第58話 後衛も出来る戦闘職
今日の依頼主は明戸さん。
明戸さんはショートカットでスレンダーな肢体の持ち主で美少女だ。
なぜ体型が分かるかというと体操部で新入生勧誘のデモンストレーションをやった時に模範演技を披露していたのをよく覚えている。
前回では明戸は娼婦の恰好で、よく踊りを踊らされてた。
踊りに悲しみがある痛々しい踊りだった。
そして興が乗って来ると。
こんな事は思い出したくない。
奴らに鉄槌を。
誓いを新たにした。
ギルドの依頼を一緒にやってくれというのではなく、お悩み相談だ。
「それで、どんな悩みなんだ」
「軽業師なんだけど役に立つ場面がないのが……」
軽業師じゃ確かに役立つ場面が限られるな。
拠点に忍び込んだり、足場の悪い所を飛び跳ねたりする所しか活躍が想像できない。
「みんなはどう思う」
「芸を披露してみんなを元気づけられたらいいと思う」
「蝶のように舞い、蜂のように刺す。これっきゃないでしょう」
「なるほど参考になったよ」
まずは踊りだな。
戦いを鼓舞する踊り、癒しの踊り、眠りを誘う踊り、魅了の踊り、誘い出す踊りを伝説や神話から探し出した。
こういうのは舞台や演劇になっているから、踊りのやり方はすぐに分かった。
「明戸さん、やるよ。カタログスペック100%、カタログスペック100%、カタログスペック100%、カタログスペック100%、カタログスペック100%」
「これで五種類、特殊効果を持つ踊りが使えるのね」
明戸さんは踊りをすぐにマスターした。
さすが体操部。
「次は投げナイフだよ。カタログスペック100%」
ナイフを手にスキルを掛ける。
他の材料は黄金鳩の羽と『スプライン神話』だ。
黄金鳩の羽はドバトの羽を金色に染めた。
何を作ったかというとブーメランナイフ。
投げても手元に必ず帰ってくると言うナイフだ。
仕上げに竜の血を塗って出来上がり。
「このナイフがあれば中距離で活躍できるはずだよ」
「ありがとう。さっそく試しに行きましょう」
俺達は街から出てモンスターの出る森に向かった。
おあつらえ向きにオークが単体で歩いてくる。
明戸は眠りを誘う踊りを踊り始めた。
ゆったりとした動きは眠りを誘う。
いけない、いけない、俺が眠ってどうするんだ。
踊りから視線を外し、オークをみる。
オークは立ったまま眠り始め、仕舞いには座り込んでいびきをかき始めた。
明戸さんはナイフを投げる。
ナイフは眉間にふかぶかと刺さった。
戻れと明戸さんが言うとナイフは手元に戻った。
ナイフが抜けて、オークから血が噴出し、魔石になった。
次は鼓舞の踊りのテストだ。
ゴブリンが五匹こちらに向かってくる。
明戸さんは踊りを開始した。
戦いにふさわしい激しい踊りだ。
俺の体内に力が沸き起こる。
俺は剣を抜きゴブリンに切りかかる。
明戸さんも戦いに加わった。
俺を援護して投げナイフが何度も投げられる。
あっと言う間にゴブリン達は魔石になった。
次は魅了の踊りのテストだ。
ウルフの群れが来たので魅了の踊りを踊ってもらう。
大半のウルフが魅了され同士討ちを始める。
魅了に掛かっているウルフばかりになったので止め刺した。
癒しと誘い出しはテストしなかったがもう充分だろう。
「うん、戦力になっているな」
「でも、これって踊り子じゃない」
「御花畑そこは突っ込むなよ。じゃあ飛び跳ねたりするだけで、敵が倒れる仕組みを教えろよ」
「ドロップキックとか」
「それはプロレスだろう」
「私は満足よ。役立たずではなくなったから」
「ナイフを投げる動きに軽業を組み込むのが良いだろう」
「うん、研究してみる」
ナイフの予備を十本作ってこの相談は終わりになった。
たぶんトリッキーな動きからナイフを投げまくるというスタイルになるんだろうな。
前衛が足りてる時は踊りで援護か。
活躍できるといいな。
今回見ていて思ったが、本当に体操の演技するのが好きなんだな。
踊りだったが、喜びに満ち溢れていた。
二度と悲しい踊りはさせない。
自衛の手段も出来た事だしもう大丈夫だろう。
こういう依頼は楽しい。
女子をどんどんパワーアップできると良いな。
野神を倒すのに、一歩一歩近づいている気がした。




