第70話 野薙(やなぎ)の型
俺達は今ドラゴン討伐に向けて進軍中だ。
なぜこんな事をやる羽目になったかと言うと。
領主の紹介状を貴族に差し出したところ泣きつかれこのような事になった。
無視しても良いんだがイメージ戦略という奴だ。
野神達のグループとは違うと宣伝しておいた。
俺は討伐をみんなに任せる事にして一人森を散策する。
「ふふっ。この時を待っていたぞ」
「お前は野神」
「どうにもお前は俺の邪魔者のようだ。王になる算段もついたし、ここらで消えてもらおう」
野神は聖剣を抜き切り掛かってきた。
聖剣の燐光が剣の軌跡を残す。
「ふんっ」
俺は気合を込めて剣の腹を押し軌道をずらす。
「やるな。これはどうかな。シャープスラッシュ」
剣の光が強まり俺に向かって振り下ろされる。
俺はまたもや剣の腹を叩き、剣を弾いた。
「それなら、バッシュ」
野神は盾で俺を殴打してくる。
俺は盾の縁に手を掛け横にずらしながらさける。
「まだまだ、ソニックスラッシュ」
超高速の横なぎの剣をかわしながら、手で剣の軌道を変える。
そして、俺の身体はくるりと回転。
「くっ、ディメンションスラッシュ」
俺は剣に手を添え軌道を変えて、野神に密着、鎧に手を添えた。
殺せるか。
野神は飛び退いた。
殺気が漏れたのかな。
「運のいい奴だ」
「引き分けだな」
そう言うと野神は逃げて行った。
一連の動きにはタネがある。
武川さんの奥義書を使いスキルで覚えたのだ。
『野薙の型』と言い、風の動きが見えれば、体得できると奥義書に書いてあった。
受け流しする技で、ゲームでいうところのパリィという奴だ。
『アミオンの目』で風が見えるか試したところ見事に見えた。
それでカタログスペック100%を使い習得。
現在に至るという訳だ。
野神の接近にはもっと前から気づいていた。
なぜなら、野神と魔王は定期的に覗いているからだ。
驚いてみせたのはフェイクだ。
覗いているのがばれるとやっかいだからな。
一人でやったのは皆を巻き込むのも気が引けるし、血を見せる羽目になっても後味が悪い。
今の自分でどれだけやれるのか試したかったというのもある。
もしもの時の切り札も幾つかあるから一人で対応した。
ディメンションスラッシュはもう怖くない。
次はたぶん殺せるだろう。
切り札もあるしな。
さて皆はどうかな。
ドラゴン討伐の現場に行く。
真っ赤なドラゴンは大型トラックほどの大きさがあって、口からちろちろと炎が漏れていた。
凶悪な面構えだ。
前衛が思い思いの武器で討ちかかり、後衛は援護をする。
連携は取れているな。
ドラゴンがブレス吐く動作に入った。
麻呂ナードが前面に出て対抗してブレスを吐く。
押し負けている。
和銅さんが更に前に出てエクストニウム製の盾で勢いの弱くなったブレスを受け止める。
明戸さんが分裂ナイフを投げ、大量のナイフはドラゴンの鱗に弾かれる。
ドラゴンの気がそれた。
その隙に武川さんが接近、チャージスキルをプラスした堤蟻穴壊を叩き込む。
抜き手はふかぶかとドラゴンに突き刺さる。
ドラゴンが咆哮を上げる。
噛み付きにきたところを桜沢さんがヘビークラッシュを唱え、スキルの後押しがあるメイスを叩き込み勝負はついた。
「みんなお疲れ。『女神の涙』があるよ」
俺はコップに入れて配ろうとした。
「ちょっと、変なスキルは掛けてないでしょうね」
御花畑が言った。
「心配しなくてもただのジュースだよ」
その証拠の為に俺は一口飲んだ。
「みんな波久礼君のおごりだって」
桜沢さんが横から手を伸ばし、俺の手からコップを取り飲み干した。
「あっ」
「御花畑どうした?」
「よこしなさいよ」
御花畑が少しすねる口調で言った。
「飲まないんじゃなかったのか」
「つべこべ言わずに早くよこしなさい」
御花畑は俺からひったくるようにコップを受け取り飲み干した。
彼女は一番でなきゃ嫌とでも、思っているのだろうか。
小前田が、ニマニマしながらこっちを見ている。
なんかおかしな事をしたか?
何にもしてないよな。
「何か?」
「何でも」
やはりニマニマしてる。
何なんだ。




