第62話 お嬢様の性格改善
今日は桜沢さんに相談された。
「どんな事。俺に出来るならやるけど」
「領主のお嬢様がね。わがままでね。少し問題があるの。私は新兵教育でもしたら良いのだと思うけど、周り反対されて困ってしまって」
「やってみるけど、あんま期待しないでくれ」
「ええ」
俺達は領主の娘がいる部屋の前にやって来た。
中からは壁に物が当たるような音と陶器が壊れる音がする。
俺達はノックして中に入った。
「いらいらするったら、いらいらする。何でマナーってあんなにややこしいのぉ」
十歳ぐらいのお嬢様は現在憤懣やるかたない様子。
飲んでいたであろうティーセットは壁に当たり粉々だ。
仕方ないので俺は侍女に話し掛ける。
「依頼を受けてきたのだけど、いつもこんなのか」
「ええ、困ってます。後一時間も暴れれば、元に戻ります」
うーん、どうしよう。
やさしさの種って手もあるけど、ストレスを軽減させてやりたいな。
「あの、お茶をさっきまで飲んでいたようだったけど、お嬢様はお茶が好きなのかな」
「ええ、よくお召し上がりになります」
決まったな。
お茶だな。
こういう時は『ティナ・コンダのテイスティングノート』だな。
この中で『ヴェステア産』の紅茶に決めた。
『淑女のお淑やかな香りはあなたを淑女に誘うでしょう』とある。
お嬢様が落ち着いたところでこのお茶を侍女に淹れてもらう。
幸いな事に茶葉は領主館に備えてあった。
なんでも一通り有名なお茶はあるんだそうだ。
淹れ立てのお茶にテイスティングノートを片手にお嬢様に見えない所で。
「カタログスペック100%」
ティポットは光に包まれた。
俺達侍女と一緒にお嬢様の部屋に行った。
「また、来たのね。何度きても同じよ。いらいらは収まらないわ。それともあなたが芸でもして笑わせてくれるの」
「まあまあ、いろいろあって喉が渇いたんじゃないか。紅茶でも一杯どうだろう」
「気が利くのね。頂くわ」
お嬢様は例のお茶を飲んだ。
「そうだわ、あなたにもお茶をお出ししないと。はぁー」
お嬢様は盛大にため息をついた。
「はぁー、なんでわたくしはこんなにグズなんでしょう。簡単なマナーも出来ないなんて。はぁ」
お嬢様はお淑やかになったが、盛んにため息をついていて少し可哀相だ。
ストレスの元が解消されてないからだろう。
部屋から退出して別のお茶にスキルを掛けてみようと侍女に俺は言った。
『ティナ・コンダのテイスティングノート』からこんどは『アルジャー産』をチョイスした。
『落ち着いた牧草に似た香りはストレスを和らげるでしょう』とある。
茶葉にカタログスペック100%を掛けて影からそっと様子を見る事に。
「お嬢様、お茶のおかわりをお注ぎいたしましょう」
「ええ、はぁ」
お嬢様は侍女が淹れたお茶を飲み顔が柔らかくなる。
「突然、気分が晴れましてよ。今ならマナーの授業を一日中受けても平気のようですわ」
「では遅れている分を取り戻しましょう」
俺達のそばに侍女がやってきて言う。
「紅茶を飲んだお嬢様はさっぱりしたお顔になられました」
「常用も恐いからストレスが溜まったなと思ったらあの茶葉を使うように」
そう俺は念を押すように言った。
とにかくお嬢様の性格改善はなった。
俺は桜沢さんの所に行って事態を報告し始めた。
「ストレスが溜まっていたらしい。子供なのに大変だな。思いっきり遊ばせたらいいのにな」
「貴族じゃそうもいかないんだと思う」
「お茶にスキルを掛けて飲ませた。ストレスは軽減されたと思うけど」
「ありがと。どうもモンスター相手とは違うから調子が狂うのよね。なんとかなって良かったわ」
「ストレス軽減の茶葉をいくらか分けてもらったから、淹れよう」
俺はお茶を淹れた。
「ふはぁ、まったりするわね。ストレスが溜まってたのかな」
「いつでも言ってくれ。茶葉にスキルを掛けてやるよ」
「癖になりそうね。責任取ってくれる?」
「あんなお茶だったら何時でも淹れてやるよ」
「そうじゃなくて」
「リーダー、大変よ、大変」
新郷さんが駆け込んで来た。
「何かあったのか?」
「怪盗から予告状が。午前零時『女神の祝福』いただきに参りますだって」
「心配しなくとも、盗まれたらまた作ってやるって。でも面白そうだな。よし捕まえるか」
俺達は怪盗を捕まえる事にした。




