

「そっかぁ、焼いてからヒール掛けるのが一番早いのかな」

「それは痛そうだな。そうだ丁度良いのがある」

「何って、飴じゃない」

「ほっぺが落ちるがうたい文句の飴だよ。やるぞ、カタログスペック100%」


 飴の袋が光り、袋には『ぽっぺが落ちる美味しさ』と判子が押してある。


「さあ、一個ずつだよ」


 飴を舐めた村人のほっぺから腫れている部分が落ち、スライムみたいに蠢めいた。


「早くやっつけて」


 俺はナイフでそれを刺した。

 それは黒い煙を出して溶け、魔石を残した。


「きゃ。ほっぺが」


 女生徒の一人がほっぺに寄生された。


「不用意に近づくと寄生されるぞ。慎重にな。寄生された奴は飴を舐めろ」

「このこの」


 寄生された女生徒は飴を舐めモンスターをめった刺しにした。

 一時的でも不細工になった恨みは深いらしい。


 みんなは慎重にナイフで刺して回る。

 ほどなくして全て退治出来た。


「バストなんかに寄生されなくて良かった」

「うん、取り除くのにためらいが生まれるものね」

「でも片方だけだったら。悲劇よね」


 あけすけな話に赤面しそうだ。

 いたたまれない気持ちになる。


「きゃあ、なにするの」


 表から悲鳴が聞こえた。

 ナイスタイミング。

 この空気を壊してくれた事に礼を言わせてくれ。


「麻呂ナード、放しなさい。その人はモンスターじゃないのよ」


 俺が表に出ると羊の麻呂ナードが綺麗な女性に噛み付いている。


「羊よ。よく我が魔族だと見抜いたな」


 女性の雰囲気が急に変わり、角を生やした姿に変身した。


「みんな、下がって」


 俺は村人を下がらせた。


「魔族ってモンスターとどう違うんだ」

「あの様な力無き者と一緒にするでない。魔族は知性と力が抜きん出たモンスターを指す言葉だ」


 モンスターの貴族って事ね。


「その魔族が何の用だ?」

「配下のモンスターが突然やられたので何事かと思ったら、貴様らがやったのか」

「そうかお前の仕業だったんだな」

「そうだ。動物に寄生させた配下の餌食になるが良い」


 魔族が指を鳴らすと、村の外に土ぼこりが上がった。

 木を跳ね飛ばしながら三階建てぐらいの肌色スライムが近づいてくる。


御花畑(おはなばたけ)先生、やっちゃって下さい」

「魔力百倍の力見せてあげる。ファイヤーハリケーン」


 巨大な炎の渦巻きがスライムに向かって前進を開始する。

 炎の渦巻きはスライムの十倍程の大きさがあり、スライムをすっぽり包みこんだ。


 スライムはボロボロと焼け崩れていき最後には見えなくなった。


「よくも私の可愛い寄生スライム達を」

「観念するんだな」


 俺達は魔族を取り囲んだ。


「ふっ、ここは一旦引いてやる」


 そういうと魔族は羽を広げ、飛び立った。


「麻呂ナード、ブレス」


 ブレスは魔族の脇をかすめ、魔族は大慌てで逃げて行く。

 そして、巨大スライムがいた所に行くと、魔石の山が出来ていた。

 魔石よりもまずは消火活動だな。

 水魔法が使えるクラスメイトは水魔法でファイヤーハリケーンの後始末をした。

 魔法が使えない人達はくすぶっている所を見つけ出して報告。

 消火活動は日が暮れるまで続いた。

 先生なんて呼ぶんじゃなかった。

 あれで調子に乗った気がする。

 加減は間違えない様に指導しないとな。


 魔石の山は森を焼いたお詫びとして寄付したほうがいいだろう。

 気になるので俺達は桜沢さんらと別れ、魔族が飛び去った方向に寄り道する事にした。


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