第51話 農業神の鍬
土精霊の居る場所を聞いたら、なんと畑に出没するそうだ。
肥えている土を用意すると祝福に現れるのだと言う。
野神達、立会いのもと精霊を呼び出す作業に入った。
『ゴブリンでも出来る農業』の件で作った肥料を撒いて土に混ぜる。
土が盛り上がり人型になり喋り始める。
「凄いねこの土は。これなら幾らでも作物が出来そうだ。喜んで祝福を与えるよ」
「精霊様そうでは無いのです。この者達は精霊様の願いを叶える為に訪れました。願いを言って下さい」
俺達について来た見届け人が代表して言った。
「ふーん、そうなの。じゃあ土を耕す物が欲しいな」
「今度の勝負は鍬対決だな」
野神が宣言して勝負が始まった。
俺達は宿に帰り作戦会議を始める。
「うーん、農業神の鍬ってのが神話にあるんだが、二人はどう思う」
「実際に農家の人に使ってもらったらいいんじゃね」
「製品調査は基本だと思う」
「小前田はよくそんな言葉を知っているな」
「女子高生社長のインタビューを見たの」
「なんだ受け売りか」
俺は農業神の鍬を作成に掛かる。
材料は原初の土。
原初の土ってのは創造神が最初に作ったとされる土だ。
神の肉が土になったと言う言い伝えが『スプライン神話』に書いてあった。
神の肉か。
そんな都合の良い物があるかな。
街で物色中ふと寂れた肉屋が目に入り思いついた。
なけりゃ作れば良いんだ。
「おっさん、儲け話があるんだが」
俺は肉屋に話し掛けた。
「なんだ」
肉屋の視線は胡散臭い者を見る目つきだ。
「この肉屋の肉を神の肉と言って売らないか。そうすれば肉を全部買ってやる」
「本当かい。よしこれからうちの肉は神の肉だ」
俺が金を出しのぼりやホップを用意して肉を全て買い取った。
一番安い肉に触りポップを片手に。
「カタログスペック100%」
肉は光に包まれ神の肉になった。
神の肉を触りながら、神話を片手に更にカタログスペック100%。
原初の土ができた。
その土を更にカタログスペック100%。
農業神の鍬の完成だ。
さっそく、農家の所に行き頼む事にした。
「あの、新製品作ったので試してくれないか」
「なんだ人買いではないのか」
「いや違うけど」
「俺の畑は酷い不作でな。このまま行けば、子供を売らにゃいかん」
「へぇ、そんな人にこの新製品はぴったりだ」
「どこが新製品なんだ?」
「どんな痩せた土地でも肥沃な土地に生まれ変わるよ」
「そうか、今は藁にでもすがりたい。試してみるよ」
「どうぞ、どうぞ」
痩せたという畑に行き、農夫は農業神の鍬を振り下ろす。
畑に鍬が差し込まれた瞬間、畑は光に包まれ土が目に見えて柔らかくなった。
ぎゃーという声が聞こえた気がする。
何か幽霊でも取り付いていたのかな。
神の使っていた鍬だから幽霊如きへっちゃらだろう。
土に乗ってみるとまるで布団に乗っているようだ。
他の農家にも行き同様に試してもらう。
どの畑でも耕した瞬間にぎゃーという悲鳴が聞こえたような気がする。
幽霊が流行っているのかな。
まあ今の所問題は起きてないから良しとするか。
いや、これは妨害工作だろう。
「小前田、畑を鑑定してみてくれ」
「鑑定。うわっ、悪霊がとりついている。ホラーは嫌い」
鍬で耕した。
「鑑定。悪霊はいないよ」
「そうだろな。悪霊がいる畑を片っ端から耕すぞ」
俺達は悪霊全てを退治した。
今回は俺達の勝ちだろう。
いよいよ、野神と決闘か。
腕が鳴るぜ。
俺は勝つ自信を胸に勝負の日を待った。
勝負の日は雲ひとつない青空で俺達の勝利を予感させる。
土精霊と前回会った場所には既に野神達は到着していた。
俺達が到着すると土精霊が姿を現し、勝負が始まる。
「俺達はオリハルコンの鍬だ」
野神達は自信満々にそれを出してきた。
「俺達は農業神の鍬だ」
二つの鍬を見比べると土精霊は口を開く。
「俺、オリハルコン大好き。この輝きたまらないね。メッキなのは減点だけど飾っとくよ。農業神の鍬は普段使い用かな」
「見届け人として裁定を下します。大好きだと言ったオリハルコンの鍬を勝利とします」
「くそっ負けたか。これで二勝二敗だな。最終戦で勝負だ」
「ああ、お前の命も時間の問題だ」
次は聖獣の頼み事、勝負だな。




