第52話 山火事と森の復活
俺達は聖獣が出没すると言う森に来ていた。
森は神秘的な雰囲気が立ち込めていて、モンスターの気配が少しもしない。
動物が俺達の脇を走って行く。
「なんか、さっきから動物が多くないか」
「そういえば少し臭いわね」
「やだ波久礼君たら」
「俺は屁をこいたりしてないぞ。そう言えば何か焦げ臭いような」
辺りに煙が立ち込め始める。
「やばい、山火事だ」
火の手が目前まで迫ってきた。
「御花畑、水魔法でなんとかならないか」
「無理よ範囲が広すぎるわ」
「小前田はどうだ」
「手持ちの消化剤だと、焼け石に水ね」
とりあえず俺達は防火のお札を樹に貼りまくった。
安全地帯みたいなものは作れたが、火の勢いは止まらない。
辺りは火の海になった。
小鹿が一頭、安全地帯に駆け込んで来た。
「かわいい」
小前田が震える小鹿を盛んに撫でていた。
火事をどうしようかと考えていたら、野神達が安全地帯に駆け込んで来た。
「ふぃー、助かった」
「野神さんどうします」
クラスメイトが言った。
こいつら、俺に感謝の言葉も無しかよ。
殺すの確定だから、今更感謝されても許さないが、腹が立った。
「寄居、どうすればいいか」
野神が寄居に尋ねる。
「ここを拠点に消火活動すればいいと具申します。水魔法で一斉消火が早いのでは」
「ちょっと、私達が苦労して作った安全地帯を勝手に使わないで」
「いや、ここは一時休戦しよう」
俺は文句を言う御花畑をいさめた。
野神達の中で水魔法が使える者達は水を放射。
しかし、火の勢いが止まる気配が無い。
俺は何か使える手はないかと本を漁る。
あった、火事が起きた時に雨乞いをしたら、大雨になり鎮火したという石碑の写しだ。
『ガミスト風土記』にその記載があった。
必要な物は綿と水と祝詞。
さっそくテーブルに布を掛けて祭壇を作った。
皿の上に綿を乗せ、水を掛けながら唱える。
「天の神々よ。雲を用意しました。雨を降らせたまえ。カタログスペック100%」
空を見るとどこからともなく雲が沸き出て来て、空を覆い始めた。
雲はどんどん厚くなりどす黒い雲になった。
ごろごろという音が聞こえ始める。
後少しで大雨だな。
俺達はテントを広げ、小鹿と雨を避けた。
ビシャガラガラという雷の音と共にざぁーという音がして雨が降り始めた。
辺りに水蒸気が上がる。
一時間もすると火の勢いは弱まってきた。
野神達も俺達と同じ様にテントを張って逃げ込んでいた。
どしゃぶりの雨は三時間続き、目に入るところの火は消えた。
小鹿がぴぃーと鳴くとしばらくして母鹿が現れる。
「バンビーヌちゃん、行かないで」
「小前田、名前つけたのか。行かせてやれよ」
小前田は母鹿に駆け寄る小鹿に手を振っていた。
小鹿は一回俺達の方を振り返ると見つめた後に踵を返し森に帰って行った。
「焼けた森を再生しないとな」
俺は『スプライン神話』にあった原初の土から樹が生えた神話を再現する事にした。
神の肉はまだあったのでそれを土に変えて辺りに撒く。
それから、俺の髪の毛を数本切り、原初の土に植える。
そして、髪の毛を抜き。
「カタログスペック100%」
髪の毛は光り幾本にも分裂して青々とした葉を茂らせた樹になって森に散らばっていった。
「これでバンビーヌちゃんも安心して暮らせるね」
先ほどまで泣いていたのか目を赤くした小前田が言った。
「そうだな、きっと幸せにやっていくだろう」
森の奥から青白い燐光を纏った狼がゆったりと歩いてくる。
モンスターかな。
案内人を見るとひれ伏していた。
神様、いや聖獣かな。
「人の子よ、あっぱれだった。雨を降らした事や森を復活した事に感謝したい」
「火事が起きたら消火活動は人間として当たり前だろう。それに、森が枯れているとなんか悲しいしさ」
「そうか、望みを言うが良い」
「頼み事を俺達にしてくれ」
「そんな事でいいのか。最近、我のオーラが減衰してしまってな。それの復活を頼みたい」
「聞いたか、野神。お題が決まったぞ」
「おう、絶対勝つ」




