第61話 魔力の泉
俺は小前田の付き添いで街の治療院に来ていた。
「はい、このポーション飲んでね。すぐに良くなるわよ」
「申し訳ねえんだが、持ち合わせが無くて」
「良いのよ。奉仕活動だから」
小前田の治療も近頃は様になってきている。
ポーションの聖女なんて呼ばれていてそのうち本当の聖女になれるんじゃないだろうか。
まあ、この国の教会は職業第一主義だから、錬金術士は聖女になれないだろうけど。
転職の儀をしたら聖女の職がなんて事になりそうだな。
でも、本人にはそんな気はないみたいだ。
治療もひと段落終え、患者が途切れた時に小前田がクラスメイトを連れて来た。
たしか彼女は新郷さんだったな。
保険委員だったはずだ。
思い出した。
前回の時は、女子の後衛の治療班は精力の回復魔法で大変だった。
奉仕させられるのが嫌なのに、魔力を使い果たしてまで精力を回復させられた。
本来、精力回復は、モンスターと長時間戦ったり。
アンデッドに精力を盗られた時に使う物だ。
それをエロの為に使わされてたのだ。
今回、女子が救えて良かったよ。
あれは地獄だった。
終わらない奉仕に女子のみんなは目が死んでた。
「波久礼君、彼女をなんとかしてあげて」
「お願いします」
新郷さんがぺこりと頭を下げる。
「えっと、どういう事?」
「あのね、彼女は治癒師なんだけど魔力が少なくて。マナポーション漬けなんだって」
「そうなんです。今ではマナポーションみると吐き気が」
ああ、前回の時と同じだな。
もっとも魔力の使い道は違うが。
今回は真面目に治療に使っている。
「それは辛いな。考えてみるよ」
魔力の増強ね。
この世界の伝説で『魔力の泉』というのがある。
『女神の涙』が魔力溢れる泉になったという。
この泉を飲んだ者は百倍の魔力を得るとある。
俺と小前田は協力してミニチュアの泉をこしらえた。
そこに『女神の涙』という名前のジュースを入れ。
「カタログスペック100%」
泉は光を放ち、こんこんと眩い光を放つ水を湧き出させた。
「さあ、飲んで」
新郷さんは恐る恐るコップに汲んだ水を口に含む。
「美味しい、身体に染み渡るようだわ」
「美味いのか?」
「ちょっと酔ったみたい」
新郷さんが俺にしなだれかかる。
「そんな効能はないはずだ」
「てへっ、ばれたか」
「そこっ、いちゃつかない」
「波久礼君が素敵だから」
「俺は悩みを解決しているだけだ」
「あなたは女子を見る時に悲しい目をするけど、あなたの悩みは晴れないのね」
全てが片付いたら、俺の悩みも無くなるだろう。
「ついでだから、小前田も飲んでおけ」
小前田はコップの水を一気飲みしてぷはぁと息をついた。
「ついでは余計。ほんと美味しいね」
「御花畑にもお土産にもっていってやろう」
俺は、泉の水全てを水筒につめた。
後は魔力の効率化だな。
使用魔力が半分になる『女神の祝福』をペンダントにする事にした。
またもや材料は『女神の涙』。
この世界の女神は何回涙を流せば気が済むのだろう。
だが、手持ちの材料で作れる事は良い事だ。
『女神の涙』を『レーの鏡』に映して固形化する。
そして。
「カタログスペック100%」
ジュースの塊は青みがかかった透き通った宝石に姿を変えた。
後は小前田がアクセサリーにするだけだ。
ペンダントに嵌った宝石は神秘的な光を放つ。
「ありがとう、大事にするね」
俺達が宿に帰ると御花畑がいて。
「喉が渇いたわ。なんか無い」
「おう、ちょうど良いのがあるぞ」
俺は『魔力の泉』から汲んだ水をコップに注いだ。
「なんか光っているけど、放射能とかじゃないわよね」
「違う違う。美味いらしい」
御花畑は訝しげにコップを見つめてから、一気に飲んだ。
「おかわり」
水筒の水ありったけをおかわりさせて上げた。
御花畑は可愛くげっぷした後言う。
「何これ。魔力が凄いんだけど」
「魔力百倍らしいぞ」
「そうなの。やだ、無敵じゃない」
「これで魔力切れとはおさらばだな」
「あんたのスキルは凄いわね。便利スキル、いえいえ、ここまで行くと変態スキルだわ」
「ひどいな。もうお土産もってきてやらないぞ」
今頃は女子全員が泉の水を飲んだだろう。
これでみんな魔力切れとはおさらばだ。




