第63話 怪盗現る
俺達は怪盗を捕まえるために作戦を練った。
「ねえ、どんな作戦でいくのよ」
御花畑が尋ねる。
「そうだな、まず外はネクロマンサーの黒谷さんに頑張ってもらう。アンデッドは眠ったり買収されたりしないからな」
「内側はどうするの」
「罠がほしいな。誰かに頼むとしよう」
「切り札はないの」
「あるよ、秘密だ」
「怪盗ってイケメンなのかな」
小前田が憧れのスターを夢見るように言った。
「捕まえたら正体を暴いてやるよ」
「誰か恋に落ちたりして。そして、怪盗を庇って、愛の逃避行を繰り広げるのよ」
「そんな事にはならないと思うな」
怪盗をおびき出す場所は領主館の玄関ホールだ。
桜沢さんの伝手でここを借りる事ができた。
ガラスケースに収められた『女神の祝福』の周りには和銅さんと日野さんの共同制作の罠が張り巡らされる。
残りの人間は罠に掛からない場所で待機だ。
日が暮れて、夜になる。
みんな固唾をのんで見守っていた。
時計の秒針の音がやけに大きく聞こえる。
俺の腕時計の針がぴったり合わさった。
外が騒がしい。
来たようだな。
俺はわくわくしながら怪盗の到着を待つ。
ぷしゅーと音がして煙がホールに漂う。
催眠ガスのようだ。
随分と古典的な手法だな。
俺達は小前田製の状態異常レジストポーションをあらかじめ飲んでいた。
眠ったふりをして怪盗の油断を誘う。
怪盗らしき人影が入って来た。
姿がはっきりしてくる。
怪盗は黒ずくめの格好で頭に赤い羽根を刺していた。
怪盗に明戸さんがナイフを投げる。
ナイフは怪盗を突き抜け床を転がっていく。
「幻術よ。本体は別の場所にいる」
明戸さんがそう言ってお手上げのジェスチャーをする。
幻とはこしゃくな手を使う。
罠をどうやって回避するのかと見ていたら怪盗は懐からボールを取り出した。
怪盗がボールを投げるとボールは膨らみ人型になる。
それは、罠に突進していき電撃につつまれ煙を上げた。
ゴーレムを使ったのか。
なかなかやるな。
怪盗はガラスケース手を掛け『女神の祝福』を取り出すと、頭の赤い羽根を地面に叩きつけた。
赤い羽根は煙幕になり怪盗の姿を隠す。
そろそろ、決着の時間だな。
『手印の手引き』にあった金縛り印を結ぶ。
俺以外の人間が全員金縛りにあう。
煙が晴れていき怪盗が立っているのが分かった。
俺は怪盗に近づき蹴ると、足が怪盗を突き抜ける。
金縛りにあっても幻は解けないのだな
印を素早く真実印に切り替え怪盗の本当の位置を探った。
黒ずくめのすぐそばに怪盗が姿を現した、身なりの良い小太りの男だ。
素早く再び金縛り印を結ぶ。
怪盗の後ろに行き蹴る。
今度はちゃんと手ごたえがあり、怪盗は倒れた。
怪盗を踏んづけて、『義賊捕り物帳』を取り出し。
「カタログスペック100%」
怪盗は光に包まれ義賊になった。
「何しやがる」
「お前は今日から義賊だ。悪人からしか盗めない。『女神の祝福』を返せ」
「手が勝手に」
怪盗は懐から『女神の祝福』を出すと俺に返還した。
「それから、善人から盗んだ物は全部返すんだな」
「いやだ……へい、返しやす。この口が何を勝手に。もうこうなったらやけくそだ。義賊になってやるよ」
盗賊を義賊にしたのは理由がある。
前回の時は腐った貴族を散々みたからだ。
この盗賊を義賊にすればそういう奴らに復讐できる。
「うん、それがいい。ちなみにアンデッドはどう対処した」
「特殊な聖水を含ませた自動的に締まるロープを投げた」
「なるほどね。野神という男が首領の集団がいる。こいつらは悪人だ。思いっきり盗んでやれ」
「へい」
「捕まるなよ」
「ドジは踏みませんぜ。今回のお詫びに盗賊の秘伝書を置いていく。あばよ」
そう言うと本を置いて怪盗は姿を消した。
「小太りの男って幻滅したなぁ」
「馬鹿ね。顔が良かったら結婚詐欺しているわよ」
小前田は夢見ていたらしい。
御花畑から突っ込みが入った。
現実はそんなもんだろう。




