第59話 羊さんパワーアップ
次の依頼は調教師の大野原さんからだった。
大野原さんは帰宅部で、家では犬を飼っているらしい。
「ええっと、動物をテイムしたいとか」
「そうなの、犬とかだと可哀相で戦闘させたり出来ないと思うから、何か考えてほしい。今まではネズミをテイムして偵察に使ってたけど戦闘にも参加したいのよ」
「俺のお勧めは熊だな」
「私は狐。もふもふでかわいいし」
「私は虎よ、如何にも強そうじゃない」
「猛獣はちょっと。狐は犬とあまり変わらない気がして」
「じゃあ草食獣にするか。そうなると馬、牛、羊、山羊、豚ってところか」
「その中だと羊さんかな」
「よし羊に決まりだな」
俺達は羊飼いの所に行って生きたまま羊を買い取る交渉をした。
もこもこの羊を手に入れる事が出来た。
もちろん依頼はこれで終わりではない。
羊をモンスターとの戦闘に役立つように仕上げなくてはならない。
「羊を強くするんだけど、何か案がないか」
「かわいい鎧を着けてあげたら」
「ブレスよ、ブレスを吐かせるのよ」
「よし、その方向で考えてみるか」
竜の血染めの上着を作り羊に着せてやった。
防御はこんなところだろう。
パワーをどうにかしたいところだ。
力の腕輪というのが伝説の中にあった。
材料はドラゴンのブレスで鍛えた鉄だ。
これは後回しだな。
頭にヘルメットをかぶせ、貫通の強化をつけた角を付ける。
貫通強化の角は小前田に作ってもらった。
神話などによる物を作ると間違って仲間を刺したら一大事だからだ。
ドラゴンブレスを吐けるようにする。
材料は火炎草と風のベール。
火炎草はありふれた草花で花の形が炎に似ている事から名付けられている。
神話に出てくる火炎草は燃え盛っているらしいが、名前が同じなら問題ない。
風のベールは風魔法を『レーの鏡』に映して作った。
それらを羊に食わせ。
「カタログスペック100%」
羊は光に包まれ、口から炎の吐息を洩らす。
成功だ。
後は力の腕輪だな。
鉄のインゴットに羊のブレスを放射する。
それを小前田が腕輪に仕上げた。
羊は足しかないが、腕輪を足につけちゃいかんという事もないだろう。
腕輪にカタログスペック100%を掛け、羊の強化は終わった。
実戦といこう。
俺達はモンスターがいる森にやってきた。
前方にはゴブリンが見える。
「麻呂ナード、突撃」
「めぇー」
『麻呂ナード』は羊の名前だ。
『麻呂ナード』とはまたヘンテコなネーミングだな。
ペットは変な名前も多いから突っ込まないでおこう。
大野原さんの命令に従って羊が頭突きを食らわす。
ゴブリンは羊の角を喰らいくの字になって跳ね飛ばされ魔石になった
「よしよし、偉いわ」
「めぇめぇ」
大野原さんが羊を撫でた。
次の相手はオークだった。
「麻呂ナード、突撃」
「めぇ」
羊は突撃してオークはその突進を受け止めた。
角によるダメージはあるみたいだが、致命傷とはいかなかったみたいだ。
オークが棍棒を羊に振るう。
羊は不壊の上着ともこもこの体毛で受け止めた。
「麻呂ナード、ブレス」
「め゛ぇーー」
羊は燃え盛る炎を吐き出しオークは黒こげになった。
そして、皮と魔石を残しオークは消えていく。
「よしよし、牧草をお上がり」
「めぇめぇ」
羊に干草を食べさせ、俺達は更に進む。
次の相手はオーガだった。
これはちょっと厳しいかも。
「麻呂ナード、ブレス」
「め゛ぇーー」
オーガはダメージを負ったもの倒れてはいない。
オーガが大剣を振り上げる。
「麻呂ナード、よけてからの乱舞」
「め゛」
羊は剣をかいくぐり、あそこに噛み付いた。
うわ痛そう。
そして、頭突き三段からのブレス。
オーガは魔石になった。
「ギガントコーンをたんとお上がり」
「めぇめぇめぇ」
羊がギガントコーンをむさぼる。
それを小前田が羨ましそうな目つきで見ていた。
「なんだ腹が減っているのか」
「違うわ。ペット、ちょっといいかもって」
「世話が大変だから、シルバーで我慢しとこうよ」
「そうね、私達にはシルバーがいるもんね」
羊強化は終了した。
ブレスを吐く羊というとキメラか。
あれは山羊だったか。
とにかくキメラ並みになったはずだ。
戦力にはなるだろう。




