第50話 大将討ち取ったり
押し寄せてきたモンスターの軍勢に対して、俺達は街の手前の平原で陣を敷いていた。
街の周囲は畑になっている為、篭城戦を領主が嫌ったためだ。
ギルドの面々は遊撃として軍に組み込まれていた。
冒険者はパーティ単位の連携は出来ても軍としての連携は出来ないから当たり前とも言えるが。
野神達は思惑があるのか、軍に協力して先陣を任されている。
俺達三人は自由にしてよいと言われたので独断専行する事にして、三人で突撃することにした。
もちろん勝算はある。
俺は兵法書である『デアルの書』を片手に。
「カタログスペック100%」
土砂降りの雨が降る。
「波久礼君、雨が降ってきたよ」
「それで良いんだ。しばらく見ていろよ」
雨は上がり今度は戦場に霧が立ち込める。
「よし、雑兵は野神達に任せて俺達は大将首を狙うぞ。二人共手はず通りだ」
「いよいよ、魔法撃ち放題ね」
「頑張って眠り薬を投げる」
御花畑にはファイヤーランスではなくウインドカッターを連射してもらう事になっている。
この作戦の肝は霧に紛れて本陣を直接狙う事にある。
接近に気づかれないよう振舞うのがコツだと思う。
兵法書に書いてあった『啄木鳥の策』だ。
奥の本陣を寡兵で直接狙うらしいが、カタログスペック100%がなければ正気の沙汰とは思えない。
霧に紛れて本陣を目指す。
本陣の方向はダウジング任せだ。
モンスターの軍勢の雑兵はゴブリンでたまにウルフがいる。
そして隊長はホブゴブリンだ。
俺達は慎重に進む。
おっと、ゴブリンの一隊と出くわした。
「頼む」
「ウインドカッター」
御花畑の放った魔法がモンスターを切り刻み一撃で魔石に変える。
「ちょろいわ。もっと歯ごたえのある敵が出てこないかしら」
「油断したら駄目」
そういうと小前田が霧の中に眠り薬を投げる。
どさどさと音がして何かが倒れる音がした。
俺は音がした方向に行き、倒れていたゴブリンに剣で止めを刺した。
そんな遭遇戦を繰り返す事五回。
後方が慌しくなった。
霧の中、モンスターの軍勢は突撃するらしい。
俺達は向かってくるモンスターを時にやり過ごし、時に殲滅して進んだ。
モンスターの種類がオークとオーガになった。
いよいよ本陣が近いらしい。
本陣が見えてきた。
オーガほどもあるゴブリンキングが骨で出来た玉座に座っていた。
「御花畑、思いっきりぶちかませ」
「がってん、ファイヤートルネード」
炎の竜巻が上がり、追加とばかりに小前田が爆弾を投げ込む。
炎が治まった時ゴブリンキングは満身創痍で側近は全て魔石になっていた。
死角から近づき『ウエスラテの針』例の必殺針を何度も背中に打ち込む。
振り返るが遅い。
針は深々と背中に刺さった後だった。
「おのれ卑怯な……」
そう言うとゴブリンキングは巨大な魔石と牙を残して消えていった。
さてここからが問題だ。
『デアルの書』によれば、大将を討ち取った後に大声で叫び敵は総崩れとなったとある。
本当に大丈夫か。
念の為、透明になるハチマキを装備して大声で「大将討ち取ったり」と叫んだ。
霧が晴れていきモンスターの軍勢の統率が乱れたのが遠くからでも分かった。
上手くいった。
俺達は透明になったまま、混乱が続くモンスターの群を突っ切って軍に帰還。
野神達はと戦場を見ると統率の崩れたモンスターを追い回している。
チャンスだ。
姿を隠したまま野神の隙を伺う。
今だ。
野神の体がぶれる。
そして、剣が弾かれた。
「奇襲なんか食らうかよ。ミラージュボディさまさまだな。モンスターなんだろ出てこい」
俺の仕業とはばれていないようだ。
気づかれたし、ここは一時撤退だな。
こっそりとこの場を後にした。
鉢巻を取って、味方の本陣の天幕に入る。
「報告があります」
「なんだ」
「敵の大将を討ち取りました」
「なるほど、それでこの雑兵の混乱か。でかした。ついて来い」
領主はテーブルについて、地図を広げて睨んでいる。
色とりどりの駒が地図に置かれていた。
案内してくれた、騎士が領主に耳打ちする。
「勝ったな。そのほうらの名前は?」
「名もなき勇者と、ポーションの聖女と、獄炎の賢者です」
「褒美をつかわそう」
「いえ急いでいるのでこれにて」
次の勝負の場所に急ごう。
これでやっと精霊のお願いを聞く勝負に移れそうだ。




