第55話 奥義開眼
「小前田、女子と連絡つくか。会いに行こうと思ってる」
「今でもたまにギルドの魔道具で連絡をとっているけど。なんで急に」
「えーと、俺は敵対しないクラスメイト全員の帰還を願っている。それで男子は野神達が率いていたから分かっているけど、女子の方はどうなっているのかなと気になって」
それに利用したいと思っている。
本心を言ったら軽蔑されるかな。
言わないでおこう。
「全員無事よ。でも会いに行くのもいいかも」
「よし、次の目的地は女子と合流だ」
小前田に女子の進路を聞いてもらって合流地点に俺達は急いだ。
女子チームが宿泊している宿屋に行くと桜沢さんが待っていた。
「久しぶり」
俺は少し照れながら挨拶した。
「うん、久しぶり」
桜沢さんは俺達を探るように見ていた。
異世界に来てだいぶ用心深くなっているな。
「互いに助け合えればと思って来たんだ」
「それは大歓迎よ」
俺達は今までやってきた事を報告しあった。
俺が様々な問題を解決したと知ると、桜沢さんは女子のクラスメイトで困っている人間が居ると言った。
俺達はその困っている女子に会いに行く事に。
話題に上がったのは武川さん、ソフトボール部のレギュラーで運動女子だ。
真っ黒に日焼けした顔が部活での頑張りを伝える。
前回では性奴隷になって、他の女子を庇ってた。
体力があるので一晩に何人もの玩具になっていた。
あの悲惨な状況が実現しなくて良かった。
「何か困っている事があるんだって」
「そうなのよ。職業が拳法家なんだけど奥義が覚えられなくて」
「どんなのだ」
「一つは覇音の舞、もう一つは堤蟻穴壊よ」
「奥義書はあるんだろ」
俺は奥義書を見せてもらった。
覇音の舞は明鏡止水の心で華麗に避けると書いてある。
足運びや体の動かし方も合わせて書いてあった。
「これ、型が覚えられれば問題ないんじゃ」
「それだと完璧だと思えなくて、明鏡止水ってが難しくて」
完璧主義者だな。
ようは心を落ち着かせれば良いんだろ。
なら良いのがある。
俺はアイテム鞄からお茶と『命茶百選』を取り出した。
お茶を小前田が淹れる。
このお茶は悟りの茶。
説明によれば飲めば悟りが開けるのだそうだ。
お茶にカタログスペック100%を掛ける。
武川さんはお茶を飲むと目を瞑りしばらくした後に立ち上がる。
そして、流れるような足取りで演舞を行う。
「つかめた。これが明鏡止水の心なのね。感動したわ」
心を落ち着けて感動したら本末転倒だろう。
でも何かつかめたみたいだ。
もう一つの奥義、堤蟻穴壊はとにかく一点集中。
魔力を針よりも細く、そして高密度にして叩き込むという技だ。
集中力を高めるお茶はあるけど、それだけでは弱い気がする。
魔力を一点集中する物と言ったらあれだ。
魔法神のレンズだ。
このレンズは物質ではない。
魔法を掛ける時に一点に集中して威力を上げるもので目に見えない架空のレンズだ。
取得方法は魔石の粉を使った塗料で額に第三の目を書くというもの。
もちろん伝説なのでカタログスペック100%なしでやったら、ただの落書きだ。
小前田が武川さんの額に目を書き準備は整った。
「カタログスペック100%。技を試してみてくれ」
「いくよ。ふぅーーーはぁ」
武川さんの抜き手は的にした鋼鉄の鎧を突き破った。
「うわっ凄い」
小前田が驚いて鎧をまじまじと見つめた。
「ありがと、技の感触がつかめたわ」
「依頼は達成だな」
「ほんと凄いわね。私にもあの目を書いてよ。魔法の威力が上がるんでしょ」
御花畑も結果に興味を引かれたようだ。
御花畑の額にも目を描いてやる。
「ファイヤーニードル」
丸太ほどの炎の針が飛んで行く。
御花畑も強くなれたようで何より。
「私の他にも伸び悩んでいる子がいるから話を聞いてあげて」
武川さんに、そうお願いされた。
「分かった。クラスメイトには強くなってもらいたいから、出来るだけ力を貸すさ」
野神をぶっ殺す為に、君達の力が必要だ。
レベルアップさせるのに努力は惜しまない。




