第56話 遺跡起動
今日、向かったのは街に付属している城砦の中だ。
石造りの壁や床が城塞を思わせる。
西洋の城には行った事がないが、こんな感じなんだろうか。
観光客になった気分で、見回しながら歩いた。
「ほへぇ、いかついね」
小前田が感想を言う。
「こんなのドラゴン辺りが来襲したら防げないわよ」
御花畑が馬鹿にしたように言った。
「魔法とかで強化してある可能性はありそうだ」
「よくきたね」
出迎えてくれたのは眼鏡っ娘の和銅さんだ。
科学部の部長をしていて成績がとても良い。
前回では性奴隷になって、自分で発明した道具で自殺してしまった。
あの非業の死を見ないで済んで良かったな。
前回の野神はどうかしてる。
人間は適材適所だ。
仲間を奴隷に落として、虐げてどうする。
それで失敗して世界が滅びるのは我慢できない。
「なんか俺達に用があるとか」
「この城砦には遺跡があって、その調査を頼まれた。調査自体は終わっているが、是非起動させてみたい」
「起動に必要な物は分かっているのか」
「それがな。魔力を含んだ人間の血が大量に必要だ」
「それは困るよな。生贄を捧げるわけにもいかないし。よし、俺がなんとかしてやるよ」
さて、血の代用品ね。
竜の血という塗料があったぐらいだから、もちろん人間の血もある。
だが、それに魔力を含ませるのが少し問題だ。
魔力を液体化する必要があるな。
そこで物質化能力を持った鏡を作ろうと考えた。
神話では『レーの鏡』という名前で載っていた。
材料は鏡と魂だ。
魂なんてと思ったら、ゴーストというモンスターがいるのが分かった。
なんでも人間の魂がこのモンスターになると信じられている。
ゴーストが出没するという森にやって来た。
「何か出そう。ちょっと嫌」
「小前田の出番は今回は無いな。御花畑、頼むぞ」
「戦艦に乗ったつもりで任せなさい」
森の中に朽ちかけた猟師小屋を見つけた。
ダウジングでは中にゴーストが居るらしい。
俺達はドアの残骸を片付けながら中に入る。
けたけたと笑う声が聞こえる。
「ひっ」
小前田が怯えて後退る。
「小前田は臆病だな。外で待ってろよ」
「そうする」
小前田が脱兎のごとく駆け出して行く。
さてと、あれだな。
部屋の隅に赤い火の玉がぷかぷかと浮いている。
火の玉はファイヤーボールを撃って来た。
俺達はよけ、反撃のチャンスを狙う。
俺はゴーストに近寄り死角から聖水を掛ける。
ゴーストにも死角はあるみたいだ。
俺にはその視線が分かる。
聖水を掛けられゴーストの火が少し小さくなった。
「今だ」
「いくわよ。エアバインド」
風が吹き、火の玉が揺らめいた。
風に拘束され苦しそうに火の玉が身をよじる。
「うぼーー、恨んでやる。呪い殺してやる」
怨嗟の声が光の玉から聞こえてくる。
「はいはい、分かったから。カタログスペック100%」
俺は鏡と神話を手にゴーストにスキルを掛ける。
ゴーストは鏡に吸い込まれ『レーの鏡』が出来上がった。
「さっそく試すぞ」
樽を床に置いて、御花畑に魔力を放出するよう頼んだ。
魔力を『レーの鏡』に映すと魔力が液体になって樽の中に落ちた。
それを『アドスの血』と呼ばれている薬と混ぜた。
アドスは薬師で自分の血を用いて薬を作ったと伝説にはある。
とにかく人間という事でオッケーだろう。
作った人工血液を持って遺跡に入った。
遺跡は城砦の地下にあり、岩をくりぬいて作ったようだ。
でかい宝玉が嵌っている台座に和銅さんが案内する。
脇の血を入れる穴に樽十個分の人工血液を流し込む。
宝玉が光り輝き、遺跡が作動し始めた。
「おお、ありがとう。これで研究も進むよ」
和銅さんが眼鏡をくいっと直して笑顔で言った。
城砦から出て空を見上げると、光のドームが街を覆っているのが見える。
あの装置は防衛機能だったんだな。
実は今回ただ働きじゃない。
領主から預言書をもらえるらしい。
和銅さんに写本を渡し原本を俺がもらった。
『ヘンゲル予言』という預言書で『勇者と聖女と賢者が邪神の封印解けし時に集えば邪神が滅ぶ』と書いてある。
何かに使えそうだ大切にしまっておこう。
和銅さんの笑顔を見れただけでも報酬としては十分だ。
野神達を殺す決心を新たにした。




